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――ディスたちが動き出した頃。
リズムとパロマは職員の悲鳴を聞き、食堂へと踏み込んだ。
そこには死体となった職員たちと、見知らぬ少年少女二人の姿があった。
リズムは二人に怒鳴り訊ねる。
「なんでこんなことしたのよッ!?」
「安心しろ。全員苦しまずに殺した」
「そんなこと訊いてないッ!」
銀髪の少女がカールした毛先を弄りながら答えると、リズムはさらに大声を発した。
それを見ていた少年が、黒髪に赤いメッシュの入ったツンツンヘアを揺らしながら口元を歪める。
「お前のせいだ」
「はぁッ!? いきなり何いってんのよあなたッ!」
「オレたちは言われたことをやっただけなんだ。好きでこの人たち殺したわけじゃない」
「意味わかんないッ! 命令されてみんなを殺したことと、それがアタシのせいってのがどう繋がるのよッ!?」
ツンツン頭の少年はブスッと不機嫌そうにすると、銀髪の少女のほうを向いた。
少女のほうはそんな彼の顔を見て、首を左右に振っている。
「どうやら聞いていた通り、頭が悪いようだな。今の話が理解できないか」
「だよね、ハイファ。わかるよね、普通は」
「あぁ。そうだな、ライザー」
怒り狂っているリズムの後ろで、パロマは二人のことを観察していた。
銀髪のほうがハイファ。
そして黒髪に赤メッシュのツンツンヘアのほうがライザーだということを認識し、それから二人の周囲にある職員の死体へ目をやる。
死因はヘッドショットだ。
スイカ割りでもされたように、脳髄と血が周囲にまき散らされている。
どの死体も一撃で頭を撃ち抜いている見るに、たしかに苦しむことなく殺されたのだろう。
パロマは吐き気を抑えながら、ハイファとライザーへ視線を戻した。
二人の手にはライフル。
光学照準器――スコープが付いているということは、間違いなく遠距離射撃用だ。
パロマは銃にはあまり詳しくないが、相手の武器のことを把握。
そして、リズムへと呟くように声をかける。
「リズム……。こいつらだ。こいつらがオレンジ·エリアで私たちを襲った奴らだ」
「だと思ったよ……」
そう答えたリズムは、二人へと歩を進めていく。
彼女の両腕を――いや、全身を白い光が覆っていく。
生命エネルギーを気へと変え、戦闘態勢へと入った証拠だ。
「だけど、今はそんなことどうでもいい……。職員みんなにしたことを、この子たちに償わせるだけだッ!!」
まるで獣のように咆哮したリズム。
ハイファとライザーは、そんな彼女に向かってライフルを向ける。
「ふざけた女だ……」
「そうだね、ハイファ。全部自分のせいなのにさ」




