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「メディスン班長! やっぱり来てくれたんですね!」
ブルドラが歓喜の声をあげた。
それに続いてムドもシヴィルも嬉しそうに顔を緩ませている。
突然現れたメディスンと才能の追跡官たちに銃剣付き拳銃――バヨネットスローターを向けられ、赤い開拓者たちの動きが止まっていた。
シヴィル、ラウドと戦っていたヴィラージュとリトルリグも、攻撃の手を止めて彼らのほうを見ていた。
「まさか班長まで出て来るとはな。やっぱここはかなり重要なとこらしい」
その中を歩いて行くメディスンに向かって、ヴィラージュが表情を歪めながら吐き捨てる。
そして、リトルリグはゆっくりとメディスンへと近づいていく。
「メディスン……。あなたは信じられる人だと思っていたけど」
「それは自分で決めることだ。お前も私の行動を見てそう考えてくれたんだろう?」
「それはそう……だけど……」
俯きながら言ったリトルリグ。
それを見たメディスンは、班員たちに向かって銃を下すように指示を出した。
そして彼自身も銃を下げて、その場にいる全員へ声を張り上げる。
「お前たちもこの街、アンプリファイア・シティで生きる者なら、何が虚偽で何が真実か自分で考えて決めろ! それでも戦うというのなら好きにすればいいッ!」
自らの優位を捨ててまで語りかけてきたメディスンに対し、赤い開拓者たちの間にも動揺が走っていた。
彼らはガスマスクをしているため、その表情こそわからないが。
明らかに才能の追跡官への戦意が揺らいでいる。
だが、ただ一人。
赤い燕尾服の幼女だけはメディスンへと噛みつく。
「ふざけんな! 何が自分で考えろだ! お前らがあーしらをハメたってことはもうバレてんだよ!」
ヴィラージュはメディスンに向かって、捕らえた男の言葉を話した。
ボス·エンタープライズのCEOコラス·シンセティックの命令で動き、ハイワット・エリアとヴォックス・エリアを争わせるように指示があったことを洗いざらい吐いたと。
「それでもまだ信じろってのか? 騙されたら終わりだ。この街じゃそんなバカから死んでいくんだよ!」
「事情はわかった……。私もさっきコラス·シンセティックに連絡したが返信がない。どうやら嵌められたのは我々も同じようだ」
「だから、んなこたぁ信じらんねぇんだよッ!」
ヴィラージュは飛び上がって、メディスンに拳を振り上げた。
その小さな拳は顎へと打ち抜いたが、メディスンは堪えたまま幼女を見つめ返す。
「メディスン班長ッ!?」
「手を出すなッ!」
ブルドラが声をあげ、他の班員たちも銃をヴィラージュへと向けたが、メディスンはそれを制止。
そして、静かにその口を開いた。




