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――その頃オレンジ·エリアの戦場では、ストリング帝国の本陣でディスとコーダの一騎打ちが始まっていた。


コーダの下段蹴りからの裏拳打ち。


鞭のようにしなる蹴りから、腰の回転を効かせた手の甲を打つコンビネーションが、ディスに襲い掛かる。


ディスはこれは自身の能力――。


スイッチング·ブーストで(ひず)ませた脳の演算によって先読みしていたが――。


「速いッ!?」


下段蹴りはなんとか防御できたものの、裏拳をそのツギハギだらけの顔面にモロに喰らう。


だが、これだけでは終わらない。


コーダはボクサースタイルのファイティングポーズで身を屈めながら距離を詰め、ディスに向かってジャブの連打。


右、左と、まるでロックミュージックのような激しいリズムを刻むように、腹部へと叩き込まれる。


「このぉぉぉッ!」


しかし、いくらコーダがマシーナリーウイルスによる機械化――装甲(アーマード)していても、スイッチング·ブーストによって身体能力を向上させたディスをジャブで倒しきることはできなかった。


ディスはジャブの連打を喰らいながらも膝蹴りを放つ。


だが、前屈みとなっていたコーダはこれを両手で抱えるように掴んで、今度はディスの鼻を目掛けてヘッドバット。


グニャリと鼻が変形し、ディスは鼻血を流しながら後退させられる。


「クソ、まさかコーダさんってこんなに強かったのか……」


ダラダラと流れる自分の血を見て、ディスの股間が盛り上がる。


それを見たコーダは、悲しそう表情になっていた。


「話は聞いてるぜ。それがドクター・ジェーシーに付けられた性癖か」


ディスはブレインズに改造されたとき――。


目の前で母親を犯されながら、ジェーシーに開頭されて脳を弄られた。


そのとき、彼女の遊び半分で、血を見ると性的興奮を覚えるようにされている。


「難儀なもんを付けられちまったな」


「別に……こんなのどうでもいい」


「あん?」


ディスは鼻血を拭うと、脳からの命令に逆らうようにコーダを見据えた。


「こんなふうになっても、彼女……リズムは守れるッ!」


「そうかよ。そいつはいらぬ同情をしちまったなッ!」


コーダが飛び掛かろうとした瞬間に、ディスは二度目の踏み込む――スイッチング・ブーストを発動。


歪んだ脳がさらなる刺激を浴び、苦痛で別人のような形相へと変わった。


さらに全身に浮かび上がっている電子回路のラインのような光が、まるで危険だと言わんばかりに点滅し始めている。


「何度もパワーアップできるのも聞いてる。だがそいつは、まともな人間には堪えられないもんなんだろうッ!」


「だからさっきから言ってるじゃないかッ! リズム以外はどうでもいいんだよッ!」


再び交差する両者の拳。


電子回路ラインの浮かび上がる腕と、白い鎧甲冑で覆われた腕がクロスし、互いの顔面を打ち抜いた。

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