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そして、ジェーシーはコラスとしてイーストウッドと接触。
彼が連合国軍として設立した軍警察――そのメンバーに特殊能力者たちを集めた才能の追跡官の中に、リズム·ライクブラックがいることを知る。
ジェーシーはリズムの持つ能力――生命エネルギーを気を放つ力の秘密を知りたがっていた。
それは、彼女の持つクローン技術をさらに完璧にするために必要だったものだからだった。
その後、アンプリファイア・シティにメディスン、エヌエー、ブラッドたち才能の追跡官が現れ、事態は手を組んだジェーシーとイーストウッドの目論見通りに進んでいく。
他の区域を仕切っていたヴィラージュ、リトルリグ、タイニーテラーらを消し、街を完全に掌握。
リズムを攫い、彼女から能力の秘密を得た。
イーストウッドの狙いは、ストリング王国の反乱分子を炙り出し、未だに世界には連合国に従わない勢力がいる事実を、上層部にアピールすることで自己の権限を拡大。
反乱分子の討伐という目的で、自分の私兵となる特殊部隊を創設することだった。
イーストウッドは、特殊能力者に対して常に差別意識と警戒感を持っていた連合国に、ストリング帝国の残党を狩るという大義を掲げることによって、連合国内での勢力の拡大は容易となると考えたのだ。
この街で起きた一連の事件は、すべてはジェーシーとイーストウッドの描いた絵図。
自作自演――マッチポンプだ。
ジェーシーはイーストウッドに協力し、連合国の反乱分子であるストリング帝国の残党の脅威を見せつける。
イーストウッドは、その邪魔なストリング帝国の残党を消すと同時に、才能の追跡官に罪を被せて、特殊能力者への管理を徹底しようとしていた。
ジェーシーは、イーストウッドからローズ·テネシーグレッチの複製体を造るための機材と費用を手に入れる。
イーストウッドはジェーシーの指示で動き出した帝国の残党らの脅威を使って、自身の私兵――新たな自分の部隊を創る。
すべては、二人の思い通りの結果となりそうだった。
だがイーストウッドには、まだ気掛かりがあった。
未だ逃亡している才能の追跡官たちの存在だ。
彼がそのことをジェーシーに伝えると、彼女は言う。
《たかが数人の特殊能力者に何ができるっていうのよ。今やこの街は完全にこちらの手にある。怯えることなんてないじゃない》
「だが、油断はできん。なんといってもリズム·ライクブラックは、前の戦争での生き残りだからな」
《それは私もあなたも同じでしょ?》
「だからこそだよ。あの少女は私と同じく、前の戦争で死んでいった者たちから受け継いだ人間だ。その意志を知っているだけに、まだ安心はできん」
ジェーシーは、未だに才能の追跡官――特にリズム·ライクブラックに対し、恐怖にも似た感情を持っていることを不可解に思っていた。
今さらあの小娘に何ができるのだと、彼女は笑い返している。
《リズム·ライクブラックの生命エネルギーは、すでに私の手にある。今のあの子はガス欠の車みたいなものよ。そんなに心配する必要はないわ》
「だといいんだがな」
それからイーストウッドは通信を切り、窓から街を見下ろした。
ようやくここまで来たと、その表情は感慨深い。
「さて、そろそろ私も街を出るとするか。何か起きた後では、手遅れになるからな」
そして、そう呟くとイーストウッドは街から出るための航空機を手配し始めた。




