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――才能の追跡官の本部が崩壊してから数日後。
ボス·エンタープライズのCEO――コラス·シンセティックによって新たな軍警察署が用意された。
建物自体は以前よりは小さくなったものの、設備は同じで才能の追跡官の活動には何も支障はなかった。
メディスンは今回の事件を纏めたデータファイルをコラスや才能の追跡官連合憲兵総局の局長――リプリント・イーストウッドへと送り、本部以外で起きていたことを知らされる。
それは、第一班と第二班が向かったオレンジ·エリアでのことだ。
オレンジ·エリアでは、タイニーテラーの部下たち――橙賊が第二班へと襲い掛かり、その後に救援で第一班が合流。
特殊能力者である班員たちからすれば、橙賊は数こそ多かったが敵ではない。
そのため、敵の制圧はそれほど時間はかからなかった。
その後に局長命令――イーストウッドから班員たちへ指示が出され、橙賊は殺処分となり、さらにタイニーテラーと深い関係があったと思われる人間は、男も女も、老人も子供も皆捕らえられ殺された。
オレンジ·エリア制圧後に、単独で本部へと戻ったブルドラはその事実を後で知ったが、そこまでする必要はあったのかと、メディスンに漏らしていた。
メディスンも彼女を同じこと思いながらも、こうして連合国軍――才能の追跡官は、コラスの会社や軍警察署本部があるマーシャル·エリアだけでなく、オレンジ·エリアもその管轄にすることができたのだった。
これでアンプリファイア・シティにある四つの区域の内、その二つが連合国の管理下となり、コラスやイーストウッドの目指す、犯罪都市の治安維持へと近づく。
だが、新しい本部で椅子に座っているメディスンの表情は重い。
結果だけ見れば上々だといえるが、その過程が喜ぶことを拒んでいた。
「これでは戦争と同じだ……」
メディスンは俯きながら呟いた。
目標へと近づいたのはいいが、多くの人間が殺された。
これでは、一体何のために自分が才能の追跡官になったのかがわからない。
そう、彼は思っていた。
「情けない……。ブラッドやエヌエーがいたら怒鳴られるな……」
メディスンが弱々しく呟いたとき、指に付けていたリングタイプの通信機器から連絡が入った。
《メディスン班長、今大丈夫でしたか? 実は、至急伝えたいことがありまして》
声の主はブルドラだった。
メディスンは問題ないと返事し、彼女へ何があったのかを訊ねると――。
《捕らえていたハイファ・ローランドとライザー・ローランドが殺されていました》
「なんだとッ!?」
驚愕したメディスンだったが、すぐに落ち着きを取り戻して訊く。
「監視カメラに何か映っていたか?」
《実は、そのときに署内のネットワークに異常があったようで、残念ながら何が起きたのかはまったくわかっていません》
ブルドラの返事を聞いたメディスンは、以前に起きたあることを思い出していた。