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玄関や廊下の壁は傷だらけになっており、戦闘でもあったかのようになっている。
ディスは靴を脱がずに家の中へと入り、迷わずリズムの部屋へと走って行った。
「リズムッ! リズム返事をしてッ!」
ムドやシヴィルも中へと入り、リビングや二階を見て回ったが、リズムもパロマもニコの姿もなかった。
もしかして敵の襲撃があって、彼女たちが攫われたのか。
誰もがそう思っていると、玄関から声が聞こえてきた。
「おーい! 誰かいないのかッ!?」
ムドとシヴィル、そしてラウドが玄関に向かうと、そこにウルトラマリンブルーの少女――ラウドと同じ第一班の班員であるブルドラとニコと共にいた。
彼女らの手には、買ってきたであろう食材の入ったビニール袋が持たれていた。
「君らはヴォックス·エリアに行っていたと聞いたけど、これは一体何があったんだッ!?」
ブルドラが彼らに説明を求めると、ニコも訊ねるように大声で鳴く。
しかし、ムドたちも今到着したばかりで、何故家が荒らされているのかはわからない。
「ブルドラこそ、どうしてここに?」
「僕はニコと外で会って、よかったら昼食を一緒に食べないかと誘われたんだよ」
ブルドラがラウドの問いに答えると、ディスが皆の前に現れた。
その手には小さなデバイスが持たれており、彼は何も説明することもなく、それのスイッチを入れる。
すると、デバイスからホログラムが現れ、そこには赤いメッシュの入った白髪の少女が映った。
《こんにちは。いきなりだけど、リズム·ライクブラックとパロマ·デューバーグは預かったよ。彼女らを返してほしかったら、こちらが指定する人間を連れてハイワット·エリアに来てね》
ホログラムに映った赤いメッシュの入った白髪の少女は、まるで家族にメッセージを送るかのような気軽さでそう言った。
だが、そんな気楽な言い回しを聞いたディスは、そのツギハギだらけの顔を歪めて外へと出て行こうとする。
「待て、ディス!」
ブルドラが彼の肩を掴んで止める。
そして、今は状況を確認することが大事だと諭した。
それからホログラムの伝言を聞き直すと、赤いメッシュの入った白髪の少女の名がグリー·ローランドだということ。
そして、彼女が指定した人物がディスとブルドラであることがわかった。
「ローランドってことは、この女もブレインズか」
「どうやらリズムとパロマは帝国の連中に攫われちゃったみたいだね~」
ムドとラウドが状況を整理していると、ディスが声を張りが上げる。
「そんなことどうでもいい! 早く、早くリズムを助けに行かなきゃッ!」




