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ディスは地下室でニコと一緒に洗濯物を干していた。


この家の地下にはある部屋には、洗濯機と衣類乾燥機能を搭載した除湿機が設置してある。


年中曇り空で、乾燥こそしているが、湿度は高いという矛盾した環境のアンプリファイア・シティの家庭では標準装備の家電だ。


ディスは自分とムドの洗濯物を干し、電気羊ながら(めす)であるニコが女性陣の衣類や下着を干している。


室内にある物干し竿に洗濯物をかけ、届かないニコは体内にある反重力装置(アンチグラビティ)で宙を飛び、ディスと並んで仕事を進めていく。


「そうだ。ニコは仕事に行かずに残っていてね」


ディスがそう言うと、ニコが「なんで?」とばかりに宙に浮きながら小首を傾げる。


「だって、みんないなくなったらリズムが寂しがるでしょ。だから、ニコが彼女の傍にいてやってよ」


ニコがコクッと頷くと、そのまま床へと着地。


任せろてとその豊かな毛を持つ身体を、その短い手でドンッと叩く。


そんなニコを見て笑みを浮かべたディスだったが、すぐにそのツギハギだらけの顔を歪め始めた。


そして、ブツブツと聞き取りづらい声で呟く。


「本当なら……俺が残って看病したいけど……。仕事サボるとリズムに怒られちゃうからな……。はぁ……。仕事……行きたくないなぁ……」


ニコは肩を落として文句を言っているディスを見て、やれやれと両手を上げ、その首を左右に振っていた。


ディスが仕事を休みたがっていると、リングタイプの通信機器にメッセージが入った。


そこには、緊急事態という(いか)めしい文章と共に、これからこの家に迎えが来ると言うものだった。


ニコが何があったのかを鳴いて訊ねると、ディスはまったく興味なさそうに答える。


「なんかね。ヴォックス·エリアでリトルリグが暴れているんだって。もう……困っちゃうなぁ。リズムのお昼ご飯も作りたかったのに……」


「メェッ!?」


声を張り上げて驚くニコ。


それも当然だ。


リトルリグはハイワット·エリアの代表者の少年である。


それが、赤い燕尾服の幼女ヴィラージュが仕切るヴォックス·エリアで暴れているということは、この街――アンプリファイア・シティの大事件といえる事柄だ。


これだけの事態が起こっているというのに。


ディスは丸っ切り無関心で、リズムの昼食のことで頬を膨らませる始末だ。


ニコはそんなディスに向かって、「おーい、お前は才能の追跡官(アビリティトレーサー)だろう?」と呆れながら鳴いていたが。


彼は大きくため息をつくと、地下室から出て行こうとする。


そして、出る間際にニコへ声をかけた。


「じゃあ、ニコ。悪いけど、リズムのことはお願いね」


ニコは心配そうに鳴き返すと、ディスは肩を落としてトボトボと一階へと上がって行くのだった。

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