表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/415

026

「そ、それは第三班のリズム・ライクブラックのことですか?」


少し間が空き、エヌエーが静かに訊ねると、ディスはコクッと力強く頷く。


そのツギハギだらけの顔には合わない真っ直ぐな瞳を見て、エヌエーは思わず微笑んでしまっていた。


「はい、俺はリズムと会うために才能の追跡官(アビリティトレーサー)に志願しました」


間違いなくそうだと放たれたディスの言葉に、会議室がどよめく。


そして、彼の言葉に誰よりも動揺していたのは、もちろんリズムだ。


彼女はどよめく会議室の空気の中、椅子に寄り掛かって両目を見開いている。


「命の価値が安いこの街へ、自ら来た理由はそれか。彼は余程リズムが好きなんだね」


「あわわ……あわわわ……」


激しく狼狽え、言葉を失うリズム。


彼女は、ブルドラに声をかけられても身を震わせているだけだった。


それとは逆に、ニコはリズムの膝の上で嬉しそうに鳴いている。


前のほうの席では、同じく第三班のメンバーも驚いていた。


「なんかスゲー新人がうちに来たなぁ……。見た目のわりには普通のヤツだと思ってたんだけど……」


「シヴィルは気に入った。あの子のリズム姉への愛……好き……」


ムドとシヴィルに挟まれていたパロマは、そんな二人の言葉を聞きながらフンッと鼻を鳴らす。


(何が彼女に会いにだ。くだらん、まったくもってくだらん)


パロマは内心で苛立っていた。


彼女はあの狂気の善人であるリズムに、信者がいたことには驚きはなかったが。


それをわざわざ公言したディスの態度に怒りを覚えたのだ。


才能の追跡官(アビリティトレーサー)の仕事は、遊びでも恋慕を行動して見せるためのものでもない。


あのツギハギオレンジ頭は私情を挟みすぎている。


それがどうにもパロマを苛立たせていた。


(まあ、遅かれ早かれあれは死ぬな。この街はそんな甘くはない)


「なあ、パロマ。聞いてんのかよ?」


苛立ちを抑えていたパロマにムドが声をかけると、彼女は静かにするようにと返事をした。


「また注意されるのはごめんだからな」


「わかったけどよぉ。パロマがどう思ったかを知りてぇんだよ」


声の音量下げ、ムドが訊ねるとシヴィルも続く。


「シヴィルも聞きたい。パロマはあの子のこと好き? 嫌い?」


二人に訊ねられたパロマは、正直どうでも良いと考えていた。


どうせあの新人――ディス・ローランドはリズムの信者だ。


もし自分とリズムの意見が分かれたときに、たとえどんな理由があろうと狂気の善人――リズム側につくだろう。


こちらに取り込めないのなら、駒として役に立たないと、パロマは思っていたが――。


「どちらでもない。私はただ自分の仕事をするだけだ」


「なんだよそれ? ここは多少なりともボケをかますとこだろ?」


「パロマ、つまらない答え……。それじゃ楽しくない。もっと面白いこと言って」


「お前たちは私を何だと思っているんだッ!?」


ムドとシヴィルにそう言われ、パロマは声を張り上げた。


自分はお前たちを楽しませるために、才能の追跡官(アビリティトレーサー)になってわけではないのだと。


どよめいていた会議室に、響き渡るほどの大声で言い返した。


「パロマ·デューバーグ。二回目だぞ」


「す、すみません……」


そして、当然彼女はまたメディスンに静かにするように注意された。


申し訳なさそうに俯く彼女を見て、ムドとシヴィルはクスクスと笑う。


小馬鹿にされたと思ったパロマは、その身を震わせて二人を睨み付けるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