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――コーダがストリング帝国の本陣を出て行った頃。


ディスは戦場の前線から帝国の敵陣へ入り込んでいた。


前線で見つけたら帝国兵の死体から服を剥ぎ取り、それを着てどさくさに紛れて侵入したのだ。


才能の追跡官(アビリティトレーサー)の白いショート丈のコートを脱ぎ捨て、その上から帝国の深い青色の軍服を着ている。


幸いなことに、細身のディスが着ている服の上からでも問題なく身に付けることができた。


多少不格好に見えなくもないが。


帝国兵の中にも少年少女兵が多くいたため、なんとか誤魔化せるだろう。


「でも、この頭と顔じゃすぐにバレちゃうかなぁ」


ディスは自分のオレンジ色の髪とツギハギだらけの顔に触れると、帝国兵の持っていた包帯を頭と顔に巻いた。


これは軍用に作られたバンテージで伸縮性のある弾性包帯だ。


怪我をした部位を覆うことで患部を保護することができる。


帝国兵が使う救急用のバンテージは、腕が負傷した場合に備え、片手でも巻くことができ、一人で事故などにあった場合でも自分自身で応急処置を行うことが可能。


ディスはこれを使って負傷者を装い、自分の目立つ髪色と特徴的な顔を隠したのだ。


(ちょっと息苦しいけど、これで入り込めるよね)


内心でそう自分に言い聞かし、敵陣の中を歩くディス。


帝国兵の陣地では、市街戦というのもあってか歩兵ばかりだった。


そもそもちゃんとした備えをして襲撃をしたのかも怪しいほど、どの帝国兵たちも戦場に慣れていないように見える。


だが、それでも兵たちの目には力強い意志が感じられた。


ここで負ければ自分たちは終わりだといったような、古い言葉で知られる――川を背にしたところに陣を敷き、退却できないようにして必死に戦う背水の陣というやつだ。


この街――アンプリファイア・シティを手に入れ、ストリング帝国は一体何がしたいのか。


ディスの頭の中ではそんな疑問がよぎったが、どうでもいいとすぐに消えていった。


帝国が何を考えているかなんて自分には関係ない。


それは連合国軍も同じだ。


自分はリズムのために、才能の追跡官(アビリティトレーサー)になってこの街へ来た。


だから、味方が何を考えていようが、敵が何をしようとしているのかなんて意味がない。


ディスは改めてそう思いながら敵陣を進む。


「おい、そこのミイラ男」


敵陣のかなり奥まで入り込んだディスに、突然声がかけられた。


ディスは内心で「大丈夫……バレっこない」と呟きながらも振り返る。


「自分のこと……でしょうか?」


「そうだよ。バンテージを顔に巻いているなんて、お前以外にいねぇだろうが」


そう言った声をかけてきた男。


逆立てた短い髪をかき上げるその姿を見たディスは――。


「コーダさん……?」


と、思わず男の名を呟いてしまった。


そう――。


ディスに声をかけてきたのは、彼が捜していた人物――コーダ·スペクターだった。

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