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黄金ハンター  作者: 春原 恵志
4/7

結城埋蔵金

 大島日帰り旅行から帰宅した俺は、当日は疲労困憊のため夕食も取らずに就寝した。

 ここまでの重労働は高校の体育祭以来ではないかとも思った。当時はほとんどばっくれたので、そうなるとそれ以上の重労働と言うことになる。

 さすがの伊瀬知もすぐに次の埋蔵金探しに行くとは言わず、今週末の出発となった。俺の体を心配してくれたのだろうか、伊瀬知にも憐みの心があるとは設定の変更を考慮しないとならない。


 さて、次の埋蔵金は結城家埋蔵金である。

 日本三大埋蔵金の中で結城朝光の金塊は380トンとも言われ、秀吉ほどではないが徳川御用金の72トンをはるかに凌駕する量である。

 結城朝光についての当時の資料を読んでみた。文治五年、西暦1189年朝光は源頼朝の命で奥州藤原氏の討伐を行った。藤原家と言えば、源義経を匿ったことで有名だが、平泉と言う金の産地を抱える豪族で、現在も中尊寺金色堂の絢爛たる金細工は有名である。マルコポーロの東方見聞録に出てくる金についての記載は、ここではないかと言われているほどだ。この戦いで、当時、藤原家が保有していた金を、結城朝光はすべて持ち帰ったと言われている。その総数は重さ8キロの金の延べ棒がおよそ2万5千本、7キロ弱の金の延べ棒が同じく2万5千本、30キロの砂金が入った樽が108個もあり、総重量が380トンである。

 結城朝光の恩賞が特別多かった理由は諸説あるが、彼が源頼朝からそれだけ信頼されていたということは間違いないだろう。ひょっとすると何か弱みを握られていたのかも知れないが・・・。そしてその遥か後、結城家17代当主結城晴朝が、この財産を隠したことで結城埋蔵金と呼ばれている。

 然るに、なぜこのような昔の埋蔵金伝説が、さもありそうな話になっているか。それには理由がある。徳川吉宗の時代になってこの埋蔵金の捜索が行われているのだ。金策に困った吉宗が寺社奉行大岡越前守忠相に命じ、この地で捜索をおこなった。こういった噂レベルの埋蔵金も探さねばならないほど、当時の幕府は金策に窮じていたわけだ。事実としてこの発掘中の事故で死者の記録が残っている。よってそれなりの根拠があったとも言われており、現在になっても発掘騒ぎが続いている。こちらもテレビで特番が組まれていた。ちなみにこの放送はTBSではなく、日テレでした。TBSのプロデューサーが日テレに移籍したということではないようで、元々埋蔵金の放送が外注の制作会社だったのかは定かではない。

 俺が埋蔵金伝説を小説にしたのは、この結城家埋蔵金が基本にある。その理由としては単に田舎が近いからなのである。俺の田舎は栃木県小山市で、この結城家は栃木県結城市である。隣町というかほとんど同じ地域である。子供の頃からこの辺り一帯を探検したり、遊びに興じていたのだ。その頃から子供たちの間でも埋蔵金についての話はよく出ていた。

 埋蔵金の隠し場所については、栃木県結城市小田林の金光寺の山門に、謎の和歌が彫られていることで有名である。それが結城家の財宝のありかを知る鍵といわれているのだ。それは地元の人間ならば誰もが知っている話で、今回の小説を書くにあたってのヒントになったのは間違いない。そこから俺は他の三大埋蔵金へと話を膨らませたわけだ。

 ちょうど田舎にも寄れるとのことで、これまでのことを含めて親父にも話をすることにした。

 今週末の出発なので時間的な余裕もでき、バイトだけでなく久々に大学にも顔を出した。

 ゼミの青山教授に挨拶に行くと、先生は未だに就職が決まらない俺に同情はするが、就職先の斡旋まではしてくれなかった。彼女にしても、やはりうちの学生を企業に紹介するコネはないのかもしれない。それとも俺だからだろうか。

 青山との面会を終えて、セミ室に顔を出すとなんと今村澪がいた。臼井がいなくてよかった。どうやらやつは内定をもらった家電量販店での研修だそうだ。

「長谷川くん久しぶり」まぶしい笑顔だ。それだけで幸せな気持ちになる。

「久しぶり」

「その後、どうなった?」と例の話を聞いてくる。

 やはり、今村にはこれまでの話をした方がいい気がしていた。臼井とは違って彼女はうちの大学には珍しいインテリなのだ。さらに何か貴重な意見がもらえそうな気がする。

「ああ、それでね。ちょっと不思議な話になってきたんだ」

「え、何?」


 ゼミ室で話すのは問題があるので、カフェテリアで話をする。

 今村に伊瀬知の話や埋蔵金探しの話を一通りした。あまりの荒唐無稽な話に今村は驚いていた。

「うーん、どう考えてもおかしいよ。ありえない」

「俺もそう思うんだけど、実際、大島であった出来事は事実なんだよ」

「大島の反橋だったっけ?あそこに千両箱があったんだ?」

「そうなんだ。そこから少し奥には行ったんだけど、確かにあった」

「それと伊瀬知悠って実在したってことだよね」

「不思議なんだけど」

「その女性が小説を読んで真似したとか?」

「だとしてもあそこまでは無理だよ。コスプレは出来るかもしれないけど、ジークンドー出来たり、車も同じだし、ああ、それから拳銃を持ってたんだよ」

「うそ!偽物じゃないの」

「俺にはそうは見えなかったけど・・・」

「えーだってそれだとあの小説通りじゃない。それで(黄金ハンター)は本当のことだっていうんでしょ」

「そうなんだ。俺も夢でも見てるみたいな気持ちなんだ」

「でも嘘みたいだけど、本当にそれが起きてるってことだよね」

「そう」

 今村が黙って考え込む。こういう姿も絵になると思った。

「じゃあ、これからも小説通りのことが起きていくってことなの?」

「そうなのかな。でも伊瀬知はそう言ってる」

 今村は黄金ハンターを最後まで読んでいるので、結末までを知っている。

「やっぱり騙されてると思う。あの編集者が出てきた辺りから、色々とおかしいんだよ」

「でもさ、俺なんか騙しても何にもならないよ。お金もないし学もない」

「確かに・・・」いやいや今村さんそれは否定しないと。「ひょっとして長谷川君が気が付かないだけで、なにかとてつもない価値があるものを持ってるんじゃないの?」

「価値があるもの?俺が?」俺は少し考えてみる。

 俺の持ってる価値のあるものって何だ。宝物を持ってるわけでもない。俺自身は顔も普通で頭もよくない。就職も決まらないぐらい人付き合いも得意ではない。お金はほとんどないし、実家も貧乏だ。考えれば考えるほど、自分のことながら憂鬱になってくる。

