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017

そして、マーシャル・エリアにある才能の追跡官(アビリティトレーサー)第三班――ブラッド班の住居の前で車が止まる。


一度は軍警察署のビルへと行こうとしたが、思ったよりも道が混雑していたため、全班員への挨拶は明日にしようということになった。


車から降りたディスがメディスンに敬礼。


ニコも彼の真似をして、背筋を伸ばし、シュタッと短い手を上げて同じポーズをとる。


「説明の中で、何かわからないことはあったか?」


訊ねられたディスは、難しい顔をして小首を傾げていた。


ニコも何故か、また彼と同じように首を曲げてメェーと呻いている。


そして、悩み終えたディスが申し訳なさそう口を開く。


「凄くつまんないことなんですけど……」


「構わんよ。なんでも答える」


「なんで車が自動で動いているんですか?」


「そこかッ! いやむしろなぜ今それを訊くッ!? 気になっていたなら最初から訊ねろッ!」


ディスの今さらの疑問に、メディスンだけでなくニコまで呆れている。


やっぱりこうなったかと、ディスは右手を後頭部にやりながらばつが悪そうに笑っていた。


メディスンは呆れながらも、この街にある乗り物はすべて運転できないことを伝えた。


それは、ボス・エンタープライズが造った自動運転機能によって、車もバスも電車も電子ネットワークを介して道を覚え、動いているからだと言う。


「そのおかげで、ヒューマンエラーによる事故は激減したようだ」


「そいつはよかったですね。でも、配線を繋いでないのに、どうやって走ってるんですか?」


「一度更新すれば、新しい道ができない限りは問題ないんだよ。それよりも後はニコに任せる。私はもう行くぞ」


「了解です。今夜はわざわざ迎えて来てくれて、さらにいろいろと教えていただいてありがとうございました」


「気にしなくていい。これが私の仕事だ。じゃあ、後は頼んだぞニコ」


そして、メディスンは後のことを電気羊に任せ、その場を後にした。


ニコは去っていく車に向かって、「任されたッ!」と叫ぶかのように、全身を使って両手を振り続けていた。


それから車が見えなくなると、ディスはニコの案内で第三班の住居へと入る。


ディスが足を踏み入れるとニコが鳴く。


「うん? あぁ、うがいと手洗いか? わかってるよニコ」


返事を聞いたニコは満足そうに鳴き返した。


それからお邪魔しますと言いながら洗面所へと向かい、うがいと手洗いを終えてキッチンへと入ると、そこには幼女といってもいいくらいの身体の小さな人物がいた。


ディスが挨拶をすると、幼女はカレーライスを食べながらニコに訊ねる。


「誰? ニコの友だち?」


ニコがコクッと頷くとディスが頭を下げた。


すると、その人物は一瞬でカレーを食べ終えてディスの前に立つ。


ディスが名乗る。


「こんばんわ。俺はディス·ローランド。今日から才能の追跡官(アビリティトレーサー)第三班、ブラッド班に所属することになったんだ」


灰色の髪の幼女はディスのことをボーと見上げている。


ディスは腰を落として彼女と目線を合わす。


「君の名前は?」


「シヴィル、シヴィル·エレクトロハーモニー。第三班のメンバー……」

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