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ディスは能力――スイッチング·ブーストを解いてその場で足を止めた。
アバロンのほうも彼と同じくその場に留まる。
だがディスとは違い、アバロンはピックアップブレードを構えたままだった。
「もしかして、誘導されていたのか。まあいい……」
アバロンはそう呟くと、光剣を構えたままマローダーへ近づいていく。
ディスはそんな彼を止めると、マローダーへ声をかける。
「マローダーさん、会えてよかった。さあ、俺たちと一緒に行きましょう」
手を差し伸べるディスに、マローダーは黙ったまま近づいて来る。
彼は歩きながらも、持っていた柄のスイッチを入れてピックアップブレードの光の刃を出していた。
アバロンはディスを下がらせると、マローダーへと言う。
「帝国を裏切ったのですか、マローダー少尉?」
マローダーは答えない。
「才能の追跡官になって連合国軍に潜入していたあなたが……。ストリング王国、いや帝国の名門ギブソン家の長子であるあなたが……我々を裏切ったのですか?」
それでもアバロンは訊ね続けたが、マローダーはまさに問答無用といった様子で光の刃を二人に向けていた。
「答えろマローダーッ!」
ついに声を荒げたアバロン。
マローダーは歩を止めると、ようやくその口を開いた。
「俺は口では語らん。すべて剣で語る。お前ならよく知っているはずだ」
「我々と共に戦ったあなたが、どうして連合国軍についたッ!? イーストウッドにそそのかされたのかッ!?」
アバロンもまたマローダーの言葉を無視して叫び続けていた。
だが、マローダーはそれでも答えることなく、ブレードを構えて斬り掛かってくる。
アバロンはこれをブレードで防ぎ、二人の光の刃が重なった。
激しく散る光剣の火花。
その傍では、ディスは状況を整理していた。
元ストリング帝国――現在はストリング王国の代表、そしてパロマと共に連合国軍に参加したマローダーは、新設した組織――軍警察の才能の追跡官に選ばれた。
だがアバロンの言葉から察するに、どうやらマローダーはスパイだったようだ。
しかし、マローダーはアバロンたちすら裏切り、今は連合国軍と帝国軍を指揮するイーストウッド側についているようだ。
「帝国の誇りを忘れたのか、マローダーッ!」
「忘れてなどいない」
激高するアバロンとマローダーの一騎打ちが始まった。
互いに機械化――装甲した身体で、激しくブレードを打ち合っている。
アバロンは思う。
たしかにマローダーの剣はストリング流の剣技だ。
忘れてなどいないといった彼の言葉は嘘ではない。
マローダーは未だにストリング人として、その剣に誇りを持っている。
剣で語るとはよく言ったもので、打ち合う剣筋からそれがわかる。
ならば何故――。
しかし、それがさらにアバロンの感情を揺さぶった。
「忘れていないならどうして……。私に……帝国に……刃を向けるッ!!」




