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――パロマはマシーナリーウイルスの暴走が解け、元の姿に戻っていた。
彼女の傍には、右腕を失ったシヴィルが横になって眠っている。
無理をしたせいか、灰色髪の少女にこれ以上の戦闘は不可能だ。
メディスンはシヴィルを見守っているパロマを眺めながら、電気仕掛けの仔羊――ニコのほうへと視線を向ける。
ニコは未だに意識が戻らないディスとリズムを介抱していた。
二人にシヴィルのような外傷はない。
ディスはただ意識がないだけだったが、リズムのほうは衰弱が酷く、早く適切な処置をしなければ命に関わるかもしれない。
メディスンも重傷だ。
彼はヴィラージュに顎の骨を割られ、口から血が止まらない状態だ。
「他の班員たちと連絡も取れん……。ここは一度引くか……」
指に付けたリングタイプの通信機器を操作しながら、メディスンがそう呟くと――。
「ここに戦える者は残っているか?」
連合憲兵総局の局長――リプリント・イーストウッドが部下を数人連れて現れた。
「イーストウッド……? 何故ここへ?」
メディスンは彼の登場に驚きが隠せなかった。
それは、ディスたちが命令違反をしてリズムとパロマの救出へと向かい、メディスンもまた彼らと同じく他の班員たちを連れてここ――ハイワット·エリアへとやって来ていたからだ。
驚愕するメディスンに、イーストウッドが答える。
「お前が私の指示を聞かないことはわかっていた。だから、そこを利用したんだよ」
「なんだとッ!?」
イーストウッドは、ヴィラージュとリトルリグがこの建物でメディスンやリズムたちを攫った連中と戦っている間に、行動を起こしていた。
彼は、ヴィラージュの仕切るヴォックス·エリアと、この建物がある区域――リトルリグが守るハイワット·エリアを占拠したと言う。
「よくやったぞ、メディスン。お前の馬鹿げた行動のおかげで、ついにアンプリファイア・シティ四つの区域はすべて連合国の管轄にすることができた」
「まさか力づくでエリアを襲撃したのかッ!?」
イーストウッドは、適当な罪をそれぞれのエリアにつけて占領。
アンプリファイア・シティ、は先ほど彼が言ったように連合国のものとなった。
「少なくともヴィラージュは才能の追跡官と協力関係にあったはずだ! それにリトルリグ……彼だって、ここで私たちと共にッ!」
「いいからお前は休め。後はこっちでやる」
イーストウッドは部下に指示を出し、メディスンを囲ませた。
メディスンは離せと言いながら振り払おうとしたが、彼はまるで犯罪者のように拘束されて連れて行かれる。
それから倒れているディスとリズム、さらにシヴィルも担架で運ばせた。
暴れるニコも、彼らと同じく担がれていく。
そして、イーストウッドは部下と共に上へと向かおうと歩を進める。
「パロマ·デューバーグ。お前は戦えそうだな。一緒に来い、人員がいる」
床に両膝をついたままのパロマの背中に、イーストウッドは声をかけた。




