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見下ろすラウドを見上げながら、倒れたディスは立ち上がる。


その顔はダウンを取られたというのに、口角を上げたままだった。


「ローランドは関係ない……」


そう言い、鼻から垂れる血を見て、ディスはさらに笑みが深くなる。


そして、再びファイティングポーズを取り、今度は自分から攻める。


左ジャブから入り、左と右のワン、ツー。


スタンダードなボクシングスタイルの戦法だ。


ディスの攻撃を避けながらラウドは思う。


基本はできてる。


ジャブもストレートも出した速度で戻しており、ダメージがあっても両腕も下がっていない。


踏み込みもいい。


ダウンしてからも、足を使って間合いを詰めれるのは普段からよく鍛えている証拠だ。


同じ階級で戦えば――。


スポーツでの試合形式だったら――。


このツギハギだらけのオレンジの少年は、そこそこ強いだろう。


だが、それでもそこそこだ。


「君の実力もわかったし、そろそろ終わらせるか」


避けていたラウドが再び攻撃に転じようとすると、目の前にいるディスから、先ほどはなかった威圧感を覚えた。


ラウドが思わず距離を取ってしまうと、ディスは右足で思いっきりマットに踏みつけようとしたが――。


「ダメだよディスッ! それはダメッ!」


リズムに止められ、ディスは足を下げた。


(なんだ今のは? ひょっとして……今の威圧感は彼の能力?)


ラウドが思考を巡らせていると、ブルドラがロープを飛び越えてリングへと入って来る。


「二人とも、この辺で止めておこうか」


そして、ディスとラウドの間に入って試合を終わらせた。


リズムとニコが慌ててリングへと入る。


鼻血を流す彼に、リズムはハンカチを取り出して垂れた血を拭う。


「だから言ったのに……。どうして受けたのよッ!」


歪んだ笑みを浮かべていたディスは、自分でやるからとリズムから離れようとしたが。


彼女はまるで怪我した子供を思う母親のように、ディスの血を拭い続けていた。


ニコは心配そうにディスを見上げて鳴いている。


ラウドへタオルを渡してブルドラが言う。


「ラウド、やり過ぎ」


「そう? 男同士なんてこんなもんだよ。野生のコミュニケーションってヤツ?」


「君はともかく、彼は野生って感じじゃないだろうが」


「いや、そうでもないんじゃないかな」


ラウドはタオルの礼をブルドラに言うと、ディスの前へと立った。


そして、その手を差し伸べる。


「改めまして、オレはラウド、ラウド・ヴォシファだよ。君は……ディスでいいよね? そこそこやるね。次は能力ありでやりたいな」


「……よろしく。それはまたの機会に」


ディスは歪んだ笑みを消し、その手を取った。


「はいはい! じゃあアタシたちは見学に戻るからね。ブルドラちゃん、後は任せて大丈夫?」


リズムはブルドラに訊ねると、彼女はコクッと頷く。


「あぁ、掃除はやっておくよ。当然ラウドがね」


「なッ!? 酷いよブルドラ!」


「何を言ってるんだか……。もともと君が始めたことだろう? 待っててあげるからさっさと片付けて制服に着替えなさい」


ラウドは「は~い」と力のない返事をしていた。


それから、リズムとニコに心配されてリングから降りるディスの背中を見ながら、ラウドが呟く。


「面白そうだ、あの子……」

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