「いや、ない」

「そうなんだ。じゃあ、やっぱり黄金ハンターが事実だってことなのかな」

「それしかないと思う」

「そうか、でもそうだとしたら黄金ハンターを書きなおしてみれば?」

「書き直すって?」

「これまで起こったことを付けたしたら、よりリアルになるじゃない。実際起こったことはまったく小説通りじゃないんでしょ?」

「うん、大島だと何も発見されないって話が、千両箱が見つかったことになった」

「そうだよね。実際そっちのほうがリアリティがあるよ。面白くなってる」

「なるほど、確かに」

 今村の言う通りだ。これからも何が起きるかわからないが、事実の方がリアリティが増すし、何より現地に行って見ることが出来るわけだから、より小説の完成度は上がるはずだ。文章力に問題はあるが・・・。

「そうだ。長谷川君、小説を上達するのには、好きな作家や目指す作家の文章を模倣するのもいいんだよ」

「え、どういうこと?」

「自分が目指す作家がどういった文章表現をしているのか、同じ文章を書いてみるのよ。そうすると技法に気が付いたりするの」

「そうなんだ。文章をそのまま書いてもいいんだね。わかった。やってみるよ」

 今村さんはそういったこともよく知っている。参考になる。

「その後、小説は書いてるの?」

「少しづつは書いてる」

「東野圭吾も言ってるけど、無理してでも毎日書いた方がいいんだって、作業を癖にしないとだめだって」

「そうだと思う」

「私は諦めたけど、長谷川君は小説頑張って欲しいよ。黄金ハンター以外に書いてる話はないの?」

「あるよ」

「どんな話なの?」

「ミステリーなんだけど、横溝正史の小説通りに殺人事件が起きる話なんだ」

「へー面白そうだね。それ書き終わったの?」

「大体完成してる」

「じゃあ、読ませてよ」

「うん、わかった。また批評聞かせてよ。今村さんの批評はためになるから」

「そう、じゃあ、鋭い批判しちゃおうかな」

「うん、冗談抜きに批判も欲しいんだ。俺の小説ってまだまだ未完成だから、どこをどう直せばいいのか教えて欲しい」

「わかった。よくするために協力する」

「ありがとう」

「めざせ、小説家だね」

 なんかこれまで生きてきて良かったと思える瞬間だった。今村さんが俺のことをどうこう思ってるはずもないけど、こうして俺の小説に関心を持ってくれて、よくなるために力を貸してくれることがとてつもなくうれしい。

「それで今週末から結城家の埋蔵金探しに行くのね?」

「そうなんだ。伊瀬知の意向でこれから小説通りに行動するらしい」

「そうか、あの和歌の謎を解くんだね」

「どうなるのかな」

「でもあの小説通りになるのかな」

「そうだね。どうなるんだろ」

 小説の中には実現不可能な部分があるのだ。それを伊瀬知はどうするんだろう。

「長谷川君は栃木に行ったことあるの?」

「ああ、今村さんに話したことなかったけど、俺の田舎があそこなんだ」

「え、栃木県なの?」

「そうなんだ。小山市だから目と鼻の先で、子供の頃からあの辺でウロチョロしてたんだ」

「そうか、なるほど、小説でも結城家の部分は細かい描写が多いのはそれが原因か」

「ああ、そうなのかな、自分では意識してなかったけど、場所の知識は深いからそうなったのかもしれない」

「でも長谷川君にあまり訛りはでないね。栃木県って訛りがあるんじゃないの?」

「お笑いタレントの影響かもしれない。栃木県出身タレントは大体訛ってるから。でも実際、若者はそれほどでもないんだ。特に俺なんかあまりしゃべらないほうだから」

「そうなんだ」

 しばらく世間話をしてから彼女と別れる。

「じゃあ、またね。埋蔵金の話にも進展があったら教えてね」

「うん、じゃあ」

 こうして俺の幸せな時間は終了した。

 

 学生支援センターに寄って就職先を探してみるが、先週と変わったところはない。そりゃそうだよな、もうここまで来たら新たな求人対象は3年生が中心になる。企業側も早期に優秀な学生を青田買いするのが当たり前だ。就職サイトによると4月の段階ですでに8割がたに内定が出されているらしい。学生も3年生から就職準備を始める。インターンシップだとかで夏休みも企業に行くことになる。

 俺は貧乏学生でもあり、バイトに明け暮れ、3年生の頃には編集者か小説家になれるような馬鹿な考えを持っていたものだから、そういったことは何もしてこなかった。今考えるとなんて浅はかだったんだろう。現代の作家連中も社会人を経験し、ほとんどが働きながら小説家を目指してその夢を実現させている。学生からそのまま作家になれるような人はほとんどいない。つくづく自分の馬鹿さ加減に呆れてしまう。そして最後にはいつもの逃避癖が頭をもたげる。とにかく今回の黄金ハンター案件が終了するまで、就職試験は棚上げしよう。


 そして週末の土曜日になって、やはり早朝に伊瀬知が来た。

 俺はそうなることを予測して、早めに朝飯を食っていた。朝飯と言っても菓子パンとジュースだったが・・・。まあ、どこかで自腹で朝定食を食べさせられるよりはましである。何せ、俺は極貧大学生なのだ。

「おはよ。行くぞ。飯食ったか?」

 いつもの軽快な伊瀬知である。俺はうなずく。

 小山市はここからでも近い。電車通学が出来ないわけはないぐらいの感覚もある。電車で2時間、自家用車でも同じぐらいで行けるのだ。特に伊瀬知の運転だともっと早いだろう。

 スイフトスポーツに乗り込みながら、

「この時間だと発掘は今日中に完了する予定ですか?」今は朝の6時だ。

「そうだな。そんな感じだ」

 なるほど伊瀬知側の発掘準備は完了しているといったところだろうか。

「それと俺は今晩は実家に泊まります」

「そうか、確か小山市が実家だったよな」

「そうです」

 伊瀬知は俺のことを調査済なのだろうか、果たしてどこまで知っているのだろう。

 車は中央高速から東北道に抜けていくルートを走る。

「伊瀬知さん、発掘準備は終わってるんですか?」

「そうだな。小説通りにはやれるようになっている」

 それはすごいな。具体的にどうやるのかは知らないが、じゃあ伊瀬知のお手並み拝見といこう。

「あと、つまらない質問ですが、俺を狙ってる黄金ハンターの組織の連中って普段はどうしてるんですか?」

「普段?どういう意味だ?」

「俺の日常を狙って襲わないのかと思ってるんですよ。学校でもバイト先でもそうすればいいと思いますけど」

「そのために私が付いているだろう」

「え、どういうことですか?」

「だから、いつも君をガードしてるだろ」

「うそでしょ、いつも見守ってるってことですか?」

 ちょっと信じられない。そんな気配はまるでなかった。

「例えば、君がカフェテリアでかわいい彼女さんと一緒にいる時も私はガードしていた」

「いやいや、彼女じゃないです」

「わかってる。冗談だ。君には過ぎた女性だ」

 そこまで言わなくてもいいだろうと思うが・・・。

「終始、ボディガードをしているんですか?」

「そうなるな」

 いや、そんな気配はまるでなかったのだが、四六時中となると、トイレとかはどうやってるんだろう。

「でも今回の発掘準備はどうしたんですか?」

「それは企業秘密だな」いやいやなんですか、それは。

 俺はそれだけではない。前から聞きたかった話をする。

「あと、この車、スピード違反で捕まらないのはなぜですか?」

 伊瀬知は不敵な笑みを浮かべる。

「それも企業秘密だが、まあ教えてやろう。この車にはオービスやレーダ探知装置が付いている。簡単に言うと警察が取り締まりをしていると瞬時に教えてくれる」

「まじですか?」

「まじだ。それとあらかじめ警察情報も入手している。やつら基本は計画どおりに取り締まりをやるからな」

「どうやって入手するんですか?」

「まあ、色々だな。そこは言えない」

 どう考えても違法行為だな。それとこの車の速度だ。今も200㎞を超える速度で走っている。

「この車は何かやってるんですか?とんでもない速度ですけど」

「リミッターを解除してるのとチューンもしている。スポーツカー並みにはなってるな」

 いやいや、スポーツカー並みって、さっきからそういった車をどんどん追い越してるんですけど。でも元々この車の速度メータって、260㎞もあるからそういうことなのかもしれない。そういえば確かに突然、車が制限速度になったりするので、伊瀬知が言ったような機能は付いているんだろう。

