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突然現れたヴィラージュとリトルリグ。
二人の後ろには赤い開拓者の集団がおり、これから殴り込みでも行こうとしているかのような様子だ。
「芝居はもういいんだよ」
「芝居? 一体に何を言っているんだ?」
ブルドラが思わずオウム返しして訊ねた。
ヴィラージュはケッと口元を歪めると、リトルリグが言う。
「お前たちがハイワット·エリアとヴォックス·エリアを戦わせようとしたんだな」
「なッ!? いきなり何を言っているんだッ!? それよりも見ろ! 帝国の連中が……ッ!?」
ブルドラがそう言った先には誰もいなかった。
先ほどまでいたストリング帝国将校三人は、いつの間にか姿を消していたのだ。
「帝国? 誰もいねぇじゃねぇか。どうせこれまでのことも全部お前らがでっち上げたんだろ?」
「そうだ。そうやってタイラーテラーを騙して殺して、オレンジ·エリアを奪った」
ヴィラージュがそう言うと、リトルリグも彼女に続いて言葉を吐いた。
ブルドラは必死で誤解を解こうとしたが、幼女と少年は聞く耳を持たない。
どうやら二人は、ここ最近に起きた電子ドラッグの騒動も、ストリング帝国がアンプリファイア・シティにいるというのも、すべて才能の追跡官――軍警察が描いた絵図だと思っているようだ。
「ちょっと待ってくれッ!? お前たちは勘違いしている! 僕たちはそんな真似はしていない!」
「だからもう、芝居はいいつってんだろ青髪の姉ちゃんッ!」
ヴィラージュは怒鳴り返すと同時にブルドラへと飛び掛かった。
だが、そこへシヴィルが割り込み、幼女の拳を受け止める。
「ヴィラージュ、シヴィルたちを信じて」
「あんッ!? テメェまでシラを切るのかチビッ子ッ! もう全部バレてんだよ!」
ヴィラージュはシヴィルを蹴り飛ばすと話し始めた。
彼女が捕まえた男――赤い開拓者の格好してハイワット・エリアで暴れた者の一人が、軍警察に連れていかれる前にすべてを白状した。
男は、ボス·エンタープライズのCEOコラス·シンセティックの命令で動き、ハイワット・エリアとヴォックス・エリアを争わせるように指示があったことを洗いざらい吐いたそうだ。
それはどう見ても、マーシャル・エリアを仕切るボス·エンタープライズ――。
しいては、その下にいる軍警察――才能の追跡官が漁夫の利を得ようとしていたことに他ならない。
「そいつはあーしに吐いたぜ。隠れ家を教えるから軍警察から守ってくれってな。それでここへ来てみれば、テメェらが居やがった」
「ヴィラージュッ! 私たちがここにいたのは帝国にリズムとパロマを攫われたからなんだ! それに、お前が捕まえた男なんて知らない! 少なくとも私たちは関係ない!」
「ウダウダ言ってんじゃねぇぞ、このタボがッ!」
もはや何を話しても信じてもらえそうにない。
今にもヴィラージュ、リトルリグらは襲ってくる。
「こんなことしてる場合じゃないのにッ!」
ブルドラは顔をしかめると、手にバヨネット・スローターを握った。




