052
――ディスたち第三班が三階フロアの廊下を進んでいる頃。
二階のオフィスエリアでは、第二班、エヌエー班もデカダンス·レイヴァーたちと遭遇していた。
デスクが並ぶ広いオフィス内では、マローダー・ギブソンが前衛に立って敵を蹴散らしている、
その手は、パロマやシヴィルと同じく機械装甲。
マシーナリーウイルスによる機械化した腕が輝いていた。
さらに、彼の持つ剣は光の刃。
現ストリング王国の兵士たちが使用していた光剣――ピックアップブレードが唸りをあげている。
次元が違う。
それを見ていた少年が内心で呟いた。
彼の名はゴウ・ハドウ。
マローダーと同じくエヌエー班の班員だ。
ゴウはムドらと同じくバイオニクス共和国にいたテストチルドレンの一人で、他のメンバーがそうであるように特殊能力を持つ。
彼の能力は、自分の汗や唾などの体液をウォーターカッターように放つ力――水素剃刀。
その力に加え、元から持っていた身体能力の高さもあり、近接戦闘において彼に勝てる者はいないかと思われていた(彼自身もそう思っていた)。
だがそんなゴウでも、マローダーの戦いぶりを見て、この男には敵わないと思い知らされていた。
「これが……戦争経験者の戦いかよ……」
身構えることさえ忘れ、落胆するゴウ。
そんな彼と同じように、エヌエー以外の第二班の班員たちも、その場に立ち尽くしてしまっていた。
「何してるのみんな! マローダーにばかり戦わせてないで動きなさいッ!」
そんな班員たちに、エヌエーが声を張り上げる。
彼女はマローダーの背中を守り、敵を寄せ付けないようにした。
この中で唯一の成人であるエヌエーだが、彼女は何の特殊な力も持たない一番の弱者である。
それでもエヌエーは戦う。
そんな班長の姿を見て、班員たちの表情が変わっていった。
班長などお飾りだと、第二班の誰もが思っていた。
その経歴だけで地位を与えられた、ただ能無しだと、皆が考えていた。
だが、彼女は違う。
エヌエーは違うのだ。
マローダーの強さを見ても自分の弱さに絶望することなく、ただ前を見て戦う。
ただの飾りに、こんな真似ができるだろうか。
いや、できるはずはがない。
ゴウたち班員らは、情けなさを感じながらも自分たちの班長に尊敬の念を覚えていた。
エヌエーは、これまでずっと無力感を味わってきただろう。
それでも、けして彼女は腐らない。
ゴウは前に出た。
班員たちも彼に続いていく。
恍惚の表情で向かって来るデカダンス·レイヴァーたちへと向かっていく。
自分たちが弱いからと言ってなんだ。
一番になれなかったといってなんだとばかりに、再び武器を持って戦う。
エヌエーは、そんな班員たちを見て笑みを浮かべる。
「もう、遅いよみんな。早く陣形を組んで」
そして、第二班は全員でオフィス内を進んでいった。




