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――ディスとコーダがぶつかり合ったとき。
ヴォックス·エリアを襲撃したストリング帝国軍を止めるために、パロマとシヴィルが向かっていた。
自動運転車でハイウェイを抜け、エリア内へと入った二人は、車から降りてその戦場の光景を目にする。
「状況は、連合国軍がちと押されているといったところか……」
「でも、大丈夫。シヴィルとパロマが頭を叩けば状況は変わる」
シヴィルが静かに言うと、パロマが力強く頷いた。
軍刀――夕華丸。
高周波ブレードの原理で動く日本刀を抜いてシヴィルと共に戦場を駆け抜ける。
半壊した市街地に、黄金の髪と灰色の髪が走ると、帝国兵たちは電磁波放出装置――インストガンを発射。
パロマとシヴィルは襲い掛かる電磁波をに向かって同時に叫ぶ。
「早速来たな、行くぞシヴィル! 装甲ッ!」
「うん、シヴィルも続く。装甲ッ!」
その叫びと共に、彼女たちの腕に白い鎧甲冑のような装甲が覆っていった。
これはマシーナリーウイルスによる機械化する能力だ。
パロマは夕華丸で電磁波を切り払う。
シヴィルは残された左腕で電磁波を弾き飛ばす。
まるで敵陣の中を無人の荒野のように進む二人。
やはり特殊能力者である彼女たちを相手にするには、実戦経験の少ない帝国兵では手に余るようだった。
パロマたちの狙いは、敵の指揮官である帝国の将校――ネア·カノウプス大尉だ。
敵の本陣まで深く踏み込んだ二人は、帝国兵を蹴散らしながらピクシーカットの女を捜す。
「まさかの戦場での再会。これは見えない力に導かれているといっていいんじゃないかしら?」
そんな二人の前に、ネアがその姿を現した。
彼女は狙われているとわかっていながら堂々とその身を晒す。
そして、ネアは周囲にいた帝国兵たちに指示を出す。
「あなたたちは連合国軍と警備ドローンの相手をお願い。この子たちは私の客だからね」
そう言われた帝国兵たちは、彼女の指示通りにその場から去って行く。
パロマは夕華丸を構え直し、目の前に立つネアのことを見据える。
「ずいぶんと余裕じゃないか。特殊能力者二人を相手に」
「たかがくっころ娘と片腕人形を相手に、そう気張ることもないでしょ?」
小首を傾げて挑発するネア。
ここで今までのパロマだったら憤慨し、相手に怒り任せに飛び掛かるところだが。
彼女は落ち着いた様子で剣をネアに向けた。
「くっころ娘がなんなのかはよくわからんが、後悔させてやるぞ、ネア大尉」
「あら? なになに? 私と関係を持ってから一皮むけたのかしら? なんだか私の知ってるパロマちゃんじゃないみたいね」
ネアがそう言うと、シヴィルも前に出てパロマの横に並ぶ。
「パロマは変わったんじゃない。少し成長しただけ……。と、シヴィルは思う」
「わざわざありがとう、お人形さん。それにしても、成長ねぇ……。やっぱり処女を散らすと女は変わるのね。その相手ができて、私は光栄よ」
「抜かせ。その卑猥な言い回しを二度と口にできないようにしてやる」
パロマの放つ、静かながらも重苦しい威圧感に、ネアはニッコリと微笑んだ。




