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無数の配線が張り巡らされたアンプリファイア・シティの空に、突然ホログラムの画面が現れた。
その映像には、短いツーブロックの髪型をした屈強な男が映っている。
《アンプリファイア・シティに住むすべての民よ。私は連合国軍中将、そして連合憲兵総局の局長でもあるリプリント・イーストウッドだ》
ようやく陽が出て来た時間に、イーストウッドが映るホログラム画面が街中に浮かび上がった。
それは、街の四つの区域――。
マーシャル·エリア、ヴォックス·エリア、ハイワット·エリア、オレンジ·エリアすべての場所に映し出されている。
挨拶もそこそこに、イーストウッドは早速話を始めた。
アンプリファイア・シティを騒がせていた電子ドラッグの騒ぎは、現ストリング王国から出て来た勢力――ストリング帝国を名乗る者たちの仕業だった。
ボス·エンタープライズ社のCEOであるコラス·シンセティックの要請で、街へと連合国軍に所属する軍警察を派遣。
街の治安を守るために尽力した。
だが、軍警察の班員たち――才能の追跡官と呼ばれる特殊能力者たちは、帝国らテロリスト集団と裏で手を組んでいた。
味方の裏切りによって浮足立った軍警察は対処に遅れ、街のことを何よりも考えていたコラス·シンセティックが、才能の追跡官たちによって殺害された。
現在も才能の追跡官と帝国将校たちは、街に潜伏している。
《我々はテロリストの情報を求めている。こんなことはないと思うが、もしテロリストを匿っている者がいたのなら、その人物は犯人蔵匿罪で、厳しい罰が与えられることを覚悟してほしい》
イーストウッドは物腰こそ柔らかかったが、辛苦な言葉を続けた。
才能の追跡官や帝国将校の情報を持ちながらも、それを軍警察へ報告しない者は犯罪者の仲間だと。
まるで脅迫しているかのように、住民たちへ伝える。
《当然、情報を提供してくれた者には報酬を用意している。住民諸君よ。もうすぐ、もうすぐなのだ。すでにこの街――アンプリファイア・シティの治安は以前と比べ物にならないほど良くなっている。あとはテロリストたちさえ捕らえれば、犯罪都市と呼ばれたこの街に、平和と秩序が訪れるのだ》
「平和と秩序……? 違う……。このままじゃ支配と管理が始まる……」
落ち着いた様子で力強く演説を続けるイーストウッドを見て、リズムが呟いた。
彼女は今、マーシャル·エリアの貧民街にある雑貨屋の少女――キャビの店に仲間たちといた。
街の外だけではなく、イーストウッドはすべてにネットワークをジャックしているのか、室内にある液晶画面にも彼の演説が映し出されている。
呟いた後、話を終えたイーストウッドのホログラムが消え、リズムたちは誰もが苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。
「これでは私たちは、完全に犯罪者になったわけだな……。くそッ!」
パロマが壁をドンッと叩くと、リズムが彼女を宥めるように触れる。
そして、彼女を見つめてから部屋にいる仲間たち一人ひとりを見回した。
「ともかく、今はここから出なきゃね」