 車はあっと言う間に佐野藤岡インターを通過して、県道に入って行く。なんとここまで1時間を切っているではないか。この車だったら家から通学できそうだ。

「まずは小説通りに金光寺からだ」

 小山市に来ると何か複雑な思いがよぎる。俺の故郷なのだがここにはあまりいい思い出がない。友人たちと遊んだ覚えもないし、いつも一人でいたような気がする。小学校、中学校といじめがあったし、学校にもあまり行かなかった。いわゆる不登校児童だった。 

それでも祖母が生きていた頃は無理やりにでも学校に行かされていたが、5年生の時に祖母が亡くなってからは、タガが外れたように行かなくなっていた。いじめもあったが祖母の存在が無くなり、そのショックが大きかったように思う。祖母は俺の母親であったし、どうかすると父親でもあったのだ。俺は祖母に作られたと言っても過言ではない。そういった存在がいきなり無くなると、足元から地面が無くなるような虚無感に襲われたのだ。それでそれまで以上に学校には行かなくなり、本にのめり込んだように思う。現実逃避だったのかもしれない。

「着いたぞ」


 金光寺は結城家初代当主結城朝光が建てたと言われる真言宗のお寺である。名前に金の字がついているが、それが黄金に起因しているのかどうかはよくわからない。同じ名前の寺は全国にある。少しは金にまつわる話もあるので、おそらく何かの縁はあるのかもしれない。

 そして、こちらの寺が有名なのはもちろん結城家の埋蔵金伝説によるものだ。

 17代当主の結城晴朝は家康より国替えを命ぜられ、その際にお家再興を目指し、結城家に伝わる埋蔵金をどこかに隠したとされる。そしてこの寺の山門に3つの和歌を残した。それこそが埋蔵金の隠し場所でもあるかのように・・・。

 金光寺は観光地といった風情ではなく、真言宗のお寺然としたたたずまいの寺だ。金光寺という記載のある門から中に入って行くと、まずその山門が見えてくる。

 門は四脚門とでも言うのだろうか、両側に柱が建っており、真ん中の柱が太く、さらに前後に1本づつの細い柱がある。計6本の柱があることになる。その上に切妻造の屋根が付いている。幅は5mぐらいだろうかしっかりした屋根である。

 果たしてこの山門は晴朝が作ったのだろうか、確かに歴史を感じさせる。そして屋根の下側に4脚門を渡す形で柱がある。その柱に文字が刻んであるのだ。

 3本の柱にそれぞれ和歌が刻んであった。

「文字は彫刻したのか?浮かび上がってるな。なるほど、これが謎の和歌だな」伊瀬知が文字を覗き込んでいる。「なんか、一部削られてるみたいだな」

「誰かがいたずらしたそうですよ」

「見つけられないようにか?」

「いえ、単なるいたずらみたいです」

「なんとまあ、嘆かわしい」

「でも書いてある和歌はわかっています」

「君の小説にもあったな。三つあるんだよな」

「そうです。

(あやめさく 水にうつろうかきつばた いろはかはらぬ花のかんばし)

(きの苧か ふゆうもんにさくはなも みどりのこす万代のたね)

(こふやうに ふれてからまるうつ若葉 つゆのなごりはすへの世までも)

 この三つの和歌が埋蔵金の隠し場所を教えているということです」

「どういう意味なんだ」

「俺も専門外なんで教授に聞いたりしましたけど、なんか特段意味は無いようです」

「意味がないのか?いや、その前に君は国文学専攻じゃないのか?専門だろう」

「えーとうちの大学は広く浅く教養を身に付けることを目的に・・・」

「はいはい、まったく、困ったもんだ。で、和歌の意味は?」

「ああ、そのままです。ひとつめは(あやめが咲いていて、かきつばたは水面に映っている。花はきれいなままでいい香りがする)となります」

「確かにそうだな。それぐらいなら私でも歌えるぞ」それはどうかな・・・。

「二つ目はもっと不思議です。果たして意味があるのかどうか。(木のからむしなのか、冬の門に咲く花も緑を残す万代の種である)」

「なんじゃそりゃ?」

「そうなんですよ。だから和歌をわかるように曲解すると(カラムシのように見えるけど、花も緑も残しているからこれは万代の種だったんだ)なのかもしれません」

「カラムシって何だ?」

「はい、雑草みたいな草のことです。万代は寒椿の一種です」

「ふーん。それで三番目は何?」

「(こんなふうに触れて絡まって打ってくる若葉はつゆの名残のように蓮の世まで続いていくんだろうな)」

「はあ、増々わからんぞ」

「つまりは(若葉が元気いっぱいに絡まって来るけど、これはまるで永遠に続くような

 青春の名残みたいに思える)とでも言うんですかね」

「片思いの歌なのか、しつこくストーカーをし続けるみたいな」

「どうなんですかね。よくわかりません。まあ、とどのつまりどれもあまり意味はないということのようです。青山先生もそんな風におっしゃってました」

「ということは、やはりこれが何かの暗号だということか」

「そうです」

「じゃあ、小説通りの目的地に行くか」

「ええ」

 スイフトスポーツは寺を後にし、次の目的地に向かう。

「えーと、中久喜城だったな」

「そうです。今は城は無くなって跡地になってます。もうまさに俺の実家の近くです」

 早くに出発したのもあって、まだ午前10時過ぎだ。お寺から中久喜城までもあっという間に着く。

 実は俺だけではなく、この地は以前から埋蔵金の隠し場所として怪しいとは言われていた。それは晴朝が隠居した際にこの城で生活していたからだ。そして最初の和歌がそれを示しているのだ。日テレも特番の中でここの発掘を目論んだそうだが、許可が大変であきらめたらしい。

 小説の中で俺は、この和歌をアナグラムとして考えた。アナグラムとは文字の入れ替えである。それにより全く新しい解釈を導き出すことができる。

(あやめさく 水にうつろうかきつばた いろはかはらぬ花のかんばし)ここから文字を抜き出すと(たからは なかくきのしろに うつす=宝は中久喜の城に移す)となる。すべての文字を使用しているわけではないので、完全なアナグラムとは言えないが、可能性は高いと思う。

