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046

――ムドが自室に入ったの頃。


才能の追跡官(アビリティトレーサー)のビルには、この組織の局長であるリプリント・イーストウッドが到着していた。


軍警察署内にある司令室の椅子に腰掛け、メディスン、エヌエー、ブラッド班長らとリズムと顔を合わせる。


「局長、昨日の今日でこんな大規模な作戦など、あまりにも厳しいのではないですか?」


今朝の会議で班員たちへ話したばかりで、昨日の今日に作戦が行われることに、メディスンが不快感を露にする。


それは、エヌエーとブラッドも同じなようで、二人ともメディスンの隣にいながらイーストウッドを睨み付けていた。


そんな班長らを見てイーストウッドが笑みを浮かべる。


「ここには昔馴染みしかいない。いつも通り話せよメディスン。エヌエーとブラッドもな」


班長たちとイーストウッドは、連合国以前に世界統べていたバイオニクス共和国の同僚だった。


そのため自分たちだけのときは、立場に関係なく話せと、イーストウッドが言った。


メディスンは、イーストウッドか座るデスクに近づいて口を開く。


「では、そうさせてもらう。おい、イーストウッド。いくらなんでも無茶なんじゃないか? それと、どこから情報を得たんだ?」


メディスンは、現場にいる自分たちでも知らない情報――。


マーシャル・エリアの廃工場に、どうして電子ドラッグの元締めがいることを知ったのだと、イーストウッドに問うた。


「私だって、局長の椅子にふんぞり返っているだけじゃないさ。それに、灯台もと暗しや傍目八目(おかめはちもく)という言葉があるように、意外と第三者の視点からほうがわかることもある」


「俺たちが訊いてんのは情報の出所なんだが?」


両腕を組んだブラッドが、メディスンに続いて前に出た。


すると、エヌエーも口は開かなかったかものの、二人に並ぶ。


デスクを囲むように立つ三人を見て、イーストウッドは笑みをそのままに困った顔をしていた。


そして、ようやく答える。


「数日前に、この街へ向かう船を手配していたストリング人がいたんだよ。私の部下が怪しいと感じて捕まえて手に入った情報だ」


「ストリング人ということは……やはりドクター・ジェーシーか……」


ドクター・ジェーシーとは――。


連合国の世界会議にサイバーテロを仕掛けて来たとされる人物。


本名はジェーシー・ローランド。


元々はストリング王国――ストリング帝国の一科学者で、前の戦争で戦死したローズ・テネシーグレッチ将軍の部下だった女性である。


「そうだ。この街で最近ばら蒔かれている電子ドラッグはドクター・ジェーシーが作ったものと思われる」


「すべてはお前の予想通りだな」


ブラッドが苦々しい顔で言った。


イーストウッドは、この街――アンプリファイア・シティにドクター・ジェーシーが潜伏している予想していた。


そこへ、この街のインフラを管理する企業――ボス·エンタープライズの女性CEOであるコラス·シンセティックから要請を受け、メディスンら才能の追跡官(アビリティトレーサー)を派遣。


さらに、この犯罪都市に船を手配していたというストリング人から情報を得て、ドクター・ジェーシーがこの街にいることが確信に変わったと言う。


「では、その廃工場にドクター・ジェーシーがいるの?」


「そこまで報告にはないが。捕らえた男の話では、すでに数人のストリング人が街に入っているらしい」


エヌエーの質問に答えたイーストウッドは、さらに三人へ説明をする。


「だが、その廃工場を根城しているという話だ。最悪奴を捕まえられなくても、その尻尾くらいは掴める。だからこその強行だ」


イーストウッドの話を聞き終えた三人は、納得せざる得ないこと理解した。


ドクター・ジェーシーたちは、時間が経てば経つほどこちらの動きに気がついてしまう。


突入するなら、早ければ早いほど良い。


敵もまさかこちらが来るとは思っていないはずだ。


「話は理解した。局長がいようが、現場での指揮は私たちに任せてもらっていいな?」


「当然だ。私はそのためにお前たちを班長に推薦したんだから。私は個別の部隊を持って参加する。互いに連絡と最低限の連携さえ取れれば、あとは好きにしろ」


イーストウッドの返事を聞き、三人がデスクから離れる。


そして、彼らがそのまま部屋を出て行こうとしたそのとき――。


「イーストウッドさん……。次はアタシの話を聞いてもらっていいですか?」


今までずっと黙っていたリズムが、イーストウッドの座るデスクへと近づいた。

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