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エレベーターの前には、さらにカマキリ義体の群れが集まってきていた。


パロマが何故ネアがエレベーターに乗ろうとしないのか訊ねようとすると、彼女は背を向けたまま先に口を開く。


「それじゃ意味ないでしょ? 私は問題ないからさっさと行っちゃいな」


「しかし、これはチャンスだぞ! さっきとは状況が変わったんだ!」


パロマは早く乗るように声をかけ続けたが、ネアはため息をつくばかりだ。


「こんな虫どもに私は殺されるはずないでしょ。なんていったって私は、誇り高きローズ親衛隊の一員なんだから」


ネアの背中にあるバイオリンに音符が絡み合う国旗――。


それに薔薇が散りばめられている紋章は、彼女が所属していたローズ親衛隊の証である。


普段は軽薄なネアだが、その言葉から察するに、彼女なりに帝国軍人としてのプライドがあるようだ。


「あらやだ、今のはちょっとアバロンぽかったかしら? まあ、良いわよね。フラグクラッシャーの私がこんなこと言っても、絶対に死んだりなんてしないんだから」


「意味のわからんこと言ってないで早く乗れッ!」


「だからこっちは行けって言ってんのッ! 私があなたたちのために体を張るなんて、後にも先にも今回だけなんだから!」


叫び返されたパロマは呻き、それ以上何も言い返すことができなかった。


そんな彼女に、シヴィルが声をかける。


「行こう。ネアに任せて、シヴィルたちは行こう」


パロマはさらに表情を強張らせると、エレベーターの扉を閉めるスイッチを押した。


「ネア大尉! 感謝はせんぞ……。だが、もし脱出できたら、キャビの家で落ち合おうッ!」


そして、エレベーターの扉は閉まり、パロマたちは下のフロアへと移動していった。


エレベーターの起動を聞き、ネアがクスリと笑みを浮かべる。


「ホント真面目だねぇ、パロマちゃんは。甘いというかなんというか……」


そんな彼女を尻目に、群がるカマキリ義体たちが、合成音声のような叫び声をあげて飛び掛かる。


すでに天井、壁、床を埋め尽くすほどの数の相手だが、それでもネアの余裕が崩れることはない。


「数が多ければ私を()れると思ってんの? って、あら? 今はコーダが言いそうな台詞だった……。ハハハ、いいじゃない……。死んじゃったあいつみたい暴れるのもさッ!」


そして、ネアは群がるカマキリ義体たちの中へと飛び込んだ。


その頭の中には、パロマたちのことを守ってやろうなどという正義感などない。


ネアはただ思いっきり暴れたかったのだ。


コーダの死の悲しみを振り払うために。


生前の彼のように。


「さあ来いよ! カマキリもどきのガラクタちゃんたちぃぃぃッ!」

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