 今やその中久喜城跡は単なる森になっている。さらには城跡の真ん中を鉄道の水戸線が走っており、いまや見る影もないのである。

「城も何にもないんだな」

「そうなんですよ。もはや城跡とも呼べないです。でもここの発掘はだめなんですよ。昔テレビ局もそんな企画を立てたらしいんですけど、認可が下りないのか、とにかく大変で諦めたらしいです。で、伊瀬知さんどうするんです?」

「小説にある次の和歌のアナグラム解説を読んで用意したものがある」

 そう言いながら伊瀬知は地図のようなものを出してきた。俺はそれをみて驚く。

「あ、これは城の絵図ですね」

「そうだ。晴朝が隠遁生活をしていた頃の図面になる」

「へーやるな。こういうものを見つけたんですね」

 俺はネットで調べた中久喜城の図面を元に考えたが、晴朝の頃の絵図まで仕入れたとなると俄然、真実味がわく。

「まあな。じゃあ次だな。行くぞ」

 車を置いたまま、歩いて向かう。我々が向かうのは城跡の東側で、そこは農地になっている。

 2番目の和歌は(きの苧か ふゆうもんにさくはなも みどりのこす万代のたね)でそこから文字を抽出すると、(きんのたからは ばんだいにのこす=金の宝は万代に残す)となるのだ。この中久喜城にはその昔、三の郭があり、晴朝が隠遁生活をしていた頃にはそこは(万代寺)という寺になっていた。埋蔵金をそこに残すと和歌が言っている。

 伊瀬知がどこからか持ってきた絵図にも万代寺と記述があった。

 伊瀬知がその場所、いまや畑になっている場所まで歩いて行く。そこまで歩いて俺は驚く。

「あ、あんなもの用意したんですか?」

 畑の脇に小型のパワーショベルが置いてあった。

「まあな、準備万端だろ。小型と言っても2m近くは掘れるぞ。世界のヤンマー製だ」

 小型と言ってもショベルの高さは3m近くある。

「あと、土地の所有者の農家の方に話をしてるんですか?」

「もちろんだ。寸志も出したぞ。ここの作物を粉砕するからな」

「埋蔵金発掘って話をしたんですか?」

「そんなこと言ったら分け前をくれって話にもなりかねないだろ、国の遺跡調査だと言ってある」

 なんという詐欺行為だ。もし埋蔵金が出たらどうするんだろう、こっちが心配になる。

「じゃあ、私が動かすから君は絵図を参考にして場所を指定してくれ。それと何かあったら作業を頼む」

「わかりました。ところで伊瀬知さんはショベルを動かせるんですか?」

「当たり前だ。伊瀬知悠だぞ、ジェット機も操縦できる」

 そういうとショベルのエンジンを掛ける。水冷2気筒ディーゼルが音を響かせる。

「えーと絵図で言うと、どの辺になるのかな?」

 俺は絵図を見る。三つ目の和歌は(こふやうに ふれてからまるうつ若葉 つゆのなごりはすへの世までも)で、それからアナグラムすると(うばのはかからうまやまでつつへのこす=乳母の墓から厩まで筒へ残す)となる。

 たしかに絵図には万代寺の脇に厩が表示されており、その先に墓があるように書いてある。もちろん誰の墓かまでは記載がないが、元々土地も小さく墓の数も少ないし、さらには厩も小さいものだ。絵図の厩から墓周辺をすべて掘ったとしても、それほどの面積はないのである。

「絵図を見ると今ショベルが置いてある場所が厩の位置になります。そこから東側に三角形の畑がありますよね。あれが墓だった場所です」

「じゃあ、ここからその畑一体を掘っていくか」

「そうですね。それでいいと思います」

 実際、広さは幅で言うと5m以下で長さは30m以下だろう。それほど大変でもないはずだ。伊瀬知は器用にショベルを動かしていく。掘りながら後ろ向きに進んでいく形で、穴が掘られていく。

 俺は段々手持無沙汰になってきて、その畑近くに座り込む。

 ここは冬は寒い。雪も降るので積もると大変だ。幸いこの数日間は雪も降らずに地面は問題なく掘っていけるようだった。寒いながらも日も照っており、少しはあったかさを感じる。朝も早かったのでなんか眠くなってきた。

 うとうと仕出したところで、伊瀬知の声が聞こえた。

「長谷川、起きろ、奴らが来たぞ」

 はっと気付くと、畑の周囲に例の黄金ハンター組織の人間が近づいてきている。目を凝らしてみると前回の3名で懲りたのか、今回はなんと7名もの大所帯ではないか。

「君は命を狙われているのに、相変わらず能天気だな」

 伊瀬知があきれ顔で話す。いや、奴らこんなところまで来るか。水戸線からも見られるぞ、本数少ないけど・・・。実際、電車はこの時間だと1時間に1本ぐらいだ。

「長谷川、これを持っておけ」

 伊瀬知はそう言うと、自分のリュックからグロック26を出す。

「うそでしょ、拳銃なんて撃ったことないですよ」俺は小声で非難する。

「適当に撃てば当たるかもしれない。まあ最後の手段だ」

 適当に撃てって・・・俺は仕方なく、伊瀬知から拳銃を受け取る。前回は3人だから何とかなったが、今回は敵が多すぎるということなのか、最後の手段とは・・・。ダウンジャケットのポケットにグロックを忍ばせる。

「そういえば自動拳銃って安全装置が付いてるんじゃないですか?」

「グロックにはない。そのまま撃てばいい」

 安全装置がないって、それが反って恐ろしい気がする。ポケット内で暴発しないのかな。冬なのに一気に冷や汗が出る。

 そして、黄金ハンター組織の人間たちがゆっくりと間合いを詰めてくる。

 例の美人女性ハンター、恐らく彼女が幹部だと思う、それが外国語を話す。はいはい英語ですね。

 伊瀬知が同じく英語で返す。

「何だって言ってるんですか?」

「なんか、やつら戦力をアップさせたらしいぞ。プロボクサーを連れてきたらしい」

 6人の男たちはみんな大柄で強そうだが、さらにその中にはプロボクサーと思われる巨漢の黒人がいた。

「伊瀬知さん、あれはヘビー級ですよ。無理です」

「ふふ、伊瀬知悠の実力を知らないな。メイウェザークラスを持ってこないと勝負にならない」

 ああ、それよくあるボクサーの強がりですよ。大体、そんなことを言うと無残にノックアウトされるんですから。俺は仕方なく何かある場合に備えて、ポケットのグロックを握り締める。

 伊瀬知に男たちが間合いを詰めていく。すると男たちを制してマイクタイソンのようなヘビー級ボクサーが前に出てくる。伊瀬知ピンチ。

 タイソンがボクシングスタイルで伊瀬知に迫ってくる。それに対し伊瀬知は半身の姿勢で、同じくボクシングのような構えをする。そういえばブルースリーがこんな構え方をしていた。これが伊瀬知のジークンドーの構えなのだろうか。

