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11話(彼の心と花言葉)


翌日、支度をしてミケとターゲットの場所へ向かう。


「どっちに行く?」


「まずは近いから男子高校生のほう。とりあえず今日はそれぞれの簡単なプロフィール作れればいいかな」


「ふむふむ」


「1日の流れを把握して、勉強、仕事、部活……何かしら悩みがあったり心の柔い部分を突っつける所にあたりをつける感じ」


「なるほど」


 タブレットを閉じたミケは私の顔をじっと見る。


「隈、出来てる」


「……うっさい」


 誰かさんのせいで寝不足だ。ついつっけんどんな態度をとってしまうが、ミケは気にして無いように私の手を取る。


「じゃ、しゅっぱーつ」


 いつもと変わらないその態度に、もしかして私自意識過剰だったかな、という思いがよぎる。しかし、後ろから見えるミケの耳が赤いのに気づいた。


「……」


「いたた、手に爪立てないで。なに?」


「何も!」


 頬も繋いだ手も燃えるように熱かった。





「お疲れさま」


「ん、手伝ってくれてありがとね」


 私たちはターゲットの人が働く花屋の前に立っている。ミケが首をこきりと鳴らしながらタブレットを操作する。とりあえずターゲット2人の情報を把握、整理して今日は現場仕事終わりだ。人間の心を読みながらタブレットを操作するミケは忙しなくて、手伝いを提案した。プロフィールはミケが吹き出しを出してくれれば私でも読み取れるので私が入力し、人間の心を読むのに集中して精神的なアタリをつけるのはミケ。私が書いた内容をミケが推敲する。


「内容問題ない?」


「大丈夫だよ。めちゃめちゃ助かった」


「やっぱ悪魔激務だよね。こういう役割分担でパートナー制度のメリット言えそうなんだけど」


「実際人員足りてないしね」


 それでこの後どうするか、と思案しているとミケが私の目の下に手を伸ばしてきた。


「ミケ?」


 そっと親指で目の下の隈をなぞる。


「……今日から別々で寝るの? 俺としては今のままがいいんだけどな」


「う」


 もちろん、と返事しようとしたところでタブレットから流れる音。


「あ、昨日の隔離施設の人から」


 電話に出るミケを待ってる間、ターゲットの働く花屋を眺めることにする。小さい女の子がポシェットの中身と睨めっこしながら店員に話しかけているところだった。


「ママ誕生日だから、プレゼントしたいの」


「ママきっととっても喜ぶよ。そうだ、花言葉で選んでもいいかも」


「花言葉?」


「花にはね色んな意味があるの。例えば赤いバラだったら愛情……あなたのことが好き! みたいな」


「そうなんだ! じゃあこれは?」


「ダリアね。華麗とか気品とか……綺麗ってこと!」


「じゃあこのふわふわしたやつは?」


「これはコットンフラワー。優秀……すごい人ってことだね」


 微笑ましいやり取りに口元が緩む。


(そういえば)


 私も小さい頃教わったな。その後白詰草で花冠作って、ミケにあげて。ミケからもお返しで貰ったっけ。小ぶりのピンク色の花だった。茎が大層立派でよく花冠に出来たな、なんて思った。あれは天界の技術を使って自室に大切に保管している。


「次これ!」


 子供が楽しそうに花を指差す。それは小さくて、ピンク色で、見覚えがあった。


(あの花……!)


 よく見知ったその花はミケの花冠に使われていたものだ。ミケにもらった時は教えてくれなかったけど、花言葉はなんだったのだろう。調べずに本人から聞き出そうと躍起になってそのままミケとは会えなくなってしまった。


「あぁ……ストックね。それは、永遠に続く愛の絆。そうだね……ずっと大好きってことだよ」


「え」


 衝撃だった。ミケ花冠を渡す時花言葉について言及していた。つまり、花言葉を把握していたということだ。


(……だって、小さかったし何十年も前のことなのに)


 会った時からやけに好いてくれているなとは思っていた。昔馴染みだし私の仕事っぷりが良いおかげだな、なんて密かに思っていたのだが。


(ずっと前から? ずっと? いつから?)


 その時、肩が叩かれる。混乱していて、ミケが通話し終わっていることに気づかなかった。


「どうしたの?」


 思えば私は、なんでこんなにミケとの再会に躍起になっていたのだろう。この世界じゃ天使と悪魔にいずれ別れることなんて分かりきっていて、別離だってあり得ると理解していた。


「? リリスちゃん? おーい」


 私の顔の目の前で手を振るミケの肩に額を押し付ける。


「……なんでもない……」


「…そっか」


 表情は見えないけれど、私の頭を撫でる手は優しい。私の顔を上げようと顎に触れる手に必死に抵抗した。さりげなく腰に手を回すな!



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