鬼がやって来る
どうも、どうも~。
“ノットガールズ”改め“慈愛の囲い”っていう後方支援部隊の副隊長してますカッパって言います~。
僕もミイラ隊長と同じく、骸骨みたいにヒョロヒョロなんですがれっきとした軍人なんです~。
後方支援部隊に関しては至らないところがあったかもしれないけど、ミイラ隊長が話してくれてたね~。
今回は僕等みたいな『普段は魔法を使わないけど魔力を持ち合わせている人間は、どうやって魔法が使えるようになるのか? 』という事について話していきたいと思うよ~。
“魔法”を発動させるためには“魔力”が必要なんだけど、平凡な人間は生まれつき魔力を持っているものではないんだ~。
魔法を会得している親から生まれた子は、遺伝的に魔力を引き継ぐことが可能らしいんだけどね~。
でも、あらかじめ魔力を引き出すことが出来ない人間も魔法を発動させる方法はあるんだ~。
まずは、魔力を引き出す道具を使って魔法を発動させる方法だよ~。
主に杖とか魔導書っていう分厚い図鑑みたいな書籍を使って魔法を発動させるんだ~!
昔は人間より長い杖を片手に、もう片方の手では魔導書を開いて魔法を発動させていたらしいけど僕がそんな事したら肩が外れちゃうよ~。
最近はもっとコンパクトな道具を使うのが主流なんだけどね~。
魔術道具はもちろん特殊な材料で製造されるんだ~。
材料としては魔獣の皮や血とかの身体の部位、あるいは魔力を注入した鉱石から用いられているね~。
こうした道具の助けもあって、魔力を持たぬ人間でも魔法を簡単に発動させられるような世の中になったんだ~。
ただ、こうした道具を使って魔法を発動させるためには詠唱をする必要があるんだ~。
詠唱っていうのは、その魔法を発動させるために口で唱えて魔法を発動させる事であって、主に魔導書に記してある文章を唱えながら杖を振るったりする必要があって結構面倒臭いんだよね~。
それに作法を間違えたりすると、最初からやり直しだからそれも面倒臭いんだよね~。
そういう事で、今回は簡単に道具を用いて魔法を発動させる方法について説明したよ~。
他にも魔法に関しての話があるけど、それは次回までのお楽しみという事で~。
それじゃあ、またね~。
~“ノットガールズ”改め“慈愛の囲い”カッパ副隊長~
「ハリガネ=ポップで~す。第一中隊連絡の件で参りました~」。
ハリガネとヤマナカはシェルター内に入ると、先程の修道士が歩み寄ってきた。
「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」。
「どうも~」。
修道士は壁に設置されたモニターの前へハリガネ達を案内した。
その魔法陣で構成されたモニターの中には、ハリガネとヤマナカがよく知る上官の姿が映し出されていた。
「え~、傭兵のハリガネ=ポップ。現在、ユズポン中央広場ブース内で若い修道女達のライブを眺めながら楽しく待機しております。お久しぶりです、カワチャン第一中隊副隊長」。
「傭兵のヤマナカ=マッスルっ!! 同じく待機中でありますっ!! 副隊長っ!! お元気そうで何よりですっ!! 」。
ハリガネ達が挨拶すると、モニターに映るカワチャン副隊長はサングラスを外し悪戯っぽく笑った。
「ハハッ! 相変わらずの面構えで安心したぜ~。勇者と“筋肉”元気かぁ? 」。
“筋肉”とはヤマナカのニックネームである。
「現在は独立して道場経営しておりますっ! 門下生もそこそこ育ってますっ! 」。
生き生きとした表情でハキハキと答えるヤマナカ。
「...現在、フリーターの立場で定職につけず死にかけてます。今は日雇いで食いつないでます」。
その一方、虚ろな眼で淡々と答えるハリガネ。
「...」。
カワチャン副隊長は気まずそうな表情を浮かべたが、咳払いをして話を切り出した。
「おう、分かった...。まぁ、各々の現状は把握した...。あー、それはそうと二人に頼みたい事がある」。
「...頼みたい事? 」。
ハリガネは眉をひそめて聞き返した。
「あぁ、ウチの“馬鹿”が今そっちへ向かっている。傭兵とか兵士を集めて現場へ出撃するつもりだ。だから、それを食い止めてほしいんだわ。いやぁ~、お前らがそっちにいて良かったわ~」。
「え? ゴリラ隊長が、ここに? 」。
「おう」。
「...相変わらず滅茶苦茶ですね。何かあったんですか? 」。
「ああ、今回のターゲットはノンスタンスである事は知っているよな? 」。
「はい」。
「それで奴等は時計塔周辺を陣取ってるんだが、これがまた厄介でな~。ノンスタンスの連中も国外から集めた魔法使いを起用してて、おまけに首謀者のデイも時計塔に籠城しててなかなか打ち崩せない状況になっちまってるんだ。魔術部隊と王国本隊の防衛があって襲撃こそ許していないが、お互い前線で睨み合いが続いてて長引きそうでよぉ~。それで切り込み役が必要だってことで隊長が歩兵隊や騎兵隊の出動が必要だって王国軍本部に提案したんだが、それが却下されちまってよぉ~」。
