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イーストウッドの話が終わり、彼のホログラムが消えるとメディスンが再び前へと出てくる。
「話は聞いたな。それでは各自班長の指示に従い、通常業務を行いつつ次の作戦に備えてくれ。それと、昨日から我々才能の追跡官の仲間になった者を紹介する」
リズムがディスのことだと思い、隣に座る彼のほうを向いた。
ニコも彼女と同じようにディスに体を向け、「呼ばれてるよ」と小さく鳴く。
席から立ち上がったディスを見て、メディスンが言う。
「ちゃんと来ているな。では、前に出てきてくれ」
そう言われたディスは、並ぶ席を横切り、メディスンのいるところへと歩く。
視線は当然彼に注がれており、ディスは特に緊張していなかったが、リズムとニコはプルプルとその身を震わせている。
「大丈夫かな、ディス……。あの子、こういう大人数の前で喋ったことないから、変なこと言わなきゃいいけど」
リズムに同意するように鳴いているニコ。
隣に座っていたブルドラは、その様子を見てクスッ笑みを浮かべた。
「まるで彼の母親か姉だね、リズムは。心配しなくても堂々としたもんじゃないか」
「甘いよ、ブルドラちゃん。こういうときって、壇上に立った瞬間にカチコチに固まっちゃうものなんだから」
リズムに続いて、「そうだそうだ」とニコが鳴く。
ブルドラは何を言っても心配するんだなと思い、呆れながら視線を前へとやった。
才能の追跡官たち全員の前に立ったディス。
彼にはリズムの心配する緊張感などはなく、実にリラックスした様子だった。
メディスンが彼のことを皆に紹介する。
「彼の名はディス·ローランド。ブラッド班長がいる第三班に配属が決まっている。班は違えど、皆彼と仲良くしてやってくれ」
「ディス·ローランドです。まだまだわからないことばかりで、迷惑をかけてしまうことが多いかもしれませんが、少しずつ仕事に慣れていこうと思ってます。よろしくお願いします」
新人らしい挨拶――波風が立てることのない当たり障りのない言葉を聞いてホッとするリズムとニコだったが。
次に、傍にいたエヌエーがした質問の答えに驚愕することとなる。
「ディス君。あなたは自分から才能の追跡官に志願したみたいだけど、どうしてこんな危険な仕事を選んだの?」
第二班の班長であるエヌエーは、いつも新人にこの質問をする。
それは、新人を試すテストの意味があった。
大勢の前で、はっきりと自分の意志を伝える人間か。
それともはぐらかすか、答えられないか。
彼女のこの問いで、それとなく新人の人柄がわかるというものだ。
(さて、この少年はなんと答えるか)
メディスンが内心でそう思っていると、ディスは彼の――いや、会議室にいる誰もが想像していなかったことを口にした。
「それはリズムです。彼女がいるからこの街へ来ました」025




