034
――ディスたちが三階へと向かっているとき。
マローダーに追いついたパロマは、彼に説明を求めていた。
呼び止めても歩き続けるマローダーと並んで、パロマは声を張り上げる。
「せっかく捕まえたのに、どうして返したんですかッ!?」
マローダーは彼女へ視線を向けることもなく、淡々と説明を始めた。
尋問の結果――。
すでに、パロマたちか捕らえた赤い開拓者たちから聞けることはなくなった。
そのため、マローダーの上司に当たる第二班の班長であるエヌエーから頼まれ、ヴィラージュが暴れる前に彼女の部下たちを返すように指示があったようだ。
マローダーの話を聞いたパロマは、さらに顔を強張らせる。
その理由は、彼女が捕まえた赤い開拓者らは、第三班、ブラッドが尋問することになっていたからだ。
それなのに、どうしてエヌエーが尋問をしているのか。
これでは自分の手柄が第二班に取られる形になるではないかと、彼女は憤慨したのだ。
(あのバカ班長! だから未だに現場勤めなんだよッ!)
パロマは内心でブラッドに悪態をつく。
エヌエーとブラッドがいくら夫婦だからといっても、仕事にプライベートを挟んでいいはずがない。
きっと上の三人は、これまでもそういう仕事(手柄など気にしない)をしてきたのだろう。
だから経歴が凄くとも、こんな割りの合わない仕事をやらされているのだ。
足を止めてその場で呻くパロマに、マローダーが言う。
「俺は指示に従っただけだ。文句があるなら班長に言ってくれ」
そして、彼は、廊下に一人パロマを残して行ってしまう。
これ以上何を言っても無駄だと判断した彼女は、去っていくマローダーを追いかけずに、廊下の壁をガンッと叩いていた。
そこへ、パロマを追いかけていたムドとシヴィルが現れる。
「まあまあ、そんな荒れるなよ」
「叩いたらパロマの手が傷つく。そして壁も傷つく。良いことない」
ムドとシヴィルはそうパロマに声をかけたが。
彼女は強張らせていた顔をスッと冷たいものへと変え、二人を無視して歩き始めた。
「う~ん、うちの姫はなんでああなのかねぇ……」
「しょうがない……。あの年頃の女の子は難しい」
「それをお前が言うか……」
まるで悟ったかのよう言うシヴィルに、ムドは呆れていた。
そして、冷たくされても彼女の後について行った。
前を歩くパロマは思う。
同じストリング王国出身でも、マローダー·ギブソンは完全に連合国の犬に成り下がった。
例えるなら主人からの命令に忠実に動く猟犬。
その牙は恐ろしいが、信念を捨てた――人間を辞めた者だ。
自分は違う。
いつか伸し上がり、故郷で苦しむ民たちのためになんとしても名を上げなければならないのだ。
そのためには強くならねば。
それこそヴィラージュもマローダー·ギブソンも超えるような圧倒的な強さが。
「やはりマシーナリーウイルスの濃度を上げる必要があるな……」
そう呟いたパロマは、第三班の部屋へと歩を進めた。




