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ボス・エンタープライズ社の最上階は十階。


そのフロアにあるCEOルームには、コラス·シンセティックがいるはず。


だが、もしかしたらすでに社内を出てしまっている可能性もあった。


社員が誰もいないのも、パロマたちがここを狙って来ることを考えていたからかもしれない。


そんなことを考えていたパロマは、考え過ぎる自分の性格にほとほと嫌気がさしていた。


(くッ、駄目だな私は……。せっかくシヴィルの言葉に勇気をもらったのに……)


内心で呟くパロマ。


全員かエレベーターの低重力を感じている中、ラウドが口を開く。


「いや~それにしてもさ。これから女社長さんを拉致ろうってんだから、ホントの犯罪者になっちゃうね、オレら」


「正義の警察から一気に悪者……。まさかの闇落ち展開」


カラカラと笑いながら言ったラウドに、シヴィルが補足するかのように言葉を重ねた。


ネアは二人の発言を聞いて、「はぁ?」とでも言いたそうに首を大きく傾げていた。


「なに言ってんのよ、あなたたち。まさか、自分たちが本当に正義の味方だったとか思ってるわけ?」


これまでアンプリファイア・シティで、才能の追跡官(アビリティトレーサー)たちがしてきたことを否定するかのような言葉。


そんなネアの発言に、エレベーター内の空気が悪くなるかと思われたが――。


「思っているわけないでしょ?」


ラウドは変わらずにヘラヘラと笑っていた。


それはシヴィルも同じだった。


けしてラウドのように笑っているわけではないが、どこか自嘲の混じったふくざつそうな顔をしている。


ラウドに続いて、シヴィルが口を開く。


「この街に正義の味方はいない……。いや、いた。一人だけいた」


寂しそうに宣言したシヴィルだったが、すぐに誰かのことを思い出したようで、俯いていた顔を上げる。


パロマには、シヴィルが誰のことをいうかを理解していた。


そう――。


少しでもその人物と過ごしてみれば、誰でもそう思う、とパロマは笑みを浮かべる。


「リズム姉だ」


シヴィルの出した名に、さすがのネアも否定したりはしなかった。


敵である彼女も知っているのだ。


かつて血塗れの聖女と呼ばれた少女――リズム・ライクブラックがこれまでしてきたことを。


「……そうね。あの子なら正義の味方っていっても良いかもね」


ネアは素直じゃない言い方をした。


だかその態度こそが、彼女がリズムを認めているということに他ならない。


「そろそろ着くぞ。皆、準備をしておけ」


パロマが呟くように皆へ言った。


各自エレベーターの扉の前に立ち、身構える。


そして、エレベーターは最上階である十階へと到着。


扉が開き、パロマはコラスのいると思われるフロアへと足を踏み入れた。

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