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――草木が覆う草原に小さな村ができていた。


そこには川が流れ、その水を頼りに人々が集まって作られたものだ。


だが、食べるものも生活用品もまだまだ人が暮らすには足りないものが多い。


それでもここへ来た者たちは川の水を飲み、森の果実を取り、動物を狩り、畑を耕してなんとか生活している。


幸いだったのは、この土地は作物が育ちやすく、知識のある者が集まった人たちに野菜などの育て方を教えたため、誰も飢えずにすんでいた。


電気もない――文明など感じられない生活ではあったが。


集まった人々は、共に力を合わせて生きている。


「ただいま。今帰ったよ、リズム」


その村には、まだ十代前半の若者二人が暮らしていた。


一人はディス·ローランド――。


オレンジ色の髪をしたツギハギだらけの顔の少年だ。


そしてもう一人は、かつて“血塗れの聖女”と呼ばれた少女――。


リズム·ライクブラックだ。


二人は廃材を集めて造った掘っ立て小屋に住んでいた。


中には、当然村の環境もあって電気も水道もガスもない。


ディスは同居しているリズムに声をかけると、手に入れた食べ物と汲んできた水を炊事場へと置き、調理を始める。


「いやいや、今日はついてたよ」


その食べ物は川魚だ。


とても慣れた手つきとはいえないが。


ディスはナイフを使って、その魚をさばいていく。


二人の住む掘っ立て小屋にある家具は、布団とテーブルくらいだ。


その布団には、先ほどからディスが声をかけているリズムが横になっている。


「こんなに大漁に取れて、あともう育ったって、隣のおじさんとおばさんが野菜をくれたんだ」


布団にいるリズムに向かってディスは、(かご)に入った野菜を向ける。


その籠には、ミニトマトやほうれん草、サニーレタスなどが見えた。


「ドレッシングとかあればいいんだけどね。まあ、贅沢は言ってられないかぁ。でも、そのうち外へ出て手に入れて来るよ」


魚をさばいたディスは、次にその野菜を洗い始める。


川で汲んできた水を使って、土や泥を落としていく。


「他にも必要なものがいっぱいあるよね。まずは……そうだなぁ……。う~ん、ありすぎて逆に出て来ないや」


ハハハとそのツギハギだらけの顔を緩めて笑うディス。


声をかけられているリズムからは返事はない。


しかし、そんなことを気にせずにディスは喋り続ける。


「そうだ、お風呂とか? それとフカフカのベットもほしいな。もちろん俺用じゃないよ。リズムが寝る用のヤツね」


布団で横になっているリズム。


彼女の目は開いている。


だがその両目は、まるで繰り抜かれてしまったかのように、何もなかった。


瞳のないその両目の穴は、手を伸ばせば吸い込まれそうな闇が広がっていた。

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