 周囲は真昼間なのにまったく人気がない。まあ田舎のいつもの光景だが・・・。

 タイソンはにやにやしながら、伊瀬知に近づく、ひょっとして伊瀬知を伸してから手籠めにするつもりなのだろうか、いや、そうはさせないぞ。俺はグロックを再び握る。

 いきなりタイソンがパンチを出す。いわゆるジャブである。伊瀬知はそれをかわす。伊瀬知、ボクサーはワンツーで来るぞ。やはり左ジャッブを出した後から右ストレートを打ち込もうとする。

 伊瀬知はそれを簡単にかわしながら、目つぶしを仕掛ける。あまりのスピードにボクサーも付いていけないのか、もろに目つぶしを食らって、悲鳴を上げる。さらにすかさず、金的攻撃で股間を下から強烈に蹴り上げる。離れていても聞こえる鈍い音がする。ひょっとしてつぶれたのか・・・。

 タイソンはそのままのたうち回る。あれは痛いぞ。倒れたタイソンの後頭部にさらに強烈なかかと落としを食らわし、それでタイソンは失神した。伊瀬知おそるべし。

 残りの男たちがあらためて伊瀬知の戦闘能力を警戒しながら、近づいてくる。女性幹部が何やら指示をするが、俺は英語はわからないんだって。

 残った男たち5名もいずれも格闘家のようで、それぞれの格闘技の構えをしながら、伊瀬知との間合いを詰めていく。

 伊瀬知は先程の構えを続けながら、突然、怪鳥のような雄たけびを上げる。あ、もろブルースリーじゃん。俺は小説を書くにあたって、見た映画(燃えよドラゴン)を思い出す。

 そうか、伊瀬知はジークンドーだから、ブルースリーを実践してるんだ。

 すると一瞬たじろいだ男たちが、気を取り直すようにして、全員で一気に伊瀬知に掴みかかってくる。伊瀬知ふたたびピンチ。

 伊瀬知はかがみこむようにして掴みかかる男たちを素早く避ける。さらに足払いをしたのか、手前の男が転倒する。その隙間を伊瀬知が抜けていく。実際はあまりに早くて何が何だかよくわからなかったのだが、しかしこれで伊瀬知は囲い込みから抜けだした。

 男たちが再び伊瀬知に襲い掛かろうとするが、すでに彼女は攻撃が出来ない位置にいるのだ。伊瀬知は男たちの端に位置している。まず伊瀬知はすぐ隣にいる男の顔面に正確に正拳突きを食らわす。これがまともに顔の急所に入ったのか、男の動きが止まる。次にこめかみにフックを撃つ。こめかみも人間の急所だ。矢継ぎ早の急所攻撃でその男は悶絶する。

 そして次に来る男も同じように連続の急所攻撃だ。伊瀬知の攻撃は基本カウンターで、自分から攻撃する事はしない。相手の攻撃力をうまく利用したカウンター攻撃が中心のようだ。そして大きく動くことはなく、攻撃の避け方も最小限で済ますのだ。回避できない場合でも手をうまく使って払うようにして、その上で手足を使ってのカウンター攻撃だ。そうやって大勢の男たちが次々と倒されていくではないか。伊瀬知すげえ。

 すでに男たちが残り2名となったところで、大島の時と同様に女性幹部はあっさりと諦める。何やら逃走指示を出したようだ。生き残った男たちが、完全に伸びてしまった男たちを引きづるようにしてそこから退避していく。タイソンは重そうだった。

 拳銃を撃たなくて済んだ。組織の人間が見えなくなって俺はほっとする。

 伊瀬知に近づいて、「すごいですね。あれだけの敵に対峙しても難なく倒せるとは・・・」

「まあな。伊瀬知悠だからな」

 うーん、伊瀬知悠か、実物は小説よりも強いかもしれない。俺はグロックを伊瀬知に返す。

 

 組織の人たちも去り、畑は再び平静を取り戻す。

「じゃあ、掘るぞ」伊瀬知は再びショベルカーに乗り込んで動かしだす。

 俺はすでに掘り起こした部分を覗き込んでみる。

 ちょうど3m幅で深さは1m程度の穴が黒々と開いている。すでに10m近くは掘り終わっているようで、穴の周囲にはこんもりと土砂が盛り上がっている。

 その当時の乳母の墓だからそれなりの人物だったと思われる。よって城に近い場所であまり端にはないのだろうと思う。でも乳母って誰の乳母だったんだろうな。戦国時代だから乳母はいただろうけど、歴史上、晴朝の乳母の記録は残っていない。

 ふと自分のことを考える。さしずめ俺の乳母はばあちゃんだな。母親が亡くなって乳母替わりで育ててくれた。まさに乳母と言う存在そのものだ。お乳は出ないけど・・・。

 俺はばあちゃんの墓について思いをはせる。もちろん長谷川家の墓は先祖代々、この地にある。ばあちゃんも母さんもそこに眠っているのだ。今回、いい機会だから墓参りもするかな、などと思ったところで伊瀬知が何か言っている。

 どうやら何かを見つけたようだ。彼女が機械を止めて降りてくる。そして大きなリュックの中からシャベルを出し、俺に渡す。伊瀬知のリュックにはなんでも入っているようだ。

「よし、長谷川、掘ってみろ」やっぱりあとは俺の作業なんだ・・・。

 掘り進んだ穴の奥に確かに何かの物体が見える。シャベルを持って穴へ入る。

 土の中には確かに陶器の筒のようなものが見える。筒というか土管のようである。この土管に金塊が入ってるのか。土管の端は蓋がされており、直径は30㎝ぐらいで円筒形をしている。

 ショベルカーである程度は掘ってあるので、土管の全貌がわかるように俺がシャベルで回りの土を手作業で取っていく。これは一見、軽作業のように思えるかもしれないが、けっこう土は重いのだ。さらに石やじゃりもあって一掻きするのも重労働だ。さらに土管は結構長い。それよりもなによりも俺は頭脳労働専門なのだ。

 これまで相当長く穴を掘っているので、穴からみみずや何かの虫が顔を出している。それに気が付いたカラスが、えさを求めて集まってくるようだ。周囲に数羽群れを成してうるさく鳴いている。この辺もカラスが増えたな。

 ヒッチコックの映画(鳥)のような現場で、俺は掘り進める。いよいよ、腰が痛くなってきた。あまりの重労働に俺は小休止する。

「長谷川、もう休憩か」

「伊瀬知さん俺は頭脳労働中心なんです」

「穴掘りなんか、肉体労働のうちに入らないぞ。頭脳労働程度の運動量だ」

 この人と肉体労働の議論をしても無駄だな。仕方なく俺は作業を続ける。

 実にそれから1時間以上は掘り続けただろうか、ようやく土管の端まで掘り終わる。

 俺は穴の中で腰を降ろして、ただただゼイゼイ言っている。この寒さの中もう汗だくだ。

 伊瀬知は穴の中に入って来て土管を見る。長さ3mはあるだろうか、何本かの短い土管が繋がれて長くなっているのだ。さらに両端には蓋の様な同じく陶器で出来たもので塞がれている。