「それで、隊長は魔法陣使わずに直接こっちへ向かわれているのですか? 何でまたそんな事に? 」。
「お前等もだいたい想像がつくだろ~? 隊長がキレて王国本隊の上層部と喧嘩しちゃって部隊から外されちまったんだよ~。それで隊長が現場から退場アンド出禁処分受けちまったから、部隊も施設も使えねぇって事で直接そっち行っちまったんだよ~。おかげで俺達の隊は前線から一時撤退するハメになっちまったよ。冗談じゃねえよ...。ホント...」。
カワチャン副隊長が、呆れた表情を浮かべて首を小さく横に振った。
「えぇ~!? それで勝手に部隊編成して出動するって、それ反逆行為で軍法会議ものじゃないですか~!! 」。
「あぁ、下手したら処刑だろうな。降格や懲役で済むんだったら超幸せだよ。まぁ、隊長も今回は腹を括ったんだろうけどよ~」。
「...決心? 」。
「魔術部隊が勢力を拡大していく一方で、前線を戦ってきた俺達歩兵隊は予算や部隊に兵数も大分縮小されちまっててな~。この第一中隊“ガレージ”も解体されて、ゆくゆくは俺等も本隊から地方に飛ばされるなんて話が入ってきてるくらいだ。もう自分達が相手に対抗できる程の兵数を動かせるのは、今回の招集で最後だろうしな。隊長はおそらくノンスタンスを“この手”で潰す最後の機会だと思ったんだろうよ。奴等の手で、どれだけ多くの仲間が死んでいったことか...」。
「ノンスタンスとは戦時中からやり合ってきましたが、今回といい本当に懲りない連中ですね。犠牲が増えるだけだというのに、国外の人間まで巻き込みやがって...」。
ハリガネとヤマナカは眉間にしわを寄せ、お互い険しい表情を浮かべた。
「俺達ポンズ王国軍歩兵隊とノンスタンスとの争いは、お前等もうんざりする程に味わったよな。まぁ、犠牲になった兵士達の無念を晴らすといっても、隊長の選択は暴走行為以外の何物でもないがな。おっと、あまり余計な事ばっか喋ってると部隊にいる俺まで処分食らうからこの辺にしとくよ」。
「ははは...」。
悪戯っぽく舌を出して笑うカワチャン副隊長に、ハリガネとヤマナカは苦笑した。
「とにかく、ウチの隊長を後方部隊区域から出ないようにできる限り足止めしといてくれ。もう前線からの出禁処分を受けた以上、あの人には指揮権も無いし今回の件には一切関与出来ないからな。くれぐれも加勢しないようにな。さもないと、処罰の対象になるだろうからな。例え、あの“馬鹿”が魔獣使いの騎兵団を束ねてきたとしてもな。以上ッ!! 」。
「了解ッ!! 」。
ハリガネとヤマナカが姿勢を正しくしてそう返事すると、カワチャン副隊長は少し頷いてモニターから姿を消した。
「大変な事になったな、ヤマナカ」。
ハリガネは険しい表情で腕組みをした。
「ゴリラ隊長の気性の激しさは王国軍随一ですからねっ! それでいて人情に厚くて義理堅い上官の鑑でありますっ! それゆえに、英霊のために一矢報いたかったのかもしれませんっ! 」。
「一矢どころじゃねえって。あの隊長、絶対これから竜族の魔獣に乗っかってRPGなりスティンガーなり打ちまくるぞ。...ってか部隊から外された分、心のブレーキもぶっ壊れて完全に振り切れてるだろうからマジ何するか分かんねーよ。平常時でも十分なくらい鬼隊長だったのに。最悪だ...。クーデターがもう一件増えるなんて...」。
「...どうしましょうか? どこかに隠れていた方が宜しいのでは? 」。
「そうだな、もう俺達は王国軍の兵士じゃないからな。あの話の流れだと傭兵や兵士を片っ端から脅迫して無理矢理現場へ連れて行きそうだな。勘弁してほしいもんだぜ...」。
「...戦士たるもの、反逆者扱いは御免であります」。
「う~ん...」。
しばらく、ハリガネとヤマナカ神妙な表情を浮かべ、互いにうつむいて黙っていた時...。
「うぉおおおおおおおおおおらぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああッッッ!!! こんなぁぁぁあああ事態にぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッッッ!!! 何やっとんじゃぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああッッッ!!! 貴様らぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああッッッ!?!? 」。
突如、野太い怒号が辺りに鳴り響き、盛り上がっていた外は水を打ったように静まり返った。
(ヤバイ...。鬼が...。来ちゃった...)。
懐かしいその男の怒号に真っ青になったハリガネとヤマナカは、互いの顔を見つめ合ったまま黙り込んでしまった。。




