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016

その後、車は港を出てオレンジ・エリアを抜け、軍警察署があるマーシャル・エリアへ入る。


窓から外を眺めるディスは、石畳の地面とレンガ造りの建物――。


さらにはネオンサインと配線が張り巡らされた街並みを見て、呆けていた。


「聞いているのかディス・ローランド?」


「は、はいッ!」


慌てて返事をしたディスだったが。


隣に座るメディスンの話を半分も聞いていなかった。


話を聞いていなかったことを誤魔化しながら、ディスはもう一度話してくれると助かると、申し訳なさそう言った。


メディスンは彼が話を聞いていなかったことを理解しながらも、再び同じ話を始める。


「では、まずボス·エンタープライズについてまた話す」


ボス·エンタープライズとは――。


アンプリファイア・シティにある大企業のことだ。


街のすべてのインフラ(インフラストラクチャー)の供給している実質の民営国家であり、元々はゴーストタウンに近かったこの街がここまで発展したのは、すべてボス·エンタープライズのおかげだといわれている。


だが、警察もなくはみ出し者らが逃げ込んでくる街にもなっており、ボス·エンタープライズは連合軍へ街の治安維持を依頼した。


「さっきは訊かなかったが、CEOのコラス·シンセティックの顔は当然見たことあるよな?」


コラス·シンセティックは、ボス·エンタープライズの最高経営責任者――つまりCEOの役職についている女性経営者だ。


最近では、世界的に有名なメディアでも取り上げられている人物でもある。


「いえ、見たことないです」


「資料は渡していたはずだが」


「すみませんッ!」


声を張り上げたディスのせいで、ニコがビクッと身を震わせていた。


メディスンはため息をつくと、指にはめている機器から、ホログラムの動画を流す。


それは、ボス・エンタープライズの宣伝映像だった。


動画に見える女性は、上下白のスーツ姿に眼鏡をかけている。


髪型はセンター分けのショートボブといったキャリアウーマンを思わせるルックスをしている女性だった。


ディスは、その見た目から二十代後半から三十代前半くらいの年齢だと思っていた。


彼女は動画の中でサイバー攻撃について語っている。


「近いうちに顔を会わすことになる。資料にはちゃんと目を通しておくように」


「はいッ!」


ディスがまた大声を出したせいで、ニコが再びビクッと豊かな毛を揺らしていた。


それからメディスンは、ディスが寝泊まりすることになる第三班――ブラッド班の住居について説明。


ディスは一軒家に班員たちと住む生活だと聞き、笑みを浮かべていた。


そんな彼にニコが鳴く。


「なんだニコ? あぁ、お前も第三班の家に住んでるのか」


ディスが返事をすると、ニコは嬉しそう鳴き返していた。


そんなやり取りを見ていたメディスンは不思議そう顔をして訊ねる。


「ディス・ローランド、いやディス。君は、ニコの言葉がわかるのか?」


「えッ? でも、メディスン班長もわかるんでしょ? だってニコもそう言ってるし」


「私の場合、そいつとは付き合いが長いからな。単なる感覚だ」


「そっちのほうが凄くないですか?」


「……続けるぞ、だが君は、まるで会話でもしてるようにニコとコミュニケーション取っているように見えた」


「そう言われても……わかるとしか言えないですよ……」


メディスンは歯切れの悪い答えを聞くと考える。


もしかして、電気仕掛けの仔羊の言っていることが理解できるのは、ディスの能力なのかと。


だが、今は考えるよりも説明が先だと、再び話を始めた。

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