 伊瀬知は俺のシャベルを器用に蓋に挟み込んでみるがびくともしない。

「駄目だな」

 そう言うといきなり瓦割の要領で、手とうで土管を叩く。なんと土管が割れた。この人シャベルより硬い手なの。端の方にひび割れの様な穴が開いて中が見えた。伊瀬知が覗き込む。

「長谷川、見て見ろ」

「え、金が出ましたか?」

 俺は期待と共に隙間を覗き込む。そこには光り輝く金塊ではなく、何か木のようなものが入っているようだ。

「何でしょうか?」

「君の黄金ハンターには無かった展開だな」

 そうなのだ。俺の小説だと、土を掘り起こすと何かの痕跡はあったが、金塊などはなかったという結末だった。それが本当に筒と何かが出てきた。しかし、木とは何だろう。

 伊瀬知がさらに土管を壊す。ひょっとしてこれは文化財ではないのか、壊していいものなのかと心配になる。

 結局、ふた部分は全壊となり、そこからその木のようなものを取り出した。それは柱だった。

「これは、山門にあった柱と同じみたいです」

「そうだな。何か彫り込んであるぞ」

 俺が柱を見ると、確かに山門にあったものと同じように、文字が彫られて浮かび上がっている。そこにあった文字は、

(あれば 萱が軒端の 月も見つ 知らぬは人の 行く末の空)と読めた。

「何だろう、ちょっと調べてみます」

 俺はスマホを取り出してその文字の意味を調べる。そしてそれはすぐにわかった。

「これは後鳥羽上皇の和歌です。上皇が隠岐に流された際に詠んだ歌です」

「ふーん、どういう意味だ?」

「あればって何かな、萱の軒先から月を見てると人の生き死にとはわからないものだな、みたいなことだと思います」

「後鳥羽上皇ってたしか失脚したんだよな。それで島流しにあってくやしさ紛れに詠んだ歌か」

「そんなところです。あ、そうか、晴朝も国替えにあって同じような気持ちだったのかもしれませんね」

「なるほどな。だから埋蔵金もないのにこんな仕掛けをして、後の人間をあざ笑おうとしたのかもな」

「そうですね・・・ちょっと待ってください」

 俺は考えを巡らす。和歌でアナグラムを作るのだから、これも何かあるのかもしれない。

 スマホを使って文字を分解してみる。するとしばらく考えてある言葉を作れた。

「(かがやきのゆくえはみしらぬひとのもの=輝きの行方は見知らぬ人のもの)ってなりますね」

「ほほお、なかなか面白い落ちをつけるな。そういうことかもしれんな」

 なるほど、これで落ちが着いたな。今村に言われたように黄金ハンター完全版を書く際にはこういった話を盛り込むか。

「伊瀬知さん、これからどうしますか?」

「ここを後片付けする」

「じゃあ、その後で俺の実家に来ませんか?すぐ近くなんです」

「君の実家か、いや遠慮するよ。私は人見知りなんだ」

 いやいや、伊瀬知に限って人見知りはないだろうとは思うが、無理強いはしない。

「そうですか、じゃあ俺も片づけを手伝います」

 それから柱を筒に戻し、端は適当に塞いで元に戻した。後は伊瀬知がショベルカーで土を戻していった。ショベルの作業中は俺はやることもないので、伊瀬知を見守るだけだった。

 一通り作業を終えて、伊瀬知が言う。

「来週には秀吉の埋蔵金探しに行くぞ」

「わかりました」

「多分、来週末になるかもな。少し準備がいる」

「はい、了解です。また、連絡ください」

「じゃあな」

 そこで伊瀬知と俺は別れた。まあ、彼女はそう言いながら俺のボディガードを続けるのだろうが、そこはあえて聞かなかった。


 伊瀬知と別れた俺は実家まで歩く。ここからだと1㎞はない距離だ。

 実家は元々、祖母というか祖父の家であった。長谷川家の先祖は農家だったらしいが、それだけだと食べていけなかったようで、祖父の代では兼業農家で暮らしていたらしい。その祖父は俺が生まれる前にすでに亡くなっていたので、会ったこともない。

 父は東京で働いていた時に母と知り合い、結婚し、俺が生まれた。当時の事はよく知らない。父がそういった話をしないこともあるが、俺もあまり聞きたいとも思わなかった。

 母が亡くなったのは俺が3歳の頃で、父は幼い俺の扱いをどうするか途方にくれ、田舎の祖母を頼ったらしい。父は不器用で人付き合いも得意ではない。祖母に頼るしかなかったのはよくわかる。残念ながら、そういったところを俺はしっかりと受け継いでいる。

 父は田舎に戻り、祖母に俺の面倒を見てもらいながら、小山市で職探しをしたらしい。それから勤め先も何回か変わったそうで、今の塗装工場は40歳過ぎてからの勤務となる。よって会社では職位も低く、当然、薄給だ。

 そのため親父は俺には同じ苦労をしてほしくない一心で、大学まで通わせてもらった。ああ、それなのに俺はだらしない道を歩もうとしている。そこは申しわけ無い気持ちでいっぱいだ。ちなみに俺は今まで親父に小説家志望などといったことは一度もない。書いてることも言ったことは無いし、新人賞に応募している話など触れたこともない。また、大学を受けるにあたって文学部を選んだ際も、大学のパンフレットを見せて、企業人としてのスキルを身に付けるだのなんだのという、大学側のうたい文句でごまかした覚えがある。

 ごめんなさい、あなたの息子は結局貴方と同じような道を歩みそうです。とにかくここまで来たら経緯を説明する必要はあるだろう、まだ、就職先が決まっていない理由や今後の身の振り方についても話をしないとならない。それと埋蔵金探しについても説明する必要があるだろう。もし間違って埋蔵金が発掘された場合の、今後についても話さないとならない。

 さて、どうやって話をすればいいのか、などと悩みながら歩いていると、すぐに実家についた。やはり城跡から実家は極端に近いのだ。実家は昔ながらの2階建ての日本家屋の一軒家であるが、お金もないので改築もしていない。おそらくこの地に大きな地震が起きたら、間違いなく全壊となるだろう。


 まだ、午後3時前なので当然、親父は仕事中かと思ったが、玄関に鍵は掛かっていなかった。いつもは土曜日も出勤だと思ったが、最近はそうでもないのかもしれない。

「ただいま」

 俺が言うと中からもそっと親父が顔を出す。

「おう、おかえり」それだけ言うと居間に戻る。

「今日は仕事じゃないの?」居間でテレビを見ながら座っている父に話す。

「ああ、60歳を過ぎたんで少しは楽をさせてもらってる」

 そういえばそうだった。父は昨年60歳を迎えた。一昔前ならリタイアして年金生活となる年齢だが、老人大国日本ではそれは夢のような話だ。一流企業に勤めている人でも60歳でリタイアできる人は数少ない。みんな潤沢な蓄え等は無いに等しいのだ。ましてや父のような貧乏生活だと、果たして何歳まで働かないとならないのか先が見えない。さらに俺のようなだらしない若者だと、これからはおそらく死ぬまで働くしかないような気がしてくる。働けなくなったらそれこそ死が待っているのだ・・・。そういったことは恐ろしくてあまり考えないようにしているが・・・。

