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リーダーの男は、声色を威圧的なものへと変えて言葉を続けた。
血塗れの聖女――。
リズム·ライクブラックには、ストリング帝国と繋がっていたという容疑がかけられている。
そんな彼女の仲間である他の才能の追跡官たちは、すでに捕らえられたのだが。
肝心の主犯が見つかっていない。
この村がアンプリファイア・シティからの避難民で作られたものならば、もしやここにいる可能性は高いのではないかと。
「それと、血塗れの聖女には連れがいたようだ。デバイスで画像でも出せれば話も早いのだが、どうやらこの村周辺に電波は届いていないようだ」
リーダーの男はリズムの顔は知っていても、彼女の連れ――ディスの容姿については知らなかったようだ。
まさか彼らも、帝国の残党を捜索していたところに村があるとは思わなかったのだろう。
それと主犯であるリズムの顔は知っている。
連れのほうの情報もデバイスでいつでも確認できる。
そう思っていたため、ディスの一度見たら忘れない風貌のことは調べていなかったようだ。
幸運にも捕まらずに済んだディスだったが。
リーダーの男に視線を向けた彼の顔は、酷く青ざめていた。
(……こいつら、リズムを捜しているのかッ!?)
内心で吠えるディスは、すぐに思考をまとめようとする。
落ち着け、大丈夫だ。
村の住民たちにはリズムの顔は見られていない。
彼女を人目に出したときは、必ずその目を覆う布を巻いてある。
両目を失ったことで逆に命拾いした。
リズムのことを話す人間は、この村には誰もいない。
(いや待て……。ここで俺が捕まればッ!?)
だが、自分のことを才能の追跡官だったと知っている者はいる。
それでも数えるほどだが、一人でも口にしてしまえば自分は捕まってしまう。
自分が捕まれば確実に住居も調べられ、リズムのことが見つかってしまう。
どうする?
どうすればいい?
右手で顔を覆い、俯くディス。
そんな彼を無視し、リーダーの男は住民たちに答えるよう促す。
「誰か知っている者はいないのか? 血塗れの聖女と、その仲間の才能の追跡官のことを?」
訊ねられた住民たちは誰も答えない。
その様子を見たリーダーの男は、ふぅと息を吐くと再び口を開く。
「知らぬか……。まあ、そう都合よくいるはずもないか。だがもし隠しているのなら、この村も同罪になるぞ」




