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キャビたちが店を出て行った後。
リズムたちは、それぞれ着ていた服を着替えることにする。
それは、才能の追跡官の制服のままでは、すぐに見つかってしまうからだ。
幸いにもここは雑貨屋。
キャビにはすでに伝えてあるようで、皆それぞれ選んでいた服へと着替えていた。
ちなみにマインはすでに私服だったので、着替えることなくキャビたちと出ている。
「誰もスカート穿かないんだね」
別室で着替えたラウドが戻ると、三人の格好を見て口にした。
彼は動きやすさを重視したのか、ラフなパーカー姿だ。
一方リズム、パロマ、ブルドラは、先ほどラウドが言ったように三人共パンツスタイルである。
リズムはフライトジャケット。
パロマはロングコート。
ブルドラはショート丈のレザージャケットと、アフターも女性的な服装はしていない。
これから逃亡――または戦闘するのだから当然なのだが。
彼女たちは元々ボーイッシュな格好を好む。
特にパロマは、私服でもユニセックスのものしか着ない。
「そんなにスカートが好きなら、ラウドが穿くといい」
「そうだな。では、今すぐ穿いてもらおう」
「わぁーッ! 勘弁してよ二人ともッ!」
ラウドの言葉を聞いたブルドラとパロマは、店にあったミニスカートを手に取ると、ラウドの身体を押さえつけて無理やりに穿かそうとしている。
嫌がるラウドを見て、ブルドラとパロマは凄まじい形相で笑みを浮かべている。
それは、嗜虐心に目覚めたサイコパスか。
普段は飄々となんでも受け入れるラウドだったが、さすがにこれに耐えられなかったようだ。
「悪かったよ! よくわからないけどとにかくオレが悪かったッ!」
少し離れたところから三人を見ていた電気仕掛けの仔羊――ニコは、人間の雌は恐ろしいと、その身体を覆う豊かなら毛と身を震わせていた。
ラウドが嫌がっても、いやむしろ喜んでスカートを穿かそうとしているパロマとブルドラに、リズムが声をかける。
「はいはい、遊んでないで、そろそろあたしたちも出るよ」
パロマとブルドラは渋々ラウドから離れる。
ホッと安堵しているラウドだったが、パロマとブルドラは彼のことを睨みつけていた。
その目は、「次はないぞ」とでも言っているかのようだった。
ラウドは肝を冷やすと、もう二度と二人にスカートの話をしないことを内心で誓う。
それからリズムたちは、キャビの雑貨屋を出て貧民街を進む。
街の様子を見る限り、ここへはまだイーストウッドの手が回っていないようだった。
「それでリズム。これからのことだが……」
前を歩くリズムにパロマが声をかけた。
二人の後ろにはコラスを両サイドから支えて歩くブルドラとラウドの姿が見える。
パロマは糸の切れた人形のようになったコラスを一瞥すると、言葉を続ける。
「コラスを使って、一体何をするつもりなんだ?」
「ここじゃマズいから、どこか落ち着ける場所についてから話すよ」
リズムはそう言うと、歩く速度を上げ始めた。
パロマは「そうもそうだな」と思い、再びコラスのほうを向く。
そして、クッと歯を食いしばるとリズムと同じように歩を速めた。




