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リトルリグはそう言うと、氷の彫刻となっていたメディスンの体を元に戻した。
ラウドの足の氷もいつの間にか溶けている。
「自由に氷を操れるんだ。便利な能力だなぁ」
「シヴィルもほしい能力。あの力があればかき氷食べ放題。うらやましい……」
「二人とも、もう危機は去ったけど、相変わらずの余裕だね……」
ラウドが驚き、シヴィルが氷の能力を欲しがっているのを見て、ディスはその普段通りの能天気さに呆れていた。
バラバラに崩れる氷の欠片から解放されたメディスンが、ふらつきながらもリトルリグに訊ねる。
「では、お前がヴォックス・エリアを襲撃したのは、赤い開拓者たちへの報復か?」
事情を把握しているのを見るに、どうやらメディスンは氷漬けにされながらも、話が聞こえていたようだ。
その問いに、リトルリグはコクッ頷く。
「うん。じゃなきゃ、オイラは暴れたりなんかしないよ」
メディスンは考える。
リトルリグの様子からして、彼が嘘を言っているようには見えない。
だが、これまでけして相手のナワバリに侵入しなかった赤い開拓者らが、何故襲撃をしたのか。
リトルリグが報復に現れることくらい、彼らのボスであるヴィラージュにもわかるはずだ。
何かが、何かがおかしい。
メディスンが思考を巡らせていると、そこへ、赤い燕尾服を着た幼女――ヴィラージュが現れた。
「ちッ、リトルリグがまだピンピンしてやがる。才能の追跡官は思ったよりも使えねぇな」
そう吐き捨てるように言ったヴィラージュの肩には、傷だらけの男が担がれていた。
それから幼女は、リトルリグにやられた赤い開拓者たちを眺めると、表情を強張らせて担いでいた男を放り投げる。
「おい、リトルリグ。こいつがハイワット・エリアを襲った犯人だ」
ヴィラージュは苛立ちを隠すことなく、リトルリグへと説明を始めた。
突然言い掛かりをつけて襲ってきたリトルリグに、身に覚えがない彼女はすぐに部下たちに確認。
ヴィラージュの命令以外で動くことのない赤い開拓者たちが、勝手にハイワット・エリアへに行くはずなどない。
ましてや襲撃など絶対にあり得ない。
ヴィラージュはそう思うと、犯人は身内ではなく他の者だと考え、すぐに捜索を開始した。
そして、自分たち以外に赤い燕尾服を着た者を見つけ出し、今ここでリトルリグに引き渡したのだった。
「もっとたくさんいたって聞いてるけど?」
「あん? んなもんこいつ以外はぶっ殺したに決まってんだろうが」
そう言い放ったヴィラージュは、拳をグッと強く握った。
そして、リトルリグの目の前に立つ。
「さて、この落とし前はどうつけてくれんだ? あんッ!?」




