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パロマに王の間から連れ出されたエヌエーは、彼女に案内されて城内にある客間へと来ていた。


そこには、顔を合わせたときにパロマが言っていた紅茶と茶菓子が用意されている。


今は無き文化――。


ヨーロッパの様式を彷彿させるストリング王国は、二人が軍警察としていて駐在していたアンプリファイア・シティでの生活を思い出させる。


「う~ん、やっぱりパロマが入れてくれる紅茶は最高だね!」


久しぶりに口にするパロマの入れた紅茶を飲み、満面の笑みを浮かべるエヌエー。


一方、褒められたパロマのほうは、少し照れた様子で返事をする。


「料理の腕は相変わらず酷いですが。紅茶だけは昔から(たし)なんでましたから」


「うんうん、もっと自信持っていいよ~。お店出せるレベルだよ、この紅茶」


エヌエーは茶菓子を頬張りながら至福の時を過ごす。


先ほどの王の間での毅然とした物言いも、その後の慌てぶりとも違う。


二十代半ばの女性らしい、実に緩んだ笑みだ。


そんな彼女にパロマが訊ねる。


「それで私に会いに来た理由ですけど……」


パロマの訊ねられたエヌエーは、茶菓子に伸ばしていた手を引っ込め、紅茶の入ったカップをテーブルへと置いた。


そして、まるで別人のような表情――。


威圧感すら漂わせる顔で、その口を開く。


「紅茶飲んでまったりしていてなんだけど、率直に言うね」


「は、はぁ……」


一体何があったのだろう。


パロマは戸惑いなからも耳を傾けた。


そして、エヌエーがわざわざジェットを飛ばしてまで会いに来た理由を知る。


「リズムがッ! リズムが送られてきたんですかッ!?」


バンッとテーブルを叩いたパロマに、エヌエーはコクッと頷くと、静かに話を続けた。


突然メディスンから連絡が入り、彼のいた連合国の基地にメディカルマシーンに入っていたリズムが届けられた。


差出人は不明。


だが、メディスンにはそれが誰なのか検討がついていると言う。


「それなら私もわかります。こんなことするのは、あいつしかいない……」


「パロマならわかると思った。よし。なら試しに、同時にその差出人の名前言ってみようか。意外と間違えてるかもしれないしね」


「いいでしょう。ですが私の想像する人物が、絶対に間違っているはずがない」


エヌエーはパロマが間違えることはないとわかっていながら、ちょっと意地悪なことを言った。


それを受けて立つパロマの顔は、以前の才能の追跡官(アビリティトレーサー)だったときのものへと代わっていた。


自信に満ちたできぬことなど何もないといった表情だ。


せーのとエヌエーが言い、二人が同時に差出人の名を口にする。


ディス·ローランドと。

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