久々に会う幼馴染はやっぱりムカつくよなぁぁぁぁああああああああああああッッ!?
戦士にして兵士であり、断じて勇者ではない。
他の国の事情までは分からんが、俺が暮らしているこのポンズ王国では勇者って職業ではないからな。
それと...。
まだ、俺が王家配下の兵士だった時の話なんだが...。
新人兵士として部隊に配属された時、先輩達に自己紹介をしたんだ。
色々と世間知らずだった十代の俺は、『ハリガネ=ポップと申します! 勇者になれるよう頑張ります! 』って言って盛大にその先輩達から笑われたんだ。
それで、部隊での俺のあだ名は“勇者”になってしまったんだ。
え? 結局、何が言いたいのかだって?
つまり、あの事は一生忘れないという事だ。
...これ以上、何も言うな!!
~元ポンズ王国軍歩兵部隊兵士、ハリガネ=ポップ(現在、日雇い労働者)~
「はぁ~、今日も良い仕事見つかんなかったな...」。
ポンズ王国の都市ユズポンにある職業紹介施設“グッバイワーク”。
一人の男が眉間にしわを寄せて苦悶の表情を浮かべつつ、その建物の出入口から足取り重く姿を現した。
「ああぁぁぁぁあああああああああああああああああッッ!! クッソォォォォオオオオオオオオオオオオオオオッッ!! 」。
ざんばらな黒髪を乱暴に掻き乱し、悶え苦しむこの男の名はハリガネ=ポップ...。
戦士として剣を振るい王国のために命を懸けて戦い続けてきたこの男、ハリガネも今年三十二歳を迎えた冴えないアラサーとなっていた。
「年齢も年齢だからな...。戦士だけのキャリアだけだとやっぱり厳しいかな...。ああぁぁぁぁああああああああああああああああああッッ!! もぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお...っっ!! こん畜生め...っっ!! 」。
ハリガネがガックリとこうべを垂れながら帰り道へ歩き出そうとすると、何者かがハリガネの背中を軽く叩いた。
「よぉ~! 」。
「...あ? 」。
ハリガネが不機嫌そうに後ろを振り向くと、馴染みのある男がその反応を見てニヤニヤしていた。
「...んだよ、お前かよ」。
「何だよぉ~! つれねぇなぁ~! 」。
男はそう言いながら図々しくハリガネの肩に自身の腕を絡めてきた。
「その様子だと今日も仕事が見つからなかったみたいだなぁ~! もういい加減に戦士としての実績にこだわってないで、どんな職種でもいいから早く就職しろよぉ~! 就活が長引くと色々と苦しくなっていくぞぉ~! 特に独身で身内も彼女もいないお前はなぁ~! 」。
「...っせぇな」。
絡めてきた男の腕を半ば強引に振り解きながら、ハリガネはばつが悪そうな顔で男を一瞥してそう言葉を返した。
「まぁまぁ、そんな怒んなってよぉ~! 」。
「...別に怒ってねぇよ」。
すっかり機嫌を損ねたハリガネは男にそっぽを向けてしまった。
「分かった! 分かった! ほらぁ~! もう昼だし、一緒に飯食おうぜっ! 奢るからさっ! なっ? 」。
「まぁ...。それなら、いいけどさ...」。
まんざらでもないハリガネは曖昧にそう言葉を濁しつつ、男に再び肩を組まれながら重い足取りで歩き出した。