表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
336/415

332

ジェーシーは、ブルドラの言葉を聞くと、その悶えているような震えを止めた。


さらに艶っぽかった表情を変え、鋭い目でブルドラのことを見る。


機械であるジェーシーの両目が、まるで獲物狙う爬虫類(はちゅうるい)のような、薄気味の悪いものとなっていた。


だがブルドラは、そんなジェーシーを前にしても、怯まずに口を開く。


「あなたは肉体を捨てて、自分の脳をこの街に繋げたんだ。ドクター・ジェーシー・ローランドはそのときに死に、アンプリファイア・シティは意思を持つ都市となった」


電気回路で発達した犯罪都市――アンプリファイア・シティ。


その街並みは、石畳の地面にゴシック調の建築物が並ぶ。


ふと顔を上げれば、街に張り巡らされた配線が何千、何万も見えることができる。


ブルドラはその配線が、街のインフラを供給するためのものだと聞いていた。


電子ネットワークの回線や電気を送るものだと信じていた。


たしかに無数の配線は、供給目的のものでもあった。


だが、あれはこの街とジェーシーの脳を繋ぐためのものだったのだ。


ならば、ジェーシーの本体というべき彼女の脳を破壊すればいいと思われるが。


ジェーシーは、ブレインズの能力である真の通路(トゥルーバイパス)――。


特殊な電波を脳から飛ばし、電子ネットワークへ意識を送り込む力を応用し、すでにサイバースペースに住む存在へとなっているのだ。


そのため、たとえジェーシーの脳を破壊したところで、彼女はネットワークの世界で生き続ける。


「わざわざ有線のネットワークにしたのは、この街に自分の神経でも表現したかったからか?」


ブルドラが街に張り巡らされた配線の意味を問うた。


ジェーシーはピクリとも動かずに、無機質な爬虫類顔で答える。


「あぁ、あれね。あれは無線にするほどの機材を手に入れられなかったからよ。じゃなきゃ、あんな時代遅れのものなんて使わないわ。連合国から逃げ回っているとね。何かとお金が掛かるから、必要なものをそろえるのも一苦労なの」


「それでイーストウッド局長に話を持ち掛けたんだな」


「えぇ。だけど、彼には裏切られちゃったみたい。あなたたちも見たでしょ? この街を覆っていた白い光を」


「そうか、あの光とさっき聞こえた爆発音は、イーストウッド局長が……くッ!? やはり連合国は信用できないな!」


ブルドラが表情を歪める。


ジェーシーの話を信じるのなら、イーストウッドは手を組んだはずの彼女ごと、この街を消そうとしたのだ。


それでもまだ、ジェーシーや自分たちを消そうとするのは理解できる。


しかし、アンプリファイア・シティごとすべてを無かったことにするなど、まともな感覚ではない。


「そんなの……大量虐殺と同じじゃないか……」


言葉を漏らすブルドラに、ジェーシーは言う。


「でもまあ、そんなことはどうでもいいのよ。運よく街を守ってくれた聖女様がいたしね。誰が裏切ろうが裏切られようが、当初の目的に何の支障はないわ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