023
軍警察署へと入り、これから朝の会議に参加するため、会議室へと向かう。
「お前らは先に行ってくれ。俺には寄るところがある」
ブラッドがそう言って皆と別れた。
それから第三班は階段を目指す。
署内には警備ドローンが多く、他の才能の追跡官たちの姿は見えなかった。
それもそのはずだ。
連合国からアンプリファイア・シティへと派遣されたのは、第一班から第三班までの班長であるメディスン、エヌエー、ブラッド以外の人間は皆、特殊能力者のみで構成されている。
無能力者は先に述べた三人だけで、それ以外は全員特殊能力者で統一されている。
一つの班で約四から五人。
才能の追跡官――この派遣された連合憲兵総局の人間は、総勢十五人から十八人にくらいである。
それ以外の雑用やデータ管理などは、すべてドローンに頼っている状態だった。
「第三班は今日も皆一緒だな」
「あッブルドラちゃん、おはようございます」
「おはようリズム」
ビルの二階にある会議室へ向かう途中で――。
ディスたち第三班に一人の少女が声をかけて来た。
ウルトラマリンブルーの髪色をした少女。
ディスたちと同じく黒い上下の制服に白いショート丈のコートを着ている。
彼女の名は、ブルドラ·ローランド。
メディスンが班長を務める第一班に所属している者だ。
その彼女を見たリズムの態度から、二人が親しい間柄ということがわかる。
「そっちのオレンジの髪がメディスン班長が迎えに行った新人か?」
「そう、ブルドラちゃんと同じローランド研究所で見つかった子だよ」
ローランド研究所とは――。
ストリング王国の出身で、現在は連合国から世界中で指名手配されているドクター·ジェーシー·ローランドの研究施設のことだ。
ディスとブルドラの姓がローランドなのは、名前のわからない彼らがローランド研究所で保護されたことを意味する。
ブルドラはリズムと少し話をすると、ディスの横へ並ぶ。
「おはよう新人君。僕はブルドラ·ローランド。君と同じくローランド研究所で保護された人間だよ」
同じくらいの年齢に見えるが、大人びた態度のブルドラにディスは挨拶を返した。
二人は、同じところから保護されていたが、実際に顔を合わすのはこれが初めてだった。
「リズムから君のことよく聞いていたよ。班こそ違うが、何かあれば言ってくれ。まあ、彼女がいれば僕なんて役に立たないだろうけどさ」
ディスは思う。
少女らしかぬ言葉遣いに、髪が短いせいか。
中性的な印象を受ける。
ブルドラとしては、同じところから保護されたという親近感があるのだろう。
とても友好的に今後もよろしくといった様子だった。
「着いたよ、二人とも」
リズムがそう言うと、ニコが二人に知らせようと手を振って鳴いていた。
先を行くパロマとムドに、その後ろを眠たそうに歩くシヴィルに続いて、ディスたちは会議室へ入って行った。




