065
ブルドラの意識が電脳空間へと辿り着く。
そこは、まるでこの街――アンプリファイア・シティのような配線が張り巡らされた空間だった。
彼女が無数の光の配線や電子回路のような空間を見回していると、そこに赤髪のモヒカン頭とオレンジ色の髪をした少年の姿が見えた。
ブルドラもそうだが、このサイバースペース――仮想世界内では、外での服装がそのままで武器などは持ち込めない。
「ディス君ッ!」
ブルドラがオレンジ色の頭をした少年――ディスの名を叫ぶと、二人の視線が彼女へ向けられる。
赤毛のモヒカン刈りの少年――メガディはブルドラを見て声を張り上げた。
「ななな、なんだよッ!? なんでブレインズが二人もいるんだよッ!」
激しく狼狽えるメガディを見据えてブルドラは、ディスの隣へと並び、そして身構える。
ディスがブルドラに声をかける。
「来てくれ助かったよ、ブルドラさん。なんとかしようと思ったんだけど、こいつ結構強くて……」
「ブルドラでいいよディス君。言いたくないけど……君はやっぱり荒っぽいことは向いてないみたいだね……」
「面目ないです……。そうだ! リズムが落ちていっちゃって! 急がないと」
「じゃあ、さっさとこいつを片付けてリズムを助けに行かなきゃだね。ディスは僕の援護をお願い」
そう答えると、ブルドラはメガディへと突進。
ボクサースタイルの素早い踏み込みを見せる。
ひぃッと怯むメガディは両腕を上げて亀のように身を固めていた。
そのガードの上から、ブルドラの閃光のようなジャブ連打される。
ディスはその様子を見ながら言う。
「援護って……具体的に何をすれば?」
「それくらい自分で考えてよ! 身体を押さえつけるなり側面から殴るなり、何かあるだろうッ!?」
「そっか。じゃあ今から援護します!」
ようやく動き出したディスに呆れながらブルドラの猛攻は続く。
ディスも彼女に言われたように、正面ではなく側面からメガディへと殴り掛かっていた。
無数の光の配線と電子回路のような空間に、ウルトラマリンブルーと赤毛のモヒカン、さらにオレンジ色の髪がうごめく。
ブルドラはメガディと対峙して理解する。
戦闘に関してはまるで素人だ。
これならすぐに片づけられる。
「クソッ! ボクは一人なのに、二人掛かりなんてズルいぞッ!」
「能力で他人を操って戦う君に言われたくないなッ!」
バランスを崩したメガディの顔面に、ブルドラの回し蹴りが炸裂。
メガディは吹き飛ばされて倒れると、涙を流しながらズルズルと身体を引きずっていた。
「お母様……お母様……」
そして泣き顔で呻き続けると、彼は電脳空間から姿を消した。