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そう叫びながらメディスンはムドと一緒にバヨネット·スローターで防弾シャッターを破壊しようと、ナイフを突き刺す。
だが、鉄の約五倍の強度を持つシャッターにナイフ程度ではどうすることもできなかった。
「俺が……やります……」
メディスンとムドを押しのけ、ディスが出て来る。
防弾シャッターの前に立った彼は、ボロボロの身体で再びブレインズの能力――スイッチング·ブーストを使おうと利き足を動かそうとしていた。
「止めろディス! お前はもう限界だ!」
「で、でも、このまま……じゃ……リズムが……」
まとも喋ることもままならないのだろう。
いや、ここまでリズムを背負って来れたこと自体が奇跡といってもいい。
ディスの目は焦点が合わず、今にも倒れそうだった。
そして、やはりと言うべきか、その場にバタンと倒れてしまう。
ニコが慌てて彼に駆け寄り、大きく鳴いている。
「クソッ! なんとかなんねぇのかよ!」
ムドが叫ぶと、突然防弾シャッターがゆっくりと開き始めた。
その先には、白いショート丈のコートを着たウルトラマリンブルーの髪色の少女――才能の追跡官第一班の班員であるブルドラ·ローランドが立っていた。
「全員そこにいますかッ!?」
「ブルドラッ!? お前は、たしかオレンジ·エリアに行っていたんじゃ……?」
メディスンが訊ねると彼女は今はそんな時間はないと返事をし、後ろにいた警備ドローンに指示を出して彼らをビル内から連れ出す。
なんとか脱出したディスたちの目の前で、才能の追跡官が再び爆発。
軍警察署ビルはそのまま彼らの前で、その爆破によって完全に崩れていった。
「助かった……。礼を言うぞ、ブルドラ」
「メディスン班長も皆も、無事でよかったです」
安心してブルドラがその表情を緩ませる。
彼女に礼を言ったメディスンは、先ほどの質問の答えてくれと再び訊ねようとした。
だが、彼は周囲へ目をやった。
第三班の班員たちは満身創痍。
特にディスの状態は酷い。
今は一刻も早く治療できる場所へ移動するべきだと、口にしかけていた言葉を飲み込む。
「とりあえず、今は病院だな……。自動運転車は手配できるか?」
「はい、すでに準備しています」
それから警備ドローンを使って、班員たちを停車させていた自動運転車へ乗せていく。
ニコがディスとリズムと同じ車に乗り、ムドはパロマとシヴィルを乗せた車にそれぞれ乗り込んだ。
車の窓を開け、ムドがメディスンに言う。
「あの~メディスン班長。そいつらは敵なんだが……その……なんというか……」
言いづらそうにしているムドを見て、メディスンは察する。
おそらく戦闘中に何かあったのだろうと。
「安心しろ。無下に扱ったりはしない。この者らが犯罪者であることには変わりないが、お前が心配するようなことにならないように努力しよう」
「ホントかッ!? さっすがメディスン班長ッ! こいつらのこと、お願いしますッ!」
それからディスたちとムドを乗せた車は発進して行き、メディスンはブルドラと共にハイファとライザーが乗る自動運転車へと乗り込んだ。