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獣のような表情で言うヴィラージュに、リトルリグは何も答えずに、その無愛想な顔を向けているだけだった。


燕尾服の幼女は、そんな彼にさらに詰めよってその胸倉を掴む。


「なんとか言ってみろコラッ! テメェの勘違いでうちのもんが何人死んだと思ったんだよ!」


ヴィラージュの性格的にすぐにでも手を出しそうなものだが。


どうしてだか、ただ怒鳴つけているだけだ。


胸倉を掴まれ、俯いていたリトルリグは、顔を上げて申し訳なさそうに口を開く。


「ごめんなさい……」


「あん? ゴメンで済んだら暴力なんていらねぇんだよッ!」


「わかってるよ。許してもらえるようオイラがなんでもする……。だから、ハイワット・エリアには手を出さないで……」


リトルリグの実力なら、たとえヴィラージュが相手でも戦えるだろう。


だが、彼は自分のしたことの過ちを認め、幼女に許しを乞うていた。


ヴィラージュはそんなリトルリグの態度が気に入ったのか、ニヤリと口角を上げる。


「なんでもするんだな?」


「うん、だからハイワットのみんなには……」


「よーし、なら約束してやるよ。ハイワット・エリアには手を出さねぇ」


ヴィラージュはそう言うと、胸倉から手を離してリトルリグを抱き締めた。


それから、彼の耳元で甘く(ささや)くように言う。


「その代わり、あんたはあーしのもんになれ。なにぁ、別に部下になって戦えって言ってるんじゃねぇ。今まで通り、あんたはハイワット・エリアを守ればいい」


「それは……どういう意味?」


リトルリグが訊ねると、ヴィラージュは不機嫌そうに彼から離れて声を荒げる。


「察しろよバカッ! あーしの男になれって言ってんだ!」


幼女の言葉に、その場にいた全員が絶句した。


仲間が殺されたというのに、ただ自分の恋人になれば許してやるとは――。


ヴィラージュはリトルリグのことが好きだったのかと、誰もが呆けた顔で立ち尽くしてしまっていた。


「レストランではそんな素振りを見せていなかったが……。あの様子を見る限り、どうやらふざけているようではなさそうだな……」


「まさかの告白。でも、これはこれでよかったのかも。シヴィルはそう思う」


着ている燕尾服のように真っ赤な顔になったヴィラージュ。


メディスンはそんな彼女を見てポツリと言い、シヴィルがボソッと呟いていた。


「そんなんでいいの? じゃあ、ヴィラージュの男になる」


「そんなんとはなんだよッ!? こんなこと言うの、かなり恥ずかしかったんだぞ! ……まあいい。よし、とりあえずメシだメシ。ついて来い」


ヴィラージュがそう言うと、集まってきた赤い開拓者レッドパスファインダーたちが一斉に拍手した。


パチパチと手を打つ喝采の中、ヴィラージュはシヴィルと共にその場を後にしていく。


そして去り際に、ヴィラージュがメディスンに声をかける。


「おい、メディスン。こいつの処理はあんたらに任す。あーしはこれからリトルリグとデートで忙しいからな」


「あぁ……それは構わんが……」


「よし、任せたぞ。行くぞ、リトルリグ」


ヴィラージュにそう言われたリトルリグは、コクッと頷くと彼女の後について行った。


残されたメディスンたち才能の追跡官(アビリティトレーサー)は、ポカンと呆けた顔で去っていく幼女と少年の背中を、ただ眺めているだけだった。

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