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チルドはそう叫ぶと、ディスへと殴り掛かった。


金属のグローブを付けた拳が、ディスのツギハギだらけの頬にめり込む。


「ぐはッ!」


「この程度でイタがってんじゃねぇぞ、ツギハギッ!」


チルドの拳がディスの顔面を打ち抜くと、そこからさらに攻撃の手が激しくなっていく。


右、左とディスは防御も忘れてサンドバッグ状態。


そのツギハギだらけの顔が腫れ上がっていき、殴られるたびに血を吐き続けていた。


「どうしたオラッ!? こっちは正々堂々やってやってんのによッ!」


ディスは殴られながら思う。


何が正々堂々だ。


こっちは最愛の人を連れ去られ、脚をサーベルで突き刺されたばかりなんだぞと。


ここまで来るのに、どれだけの血を流して心をすり減らせたと思っているんだと。


口にすることはできずにいたが、チルドへの怒りが高まっていく。


だが刺された右脚は、そんな怒りでは回復などするはずもなく、ディスはその場に片膝を着いた。


「……殺したいならさっさとやれよ」


「あん? 人殺しが偉そうに指図してんじゃねぇッ!」


声を張り上げたチルドは、屈しているディスの顔面を蹴り上げた。


そのまま後方へと吹き飛んでいく彼を見て、チルドはさらに声を荒げる。


「そうやって地面に這いつくばってんがお似合いだよ! この人殺しッ!」


罵倒され、呻きながらも顔を上げたディスは、両膝をついたまま前屈みの姿勢を取る。


そして、そのオレンジ色の髪を地面に擦り付けて口を開く。


「俺が悪かった……。だから、俺のことは殺してもリズムは……彼女だけは助けてやってほしい」


「それが人にものを頼む態度かッ!? あんッ!? それとも口の聞き方を知らねぇのかよッ!」


「ぐッ!?」


チルドは土下座をして謝罪するディスの頭を踏みつけた。


どうやら彼はディスの頼み方というよりは、その口調が気に入らないようだ。


それに気が付いたのか。


ディスは(へりくだ)った態度で話し始める。


「俺が悪かったです。殺されて当然です。何を言っても何をしても、弁解の余地はないです」


「そうだよ! テメェは人殺しだッ! しかも聖女のためだなんだって頼まれてもいねぇのに人を殺しまくった最悪のクズ野郎だッ!」


ディスの言葉が丁寧なものへと変わるのとは反対に、チルドの罵倒はその厳しさを増していく。


残忍で狡猾。


本当は人を殺すのが好きで好きでしょうがないことを隠すために、リズム·ライクブラックを守るのだと(のたま)っているだけではないのかと。


「血を見て()ってちまうんだろ? テメェはよぉ」


「違うッ! 俺は本当に彼女を守りたいってだけで――ッ!?」


「あんッ!? んなこたぁ聞きたくねぇんだよッ!」


チルドはディスが踏まれている頭を動かしたため、再び足の力を込めた。

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