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406

その子供はふぅーとため息をつくと、うんざりした表情になっていた。


パロマはそういう対応をされるとわかっていたのだろう。


大して気にも留めずに、子供を急かす。


「どうしたんだ? 何か都合が悪いというのか?」


「あなたが個人的にここへ来たことで、その目的がわかったんです。でも……それは意味がない……」


「意味は君が決めることではない。それはあいつと会う、私が決めることだ」


断固として聖女の使いと会おうとするパロマに、子供はさらに辟易(へきえき)する。


もう子供にはわかっているのだ。


パロマが聖女の使いの正体を知って、ここへやって来たことを。


詰め寄って来るパロマに、子供が言う。


「今さら何の用があるんですか? 聖女の使いは、もうあなたとは関係がないでしょう?」


「関係がないだと? 少なくと君よりは関係があると思うが。……そうだ、ついでに君と聖女の使いの関係を聞かせてもらえないか?」


「それはあなたに話すようなことじゃありませんよ。パロマ·デューバーグさん」


丁寧な口調だが、高圧的な声色で言う子供にパロマは思わず顔をしかめる。


だが、今はこの子供が何者なのか、聖女の使いとどういう関係なのかよりも大事なことがある。


それとなく訊いて答えないのならば、これ以上は時間の無駄だ。


――と、思い、パロマは再び口を開いた。


「そうだな、その通りだ。だが、こうやってわざわざ会いに来たんだ。せめて、聖女の使いの顔だけは見ておきたいな」


「……わかりました。実際に会ってみれば意味がないと理解してもらえるでしょう。では、こちらに」


子供はそう言うと、大広間を出て、洞窟のさらに奥へと進んでいった。


パロマは、思っていたよりもすんなり会わせてくれることに拍子抜けしながらも、周囲への警戒を怠らない。


武器こそ持っていないが、彼女は未だに並みの人間が相手なら数秒で叩きのめせる自信があった。


昔からやっていた日々の鍛練は今でも続けている。


それはもう習慣のようなもので、強くなりたいといった以前に行っていた理由とは違っている。


欠かさずやっていたことを止めるということが、どうも気持ちが悪いといった理由からだった。


パロマには自信があった。


たとえマシーナリーウイルスの力を失った今でも――。


いや、以前よりも自分は強くなっていると。


(罠かもしれない……。だがどうしてだか、不思議と落ち着いているな)


パロマがそう思いながら進む洞窟の通路からは、大広間まであった無数の配線はなくなっていた。


次第に照明も薄暗いものとなり、奥というよりは地下――。


下り坂のような通路を歩いていく。


次第に通路も複雑になり、まるで迷路のようになっていく。


「ここです。ここに聖女の使いはいます」


子供が足を止め、後ろを歩いていたパロマにそう言った。


その前には扉があった。


その古びた外観を見るに、子供や聖女の使いがここへ来る前からあるものだろうと思われる。


「ボクです。入りますよ」


子供はコンコンと扉をノックすると、中へ入っていった。


パロマも続いて入り、ついに聖女の使いと対面する。


「なッ!? こ、これはッ!? おい、その姿は……一体何があったんだッ!?」

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