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――その頃一階では。
窓から差し込む光と当然動かなくなったアバロンを前に、ブルドラとラウドが混乱していた。
先ほどまで、まるでプログラムされた機械のように攻撃を続けていたアバロン。
今の彼はピックアップ·ブレードを手に、その場で人形のように立ち尽くしている。
「何が起きたんだッ!? それに、外の光はッ!?」
ブルドラが声を荒げると、窓を突き破って白い毛の塊が彼女の前に飛び込んできた。
電気仕掛けの仔羊ニコだ。
ニコは大声で鳴きながら、持っていたデバイスからリズムのメッセージを出した。
メッセージは酷くはっきりしないもので、状況を理解できるものではなかった。
内容は、リズムがドクター·ジェーシーに操られているディスに襲われていること。
そして、何か邪悪な光がこの街――アンプリファイア・シティを破壊しようとしていることだけ。
ニコがわかっていることだけしか書かれていない。
だが、今は戦っている場合ではないということだけをわかったブルドラとラウドは、アバロンが突然動かなくなったことと関係があると考える。
そんな彼女たちの側では、パロマとマローダーの激しい戦いが続いている。
「アバロン少佐が止まっても、マローダーさんは止まらないのか? それと邪悪な光というのは、この外から見えるもののことか?」
「よくわかんないけど。リズムがなんとかしてくれるじゃない?」
のほほんと言うラウドを無視し、ブルドラはパロマに向かって声を張り上げた。
ニコが教えてくれたリズムからのメッセージを、彼女なりの解釈で短く伝える。
「どうやらもうすぐ街が破壊されてしまうみたいだ! ここは一度リズムと合流して、この街から脱出しよう!」
高周波ブレードの刀と光剣の刃が散らす火花と、ぶつかり合って鳴り響く金属音をかき消すように叫ぶブルドラ。
パロマは、軍刀――夕華丸を思いっきり振り、マローダーを強引に押し返して返事をする。
「先に行ってくれ」
「何を言ってるんだパロマッ!」
「この男を止めておかねばお前たちが脱出できない。いいからここは任せろ!」
再び剣をぶつけるパロマ。
ブルドラは顔を強張らせながら、今度はマローダーへ声をかける。
「くッ!? マローダーさんッ! あなたの意思じゃないのかもしれないけど、このままじゃ街が破壊され――ッ!」
「悪いが……もはや止められん……。これは……俺の意思だ……」
マローダーは静かにそう返すと、目の前のパロマへと攻撃を続けた。
その返事を聞いたブルドラは、マローダーの言葉の意味がわからなかった。
彼は電子ドラッグを打たれたことで、ドクター·ジェーシーの操り人形になっているはず。
しかし、今マローダーはその口で自分の意思で戦っていると言ったのだ。
「なに……? なんなんだよ……? マローダーさんにはまだ自我があるってこと……?」