「父さん、ちょっと話があるんだけど」

 親父はその言葉に少し覚悟があったのか、珍しく真剣な顔で俺の顔を見る。

「うん、どうした?」

 俺は父が座っているこたつに座る。久々に親父の顔を間近に見ると、老けたのがわかる。白髪が増え、顔のしわも老人のそれになってきている。増々申し訳ない気分になる。

「ちょっと話しづらいことなんだけど、実は俺まだ就職が決まってないんだ」

「そうだな。それはわかってる。それでどうする?」

「うん、それで実は・・・」

 俺はこれまでのことや、小説家志望の話や黄金ハンターの話を延々とする。こういった話を親父にするのは初めてだった。

 親父は時々内容を確認するかのように質問するが、俺がやってきたことに極端に拒否反応を示すことなく、静かに聞いてくれた。そして概ね理解したようだ。

 俺は話し終えて親父の反応を待つ。

「それで真治はどうしたいんだ?」

「うん、就職はしないといけないとは思ってるんだ。でも・・・」

「いや、そうじゃない。お前は小説家になりたいんじゃないのか?」

 親父のその言葉は何か不思議な気がした。そうなのか、俺は小説家になりたいのか、今まで漠然と夢のような気持ちで捉えていたけど、面と向かってそう言われると、それがすべての答えだった。

「ああ、でも無理だよ」

「そうなのか、俺は学がないから何とも言えないけど、それでお前が納得できるならそれでいい。ただな、納得できなければやるしかないよ」

「埋蔵金が見つかったら、なんとかなるかもしれない」

 親父は初めて下を向いた。そしてなんだか笑みを浮かべながら、

「そうなのか、そんな話じゃない気がするぞ。埋蔵金が見つかろうが、無かろうが、お前が自分の将来をどうするかを決めないと話は進まない。仮にお金が潤沢にあって楽して小説を書いていくにしろ、それは二の次だ。まず自分の進路をどうするかをお前が決めることだ。そうすればお金があろうが、貧乏生活しようが真治の生き方は変わらないだろ」

 俺ははっとする。確かにその通りだった。自分の生き方の問題だった。

 俺はしばらくじっと黙っていた。これまではっきりと自分がどうしたいのかを考えてこなかったのだ。それだけは、今はっきりとわかった。

「真治、今話した埋蔵金話はこの一年で起きたことだよな」

「えーと、正確には去年の7月ごろだよ。だからまだ7カ月かな」

「そうか・・・」

 親父が一連の埋蔵金探しについて、騙されてるとか、胡散臭いとか言う話をしないのが不思議だった。確かに俺にとっても埋蔵金探しが増々現実味を帯びている。三つの埋蔵金についてその二つまでもが小説通りとなっているのだ。

「それとお前の小説と現実が一緒になってるんだな」

「うん」

「俺はその小説を読んでないんだが、最後はどうなるんだ?埋蔵金は見つかるのか?」

「小説では見つかることになってる」

「そうか・・・」

 親父はしばらく考え込む。いったいどうしたんだろうか、俺の小説を読んでみたいとかいうのか。そして徐に話し出す。

「真治の将来をどうするかは自分の生き方も含めて、じっくり考えてみたほうがいい。この時期だから就職について焦るかもしれないが、それに左右されても仕方がないと思うぞ」

「うん、わかった。少し考えてみる」

 俺は親父に相談してよかったと思った。もっと早くそうすればよかった。


 俺は2階の自分の部屋に行く。

 ここは俺がいた頃のままになっている。6畳間で勉強机があり、反対側には本棚がある。お金もなかったので、本棚にあるのはどうしても欲しかった本だけがある。小型の書棚に漫画と小説が半々の割合で有る。基本は図書館で読むことが多かった。

 自分の机に座り、昔のアルバムやら落書きノートなどを見る。そういえば俺の原点はこういったノートにあるな。あまり友達もいなかったので、一人でノートに小説みたいなものや、漫画なんかを書いていた。誰に見せるともない、まさに自己満足の城だった。

 そして自分が物書きになぜ憧れていたのかを再確認した。物語を書いている瞬間はその世界に没頭できるのだ。そこには売れたいだとか、読んで欲しいなどと要った邪念はない。ただ、純粋に自分が作り出した世界に酔うことが出来る。なるほど、そういうことだった。そして大学生になった今も同じ思いだった。自分だけの新しい世界を創造する。それこそが物書きの醍醐味だ。

 ノートには最初に書いた小説らしきものもあった。なるほど、これも宝探しを書いたものだった。当時からこの地域の埋蔵金話に影響されていたのがわかる。まあ、他愛もない宝探しの話だが、ここに原点があるな、そう思った。

 子供の頃のアルバムを見てみる。幼児の頃の写真は極端に少ない。なので母親の写真も数枚しかない。俺を抱いている写真があるがあまりにこやかではない。どうやら母親も笑顔が得意ではなかったようだ。実際、俺の写真もほとんど笑った顔が無い。親子そろって笑顔が苦手とはどういうわけだ。

 さらに母が父と並んでいる写真など、ほとんどないぐらいだ。まあ、当時はデジカメが走りの時代で、携帯電話もないし、貧乏だった我が家にはそういったものはなかったのだろう。こうして残った写真も昔ながらのフィルム式カメラで撮ったはずだ。

 ちなみに父と母は年齢差が大きい。母が22歳で父が38歳で結婚と言う、ちょっと信じられないほどの歳の差である。世間ではうらやましいと言われるぐらいの歳の差婚である。どうやって二人がそうなったのかまでは聞いたことが無い。この歳になってようやく不思議に思う。

