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デカダンス·レイヴァーたちを飛び越え、ネアは後衛にいるディス、リズム、ニコの前へと飛んでいく。
前衛にいたブラッドたちは、そんなネアを止めようとしたが、次から次へと襲い掛かってくるデカダンス·レイヴァーたちせいで彼女を止めることができない。
「何を狙ってやがるッ!?」
叫ぶブラッドを笑顔で見下ろしながら、ネアはデカダンス·レイヴァーたちの頭を踏みつけていった。
そして、あっという間に後衛へと辿り着き、ディスたちと向かい合った。
「後ろにいるアタシたちなら簡単に倒せると、そう思ったってわけ? バカにしないでよ」
リズムはディスにニコを守るように言うと、彼らの盾になるように前へ出る。
そして、その両手をゆっくりと回しながら、大きな円を描いてから拳をグッと握って身構える。
その強く握られた拳には、白い光が纏っている。
今は無き、生命エネルギーである気を操る技術を持つ里である時の領地――師であるマスター·メイカ·オパールから習った構えだ。
「リズムッ! そいつとは俺が戦うよ!」
「いいからディスはニコをお願い。この人はアタシが捕まえる」
ネアがリズムの前に立つと、デカダンス·レイヴァーたちはどうしてだかディスとニコを狙い始めた。
リズムには目もくれずに、顔がツギハギだらけの少年と電気羊へと向かってく。
「これであなたと私だけね」
「ネア·カノウプス大尉……。あなたがどういうつもりでこんなところにいるのかはわからないけど。お願い、大人しくアタシたちに捕まってください」
「あなたもパロマもちゃんみたいなことを言うのね。全然駆け引きになってないわよ、それ」
「これは駆け引きじゃない。アタシのお願いです。絶対に悪いようにはしません。自分から捕まってくれれば罪を軽減できる……。それは、アタシが命に変えても保証します」
リズムの悲願。
それは、とてもじゃないが彼女の立場――才能の追跡官としてはどうかと思われる発言だった。
才能の追跡官は連合国軍の一部だ。
その意味は、連合国軍へ刃を向ける敵には、たとえどんなことをしても必ずその敵を始末するということに他ならない。
だが、リズムはその暗黙の了解に逆らい続けている。
メディスン、エヌエー、ブラッドでさえ拒むことのできない決まりを、彼女は才能の追跡官になってからずっと拒否していた。
暴力に頼らずに――。
屈服させるのではなく、理解させる――。
リズムはそれらを、常に体を張って連合国軍の上層部へ見せてきた。
彼女が力を得た理由は、まさしくそのためだ。
その揺るがない固い意志は、血塗れの聖女という二つ名もあり、連合国内でもリズムを慕う者は多い。
だが、そんなリズムの気持ちも、ネアの一言でかき消される。
「罪ですって? 罪があるのはむしろ連合国じゃないの?」




