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並んでいる席に、ブルドラとニコを抱いたリズムが腰を下ろす。
ディスはリズムの隣の席に座る。
真っ白い空間が広がっている会議室には、他の班の才能の追跡官の少年少女たちの姿もあった。
前には第一班の班長である神経質そうな男メディスンや、第二班の班長の銀髪の女性エヌエーと共に、ディスたち第三班の班長――坊主頭のブラッドが席に着かずに立っている。
「時間になったので、これから会議を始める。まずは局長から全員に話があるそうだ」
そして、一人前へと出て来たメディスンがそう言うと、人型の立体映像――ホログラムが映し出された。
《おはよう諸君》
現れた短いツーブロックの髪型をした屈強なホログラムの人物。
その名は、リプリント・イーストウッド。
アンプリファイア・シティへ派遣された軍警察である才能の追跡官の結成を提案した――連合憲兵総局の局長である。
前の戦争の末期に、各国の軍を纏めあげたことで評価された男だ。
彼は世界中の特殊能力者を集め、施設に入れて管理していた。
そして、アンプリファイア・シティの企業――ボス·エンタープライズの女性CEOであるコラス·シンセティックに街の治安維持を頼まれ、これまで集めていた特殊能力者の子供たちで構成された組織を創り、それが現在の才能の追跡官となった。
他にも無能力者であるブラッドたち三人を班長に推薦した人物でもある。
《早速だが、本題に入ろう。コラス·シンセティックから要請があり、一度私もそちらへ行くことになった。これは予想だが、近いうちに大規模な作戦が行われる可能性がある。諸君らには通常業務をこなしてもらいながら、それに備えていてもらいたい》
前のほうへ座っていたパロマは、イーストウッドの話を聞きながら思う。
(局長が来るのか。これはアピールするチャンスだな)
彼女は自分の班の班長であるブラッドとは馬が合わず(パロマの一方的な気持ちだが)、メディスンやエヌエーのことも、人間的にあまり好きでなかった。
当然イーストウッドのことを慕っているかというとそうではないが、才能の追跡官のトップである彼の近くで活躍すれば、出世できると考えていたのだ。
イーストウッドが来るうえに大規模な作戦が行われるのなら、これこそ好機だと、パロマは誰にも気付かれないように笑う。
「なに笑ってんだ?」
「パロマ、イヤらしい」
だが、左右に座るムドとシヴィルがそんな彼女に気が付いていた。
「うるさいッ! お前たちこそちゃんと局長の話を聞いていろッ!」
恥ずかしかったのか顔を真っ赤にしたパロマが声を張り上げると、メディスンに注意されてしまう。
「みろ、お前たちのせいで私が怒られたじゃないか」
「いや、大声を出したのはお前だろ……」
「シヴィルは悪くない。イヤらしいことを考えていたパロマが悪い」
「お前らなぁ……」
拳を力強く握り、身を震わせたパロマだったが、そこを堪えて再びイーストウッドの話に耳を傾けるのだった。