 しばらくそんな風に色んな事を考えながらぼんやりしていた。

 するといきなり部屋に入ってくる人がいるではないか。俺はそれを見てびっくりした。

 ばあちゃんがいた。

「ばあちゃん・・・」

 祖母は昔と全く変わっていなかった。歳の割には元気いっぱいで顔色も良い。

「真治、お前、まだ就職も決まってないのか?」

「え、親父に聞いた?そうなんだ。どうしようかと思ってる」

「それで、どうするんだ?」

「親父は小説家になりたいなら、それでもいいようなことを言ってる」

「小説家になれるのか?お前の才能で」

「無理だよな・・・」

「まあ、そうだな。昔、真治の小説読んだけど、あのまんまなんだろ」

「いつの話だよ」

「なんか、冒険家が出てきて宝探しをするやつだよ」

「ああ、それ小学生の頃の話じゃないか、あれよりは進歩してるよ」

「そうかい、少しは進歩したのか、でも、ばあちゃんはあの話も面白いと思ったぞ」

 俺は思い出す。そういえば子供の頃、俺の小説の読者はばあちゃんだった。俺が書いていたのを勝手に読んで批評してくれた。俺はその読者のために書いていたのかもしれない。

「大学で彼女はできたのか?」ばあちゃんは突然聞いてくる。

「出来るわけないよ」

「なんだ。情けない。好きな女の子もいないのか?」

「いないよ・・・」なんとなく今村が浮かんだ。

「そんなんでどうするんだ。ばあちゃんなんかお前の年には引く手あまただったぞ」

「俺は奥手なんだよ」

「奥手ってお前いくつだ?」

「21歳」

「十分、奥手だな。十分すぎる」

「まったくばあちゃんは・・・」

「気になってる娘もいないのか?」

「え、いないこともないけど」今村は絶対無理だな。

「だったら告白してみろ」

「無理だよ」

「真治は昔から諦めが早いんだ。まずは挑戦してみろって、そこから未来が開けるぞ」

「・・・」

「小説家だってそうだ。やってみないと始まらない。やってダメだったらそれで仕方がないだろ。昔から言うだろ、当たって砕けろって」

「砕けちゃだめだろ」

「真治はまだ若いんだ。未来はどうとでもなる」

「そうかな」

「ばあちゃんは真治なら出来ると思うよ」

 祖母から言われるとそんな気になる。

「今村だってアタックしてみないとわからないぞ。振られたっていいじゃないか」

「え、ばあちゃん、今村って、俺名前まで言ってないよ」

 祖母はいつもの笑顔でにこにこしている。

「あ、そうだ。俺、ばあちゃんに聞きたかったことがあるんだ?」

「何だい」

「人間って何で働くんだ?」

「はあ、真治、働かざる者食うべからずってことわざもあるだろ。働かなきゃ食っていけないんだ」

「そうだけど、働きたくないって思うのはだめなのか?」

「怠け者だね、お前は。いいかい、みんな働かないと何にも出来てこないだろ、みんなしてうんこを食うしかなくなるんだよ」

「ばあちゃん汚い」

「そうだろ、だから働くんだよ・・・」祖母はいつもの笑顔を見せる。

「真治・・・」

 ばあちゃんの声が親父の声になり、俺ははっとする。あれ、俺はどこにいるんだ。目の前に机があった。

 ああ、なるほど、どうやら俺は机で眠っていたらしい。口からよだれが垂れていた。

「飯が出来たぞ」

 親父が部屋まで呼びに来たようだ。時計を見るとすでに午後7時になっていた。

 居間のこたつに夕食が用意されていた。俺の好物のハンバーグだ。

 親父はばあちゃんが亡くなってから料理をするようになった。もちろん、毎日ではないが休みの日には俺の好きなものを作ってくれた。それなりに大変だったと思う。

 俺はばあちゃんの作るハンバーグが大好きだった。同じものを作れるはずもないが、親父は俺のために必死で同じように作ろうとしてくれた。子供だったので単純にばあちゃんのと違うとか言った覚えがある。それでも親父は同じようになるように努力していたのだ。今になってそれがわかる。

 俺が帰ってくると聞いて久しぶりに作ってくれたようだ。申し訳ない気になる。

 そして男二人での夕食になる。もちろん、そんなに弾んだ会話があるわけでもない。むしろ二人とも寡黙な方だ。テレビを流しながらの食事になる。

 親父が久々にハンバーグを作ったのがわかる。前にもまして微妙な味だった。それが自分でもわかるのか親父がぼそっと言う。

「あんまりうまくないな」

「そうかな。いつもと同じだよ」俺はフォローにならない感想を言う。

 そして再び沈黙。俺はなんとなくさっきの夢の話をする。

「さっき、ばあちゃんの夢を見た」

「そうか・・・」

「明日、墓参りに行かない?」

「ああ、そうだな。行こうか」

 親子で墓参りに行くことになった。


 翌日は絵に書いたような青天だった。近所で花を買ってからお墓に向かう。

 長谷川家には先祖代々の菩提寺がある。どのくらい前からなのかはよく知らないが、墓石を新しくしたのは祖父が亡くなった時らしい。祖母ちゃんが無理して新しくした。それほど、裕福でもなかったはずだが、それは祖父に対する祖母の愛情だったのではと思う。ばあちゃんはそんな人だった気がする。

 母もその墓に入っている。母は東北の出身だということは祖母から聞いたことがある。7回忌までは母方の親戚縁者も墓参りに来たそうだが、俺の記憶にはほとんどない。そういえばそういったこともあったような気がするだけである。

 菩提寺なので家からも近い。親父と歩いていく。

 なんとなく聞いてみたかったことを尋ねてみる。

「父さんと母さんはどうやって知り合ったの?」

 親父は少し考えるように、「ああ、そういえば話したことなかったな」とつぶやくように言う。

「うん、東京で知り合ったのは聞いたことがある」

「父さんは若い頃は東京で仕事をしてたんだ。まあ単純に東京に憧れがあったんだな」

「わかるよ。俺もそうだ」

「当時勤めていた工場が中野にあってな。近くにアパートを借りて住んでたんだ。その時知り合った。母さんは同じアパートにいた」

「へーそうなんだ」

 初めて聞く話だ。親父が中野で働いていたのもそうだし、母とアパートが同じだったのか。

「母さんは当時、大学生で初めて下宿するというので、それなりに大変だったみたいだ」

「母さんはどこの出身なの?」

「東北の秋田だ」

「秋田なんだ」

「そうか、それは知ってると思ってた。秋田の生まれだ。ちょうど俺の部屋の隣に住んでいて、今はありえないけど挨拶回りに来たんだ」

「昔は隣に挨拶するんだってね」

「そうだ。でも俺みたいなおっさんが隣で困ったと思っただろうけどね」親父がにやりと笑う。

「母さんは18歳だったんだね。父さんはいくつだったの?」

「その時は34歳だ。田舎じゃあ完全に行き遅れで、ばあちゃんからはいつも急かされてたよ」

「そうだろうね。ばあちゃんはせっかちだし」

「そうだな。でもとうさんは奥手だし口下手だしな。こればっかりは仕方がない」

 俺も同じだな。親子は似た者同士になるのか、こればっかりは遺伝だな。

「それで母さんも下宿生活が初めてだったから、色々心配することもあってな。なんとなく相談されたりしていたら、仲良くなったんだ」

「へー」

「それで母さんが卒業と同時に結婚した」

「何か急だね」

「うん・・・」ここで親父はまた躊躇する。そして「今で言う出来ちゃった婚かな」

「あ、そうか、それぐらいの歳になるか・・・」自分の歳から逆算するとそうなることに気づく。

「秋田のご両親には死ぬほど怒られたよ。それこそ殺されるのかと思ったぐらいだった」

「そうなんだ」

「母さんは大学生でこれからって時だったからな。それがこんなどこの馬の骨かもわからんおっさんだろ。まあ怒るのも無理はない」

「そうか」

「そんなわけだ」

 なるほど、つまり親父は運が良かったというわけだ。それにしてもやることはちゃんとやってるところがすごい。親子でも俺にはそこまで出来ないな。

 菩提寺に到着する。

 お寺さんの裏に墓が並んでいる。俺は柄杓とバケツを持って寺から水を汲んでくる。

 それで墓の掃除をする。なるほど、墓はきれいだ。親父は頻繁に訪れているようだ。

 線香を炊いて手を合わせる。

 俺は昨夜一晩かかって考えた決意を、ばあちゃんと母さんに報告する。果たしてそれでいいのかはわからない。

 ばあちゃんがいつものように俺を馬鹿にして笑ってる声が聞こえた。


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