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018

「よろしくね、シヴィル。それで早速ブラッド班長に挨拶がしたいんだけど」


ディスがそう言うと、シヴィルはキッチンへと向かった。


食べ終えたカレーライスとサラダの皿を取って、キッチンへと置く。


いかにも眠たそうな顔で、ディスには特に興味はなさそうだ。


「みんないない。仕事に行ってる」


そして、少し遅れて答えた。


ディスは彼女のことをよく見る。


Tシャツにスウェットのパンツ姿で、見るからに寝起きだ。


そして、そのTシャツには、羊の群れが一匹の狼を集団で食べようとしている絵がプリントされている。


絵の羊たちの手にはナイフとフォークが持たれ、泣いている狼が逃げているものだ。


(変なTシャツだ……。それよりも彼女も班員なら家にいていいのかな?)


ディスが内心でそう思っていると、シヴィルはキッチンの棚に隠された大量のスナック菓子やチョコレートを手に取って部屋を出て行く。


先ほどまで食事していたのに、まだお腹が減っているのかと思いながらディスが訊ねる。


「ねえ、君はどうして家にいるの? 皆と仕事に行かないの?」


「君じゃない」


「え?」


シヴィルは部屋を出て行こうとして、扉の前で振り返る。


「シヴィルはシヴィル。君じゃない」


「ごめん、じゃあシヴィルって呼ぶね。それでシヴィルは何をして……」


「今シヴィルは忙しい。これから狩りに行く」


「狩り?」


そして、バタンと扉が閉められた。


部屋に残されたディスがニコのほうを向くと、電気仕掛けの仔羊はやれやれといった様子で首を左右に振っている。


「あの子はいつもああだから」とでも、まるで彼女の姉のような態度だ。


それからニコに連れられ、ディスは彼用に空いている一階の寝室へと向かった。


「ま、いっか。待っていれば帰って来るよね」


ディスの言葉にニコは優しく鳴き返す。


案内された部屋に入り、少ない荷物を置いてベット腰を下ろす。


そして、ニコに向かってディスが言う。


「リズムに会える。もうすぐ彼女に会えるんだ。嬉しいな、ニコ」


笑顔で言うディスに向かって、ニコも嬉しそうに鳴き返した。


――その頃リズムは、ブラッド、パロマ、ムドと共に、捕らえた赤い開拓者レッドパスファインダーたちを護送車で運んでいた。


すでに軍警察署のビルに辿り着き、パロマやムドとの戦闘によって怪我をした者たちを、補助を目的として作られたドローンが連れて行く。


まるで小さな郵便受けのような身体に、白いカラーリングが施された軍警察では班員よりも多くいるドローンたちだ。


それを見届けると、ブラッドがリズムたちへ言う。


「よし、今日はここまで。家に帰ろうぜ」


「ブラッド班長。彼らの尋問はいいんですか?」


「いいから、今日はもう休もうぜ」


「私だけでも残って……」


ブラッドは、まだ仕事をしようとするパロマの前に手の平を出して制止した。


そんな根詰めてやることでもないと。


「それに、連中の治療も終わってねぇし。尋問はそれからのほうがいいだろ?」


「わかりました……」


パロマの返事を聞いて笑みを浮かべるブラッド。


だが、彼女は思う。


何が根を詰める必要はないだ。


お前が休みたいだけだろうと。


(ダメな上司だ。いっそのこと班を移動するか、メディスン班長のほうがまだマシ……)


「パロマ~、早く行こう」


「あぁ……」


そして、パロマはリズムに声をかけられ、渋々家へと戻るのだった。

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