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――ディスが再び自動運転車を発進させたとき。
彼らが向かっていた軍警察署では、イーストウッドとメディスンが向かい合っていた。
イーストウッドが何か怒らせるようなことを言ったのか、メディスンは表情をしかめている。
「それはどういうことだッ!?」
「おいおい、そんなに怒鳴るなよ。お前は命令違反をしたんだ。本来なら軍律に沿って、死刑でもおかしくないんだぞ。それなのに、どうしてそんな親の仇でも見たような態度なんだ?」
「私への罰が死刑ならそれでも構わん! だが罰も与えずにただ本国に戻れとは、一体どういうことだと訊いているんだッ!」
メディスンは命令違反した自分への処罰のことを、局長であるイーストウッドに訊ねに来ていた。
才能の追跡官を指揮する立場にあるメディスン――班長が班員たち全員を連れて命令違反をしたのだ。
当然、かなり重い処罰を覚悟していたのだろう。
だか、メディスンに罰が与えられることはなく、すぐに連合国上層部のもとへと行くように指令が出された。
メディスンは残された班員たちが心配なのもあり、さらにはこの指令に何かよからぬ意図を感じ、イーストウッドに喰って掛かっていたのだ。
「さあな。現場にいたお前から直接話を聞きたいんじゃないのか?」
そう言い、イーストウッドは言葉を続ける。
すでにアンプリファイア・シティは連合国の管理下に入った。
これから本格的に連合国軍が街へと入り、反乱分子の一掃と、隠れている特殊能力者らを探し始める。
この街にはもうメディスンが残ってやる仕事とはない。
安心して本国へ戻るといいと、苛立つメディスンを宥めるように話した。
「お前は十分に役目を果たした。良い機会だ。ゆっくり休め」
「私以外の者たち……班員たちはどうなるんだ?」
「その心配もいらんさ。私がここに残るからな。何かあれば報告する。すぐにでもな」
メディスンはこれ以上話していても無駄だと思い、局長室を出ていった。
軍警察署内の廊下を歩きながら、メディスンは独り事を呟く。
「役目が終わった……だと?」
そして、考えていた。
反乱分子とはストリング帝国のことなのか。
それと、隠れている特殊能力者を捕まえて、一体どうするつもりなのだ。
メディスンにはイーストウッドの――しいては連合国上層部の考えがわからなかった。
たしかに、街にはもう才能の追跡官は必要ないのかもしれない。
だが、ドクター·ジェーシーやストリング帝国は未だに捕まっていない状態だ。
班長である自分が、上層部のところへ戻されるのには何かある。
「一応、手は打っておくか……」
メディスンは再び呟くと、ブルドラが捕らえられている部屋へと向かった。




