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――アンプリファイア・シティが世界の地図から消されてから数ヶ月後。
連合国軍の基地にいたメディスンのもとに、あるものが送られてきた。
家具か何かなのか。
それとも何かの機器なのか。
それは、成人男性の身長を軽く超える高さで、横幅もある大きな包みだった。
包装を解いて開けてみると、その包みの中には医療用のカプセル――メディカルマシーンらしきものが現れる。
メディスンはそのメディカルマシーンのスイッチを押して開けてみると、中からは彼が探していた少女――リズム·ライクブラックの姿があった。
「リズムッ!? 一体誰がこんな手の込んだ真似を……ッ!」
驚愕したメディスンだったが、今はそれよりもリズムの状態を調べるのが先だ。
メディスンはすぐに連合国軍の医療班に連絡。
意識のないリズムを、基地内にある治療施設へと運んだ。
リズムの容態は何も問題はなかった。
怪我も病気もなく、むしろメディスンが知っているアンプリファイア・シティで才能の追跡官として過ごしていた彼女よりも――。
二年前のまだ幼さを残していた頃の彼女よりも、ずっと肌も瑞々しく、髪も艶やかだった。
その姿は、まるで穢れを知らぬ聖女そのもの。
世俗からの影響など何も受けない、高潔さまで感じさせるほど整えられていた姿だった。
だが、リズムに意識はない。
脈拍も心拍数も正常なのだが、眠ったままだ。
医療班からそのことを伝えられたメディスンは、個室に運ばれていくリズムを見て思う。
「こんなことをするのは……」
そう――。
メディスンは気が付いていた。
誰が行方不明だったリズム・ライクブラックを自分に送って来たのかを。
「上に報告する前に、知らせておいたほうがいいな……」
メディスンは連合国の上層部へ知らせる前に、同僚であるエヌエー・オーガニックへ連絡をすることに決める。
自室へと戻り、デスクにある通信器機ではなく、彼が個人で使用しているデバイスを操作する。
「エヌエーか?」
《どうしたの? わざわざプライベート用のデバイスで連絡してくるなんて》
「実はな。リズムが私のところに送られてきた」
《え……? えぇぇぇぇぇッ!?》
デバイスからエヌエーの驚愕している声が響いて来る。
メディスンはそのあまりの音量に耳を押さえ、その神経質そう顔を歪めた。
エヌエーは、驚きながらも声を張り上げ続ける。
《ちょっとそれ! どういうことなのッ!? リズムが送られて来たって……ちゃんと生きてるんでしょッ!?》
「とりあえず落ち着け」
《落ち着いてなんていられないよッ!? ここ数ヵ月ずっと探してたんだよッ! リズムは無事なのッ!?》
「……気持ちはわかるが。そんなに怒鳴られると耳鳴りが止まらん」
そして、メディスンはエヌエーに事の顛末を話した。




