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――四階、局長室。
メディスンの目の前では、タイニーテラーが立っていた。
ジリジリと距離を詰めて来るタイニーテラーに、メディスンはバヨネット·スローターを連射。
放たれた無数の弾丸が、タイニーテラーへと突き刺さった。
メディスンの使用している銃剣付き拳銃は、電磁波ではなく従来の弾丸が入っているタイプだ。
見事に心臓付近へと弾丸が当たったが、タイニーテラーはニヤッと笑みを浮かべて右腕を振り上げる。
その腕からは仕込み刀が現れていた。
一瞬義手だと考えたメディスンだったが、撃たれてもダメージのないタイニーテラーから彼の身体が普通ではことに気が付いた。
「その身体、義体かッ!?」
義体とは、サイバネティック·オーガニズムと呼ばれるサイバネティックスの一つである。
もっと分かりやすく言えば、機械と生物の融合した技術のことだ。
「そうだよ。かなり金をかけた特注品だぜ」
タイニーテラーはメディスンに向かって、右腕を振り落とした。
メディスンはバヨネット·スローターのナイフでこれ受けた。
だが、そのあまりの力に負け、局長室のデスクに吹き飛ばされてしまう。
倒れたメディスンを見下ろすタイニーテラー。
彼はその仕込み刀を現した右腕を振りながら、再びゆっくりと歩を進める。
「いつからだ? いつから義体化した?」
メディスンは立ち上がると、バヨネット・スローターを構え、訊ねた。
タイニーテラーは彼に向かいながら口を開く。
「答えてやる必要はねぇが……いいだろう。教えてやる。こいつはこの街に着いたばかりの頃だ」
タイニーテラーは、この街――アンプリファイア・シティへ来る前は、橙賊の頭領として好き放題暴れていた。
だが、それも長くは続かなかった。
連合国に危険視された橙賊は討伐され、なんとか命は助かったものの、タイニーテラーは再起不能の状態になってしまう。
両手両足はろくに動かせず、車椅子で部下に運ばれた彼は、なんとか連合国の追撃を逃れた。
その後、アンプリファイア・シティといわれる前のこの街へと辿り着いたのだと言う。
「ここで、腕のいい義体技師と知り合ってな。今や脳ミソ以外は全身機械になったというわけさ」
「その技師ってのは誰だ? まさかドクター・ジェーシーじゃないのか?」
「誰でもいいだろう。どうせ、お前はここで死ぬんだからなッ!」
それまでゆっくりと動いていたタイニーテラーが、突然凄まじい勢いでメディスンへと飛び掛かった。
だが、メディスンは怯むどころか笑みを浮かべている。
タイニーテラーはそんな彼の態度を不可解に思っていたが、構わず突っ込んだ。
「フフ、どうやら私はまだ死ねないらしいな」
メディスンがそう呟くと、彼へと飛び掛かったタイニーテラーがいきなり蹴り飛ばされた。
全身義体の身体を吹き飛ばすなど、いくら特殊能力者でも難しい。
だが、タイニーテラーは自分を蹴り飛ばした人物を見て納得する。
「なんだよ、お前なら頷けるな」
そこには、灰色の髪の小柄な少女――シヴィル·エレクトロハーモニーが立っていた。




