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――ディスとムド二人と合流しようと廊下を走るメディスンたち。
しかし、突然破壊音が聞こえると、壁を突き破ってタイニーテラーが現れる。
「よう、もう逃げられねぇぞ」
タイニーテラーが両腕の仕込み刀を回転させ、笑いながら近づいて来る。
メディスンは表情をしかめながらバヨネット·スローターを構えると、リズムが彼を庇うように前に出た。
「メディスンさんとシヴィルは援護してください。この人とはアタシがやります」
リズムの提案に、メディスンは無茶だと思った。
すでに彼女は満身創痍だ。
だが、無能力者である自分がタイニーテラーとまともに戦っても、時間稼ぎもできずやられてしまう。
かといって、シヴィルはすでに攻撃パターンを覚えられてしまっている。
今タイニーテラーと正面切って戦えるのは、リズムだけなのは事実だ。
「それしかないか……。すまないリズム。私とシヴィルは援護に回る。ニコはパロマを頼むぞ」
メディスンは、タイニーテラーに銃口を向けながらパロマをそっと廊下の床に寝かせる。
ニコはそんな彼女の身体を掴んで後退。
シヴィルは何も言わなかったが、リズムの動きに合わせて後衛に回っているところを見るに、彼女の案を受け入れたようだ。
「リズム姉。大丈夫?」
「大丈夫だよ、シヴィル。メイカさんに教えてもらったこと以外に取り柄のないアタシだけど、昔から運だけは良いから。それを全部使ってみんなを守るッ!」
リズムはそう言うと穏やかな顔から一変。
険しい表情をして両手で円を描くと、拳をガッチリと握って気を纏う。
「また会ったな、血塗れの聖女」
タイニーテラーが前に出たリズムに声をかけた。
彼は身構える彼女のことじっと見つめている。
そして、静かに言葉を続けた。
「綺麗だな、その目」
「な、なななッ!? こんなときにからかってるんですかッ!?」
タイニーテラーの言葉の意図が理解できないリズムは動揺した。
ふざけていると彼女は思っているようだが、タイニーテラーの表情は真剣そのものだ。
少し愁いを帯びた彼の瞳は、とても義体とは思えないほど感情が表現されているように見える。
「からかってねぇよ。お前の目を見てると、心底そう思う。戦場にいたのが信じられねぇ」
タイニーテラーはそう言いながら身構える。
その眼差しを鋭いものへと変え、両手両足の仕込み刀を突き出す。
「わりぃ、変なことを言った。お前は宣言通り、死んでもメディスンを守るんだろうな。だったら、殺し合うしかねぇ」
「アタシは殺し合いはしない! 命を奪わずにあなたを叩き伏せ、ここでしたことの罪を償わせるッ!」
そして交わし合った言葉がゴングとなり、リズムとタイニーテラーは激しくぶつかった。