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惨状だった。
カルトの父親だと思われる中年男性は、壁に磔にされていた。
耳と手首、掌に太い杭が打たれていた。
磔にされた状態で下半身は切り取られたのか、開いた腹部からは腸が零れ、残された上半身からまるで鎖のように伸びている。
カルトの母親らしき女性は床に倒れていた。
それをカルトの兄だろうか弟だろうか若い男が覆い被さっている。
仰向けに倒れている女性には手足がなかった。
切り取られた切断面からの出血で、床に赤い筋を作っている。
覆い被さっている若い男のほうも両腕が切り取られており、泣き顔で必死に腰を打ち付けていた。
強姦だ。
息子に母親を犯させている。
それを死にかけている父親に見せつけている。
「ほら、もっと気合入れてやんだよ。テメェの姉ちゃんがバラ撒いたみてぇに、子宮に精子を吐き出せ」
声が聞こえた先には、黒髪の幼女と赤い燕尾服を着た集団がいた。
この区域――ヴォックス·エリアを仕切るヴィラージュと赤い開拓者だ。
地下室にあったテーブルにあぐらの姿勢で声をかけているヴィラージュは、パロマたちの姿に気が付く。
「なんだよテメェら? 勝手に入って来やがって、不法侵入だぞ」
「お、お前……なんで……?」
帯刀した軍刀――夕華丸に手を伸ばしながらも、パロマは明らかに動揺していた。
ムドは震えるパロマの前に立ち、ヴィラージュや赤い開拓者から彼女を守ろうとする。
「この家の椅子はあーしにはちょっと合わなくてな。だから机に座ってんだよ」
座っているテーブルから燕尾服の幼女がそう言った。
「違う。なんでこの家の者たちや飼い犬にこんなことをしている!」
パロマがそう叫ぶと、息子が母親から離れる。
精液の尾をひいて、萎えた男根が露わになる。
すると、赤い開拓者の一人が若い男の頭に、針のようなものを突き刺した。
若い男の男根がそそり立ち、ヴィラージュが再び母親を犯すように告げる。
状況から見て、何度も息子に母親を強姦させているようだった。
性行為の独特な臭いが地下室に充満している。
パロマは残酷な行為を止めさせようと、夕華丸を抜いて構えようとしたが、急にその場に崩れて嘔吐。
すでに飼い犬のときから堪えていた吐き気が限界にきて、血で染まった赤い床へ胃液を吐き出していた。
「大丈夫かッ!?」
ムドは赤い開拓者たちに警戒しながら、彼女を支える。
そんなパロマの姿を見て、ヴィラージュが呆れて口を開く。
「答えてやるよ、ゲロ吐き女。こいつらには家族のやった罪を償わせている。バラ撒いた電子ドラッグを存分に味わってもらってな」
訊ねた答えすらもまともに聞き取れないパロマは、ただ吐くことしかできなかった。




