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――メディスンがタイニーテラーと顔を合わせる少し前。
三階にいたディス、ムド、シヴィル、ニコたちも軍警察署内の異変に気付き、動き出していた。
窓はシャッターが閉められ、通信もできない状態に陥った彼らは、別れて他の班員たちと合流することを決める。
メディスンがいる四階にはシヴィルとニコ。
そして、一階にいるリズムとパロマのところへは、ディスとムドが向かうことに。
「つーかディス、なんでお前リズムが一階にいるってわかんだよ?」
メディスンが四階にいることは誰でも予想できるが。
ディスは迷うことなくリズムが一階にいると言い出した。
ムドはそのことを訊ねると、思いもよらない答えを聞く。
「リズムの持ち物には、彼女がどこへ行ってもわかるように、俺の能力で受信できる小物を取り付けてあるんだよ」
ディスやブルドラ――ブレインズと呼ばれるドクター·ジェーシーの研究施設出身者が持つの能力――真の通路。
特殊な電波を脳から飛ばし、電子ネットワークへ意識を送り込むこの力の応用で、ディスはリズムがどこにいるのかがすぐにわかるようだ。
こないだオレンジ·エリアへ向かったリズムを見つけるのに苦労したからだろう。
それにしても、いくら心配だからといってもやり過ぎだ。
それを聞いたムドは、思わず顔を引き攣らせていた。
「それは……さすがにキモいな。なんかお前のことを知るたびに怖いヤツって思うよ……」
「愛とは……こうも怖いものなのか……?」
二人の後ろを走るシヴィルが呟くと、反重力装置によって飛んで移動しているニコが同意するように鳴いていた。
「たぶんトレーニングルームでパロマと一緒にいたんだと思う。ともかく急ごう。シヴィルとニコは、メディスン班長のほうはお願いね」
「了解。シヴィルはニコと局長室に行く」
シヴィルは階段をピョンピョンと駆け上がって行き、彼女の後をニコが飛んでいった。
シヴィルたちと別れたディスとムドは、最初からエレベーターは使わずに階段を下りていく。
「はぁ、はぁ、急がなきゃ……急がなきゃ……」
少し廊下を走っただけでディスは呼吸を乱していた。
おまけに足も遅い。
ムドはそんな彼に呆れながら言う。
「体力ねぇな、お前……。先に行くぞ。お前がリズムを優先するように、オレにも優先したいもんがあるからな」
「ご、ごめん……。俺のことは気にしないで先に行ってよ。ムドが早く行けるなら、リズムが危険な目に遭っても安心できるし」
「お前なぁ……簡単に言ってっけど、一人で大丈夫かよ?」
「こっちは大丈夫。敵と遭遇したらなんとかして知らせるよ」
「そうかい。じゃあわりぃけど、先に行くぜ」
ムドはそう言うと、息切れしているディスを置いて階段を飛び下りていった。
ディスはそんな彼の背中を見ながら落ち込む。
「うぅ……。ソウルミューさんに相当鍛えられたのに、なんで俺はこんなに体力がないんだろう……」
だが、ディスは弱音は吐きつつも、けしてその足を止めずに階段を下りて行った。




