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「不味いッ!? 来るぞッ!」
メディスンは、慌てて横になっているディスとリズムの身体を引きずった。
ニコも彼を手伝って後退する。
「うおぉぉぉッ!!」
ゴウは自身の能力を発動。
自分の汗や唾などの体液をウォーターカッターように放つ力――水素剃刀で向かってきたマローダーを迎撃しようとした。
身体から出る水分が粒――それから小さな刃となってマローダーを襲ったが、一瞬で間合いを詰めたマローダーによって、ゴウの首が焼き斬られる。
「ゴウッ!? クソッ! 何をしているムド! シヴィル! お前たちも身を守れッ!!」
首が跳ね飛ばされたゴウを見てメディスンが叫んだ。
だが、突然のことに反応が遅れたムドとシヴィルに光剣が向かって来ていた。
「危ねぇッ!」
ムドは自分の身を守るよりも、パロマを支えていたシヴィルの身体を思いっきり突き飛ばした。
シヴィルはその衝撃でパロマと共に吹き飛ばされ、すぐに機械化――装甲して自分の身をパロマを守る。
だが、二人を突き飛ばしたムドの胸には、ピックアップブレードの光の刃が突き刺さっていた。
「マ、マジかよぉ……? オラァァァッ!!」
ムドはマローダーの身体を掴むと能力――燃焼操作を使った。
胸に刺さった光の刃にマッチ箱を押しつけて炎を作り出し、それで自分自身を焼いていく。
突き刺さったピックアップブレードの白い光の刃と、赤かった炎が次第に薄紫色へと変わって交わる。
「ただくたばらねぇ……。あんたを道連れにする……。オレは……パロマを……守るぅぅぅッ!」
「ムドッ!」
シヴィルの悲痛な叫び声と共に、ムドを包んでいた薄紫色の炎が彼とマローダーを包んでいく。
下がっていたメディスンとニコは、何もできずにその場で肩を落としていた。
シヴィルはその場で泣き崩れ、ただムドの名を叫び続けた。
「ム、ムド……ムド……」
放心状態のパロマもムドの名を呟き、その両目からは涙が流れだしていた。
まるでムドの命を燃やしたかのような凄まじい炎。
その中から、マローダーが何事もなかったかのような表情で出てくる。
「マローダァァァッ!」
シヴィルは泣きながらマローダーへと飛び掛かった。
だが、激高して飛び込んでくることを読んでいたのだろう。
マローダーは彼女の機械の拳を避け、その腕を焼き斬った。
「ギャァァァッ!」
肉が焼かれて切断された部分を押さえながら転がるシヴィル。
マローダーは攻撃の手を緩めることなく、床に転がった彼女の身体を踏みつける。
「させるかッ!」
メディスンはバヨネット·スローターをマローダー向けて撃ったが、ピックアップブレードによって電磁波を弾かれる。
そして、そのまま足で押さ付けたシヴィルの前に刃を向けた。
「お前はもう少し強いと思っていたんだがな。所詮は子供か」
ボソッと呟くように言ったマローダーが、シヴィルにピックアップブレードを突き刺そうした瞬間――。
「ウワァァァッ!!」
電子加工されたかのような咆哮と共に、彼の身体が吹き飛ばされた。
マローダーはすぐに態勢を戻し、自分を吹き飛ばした者へと視線を向ける。
「動けるのか? パロマ·デューバーグ……」
そこには、激しく息を切らして立っているパロマの姿があった。




